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第5話
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地図を探すと決めた日の夜、遥斗とリセリアの2人は厨房の片隅で短く計画を練った。
彼女が事前に得た情報では、王宮の書庫が貴族たちの部屋近くにあるということだった。そこならば地図があるかもしれないとのことだった。
「書庫には警備がいると思う、でも夜の交代時間を狙えば隙ができるかもしれない。万が一見つかったら、私が注意を引くから、君は地図を探して」
リセリアが毅然とした口調で告げた。
遥斗は心配そうに眉をひそめたが、すぐに頷いた。
「わかった」
そしてさらが更けた時、二人は厨房を抜け出し、足音を立てないように細心の注意をはらいながら書庫へ向けて出発をした。暗い廊下を進む中、遥斗の耳に遠くから衛兵の足音が微かに聞こえてくる。
そんな中でもリセリアはいたって冷静だった。的確に身振り手振りで遥斗に対して合図を送り、衛兵に気づかれないように上手く目的地まで進んでいった。
やがて書庫にたどり着くと、重厚な扉の前で二人は一瞬息を整えた。リセリアが慎重に扉を開けると、埃っぽい空気が二人の顔に漂ってくる。中には暗闇に埋もれた古い書物がずらりと並び、長い年月を感じさせた。
「地図はどこだ……?」
遥斗が小声で呟く。
二人は書庫の奥へ進み、壁にそって並べられた巻物を調べ始めた。だが、なかなか目的の地図が見つからない。焦り始める遥斗の横で、リセリアが微かに呟いた。
「……気をつけて。誰かが来る気配を感じる」
二人は慌てて書棚の影に身を潜めた。やがて扉が開き、衛兵のひとりが書庫に入ってきた。彼は辺りを見回し、物音を立てずに書棚を巡回している。リセリアは息を潜め、遥斗の手を引いてさらに奥の棚へと静かに移動した。
幸運にも衛兵は二人に気づかず、数分後に部屋を出て行った。遥斗は冷や汗を拭い、再び地図を探し始める。
ようやく、棚の隅で古びた羊皮紙の巻物を見つけた遥斗がそれを広げると、そこには王宮の見取り図が描かれていた。
「これだ……!」
遥斗は思わず大きい声となってしまった。それに対しリセリアが咄嗟に、遥斗の口を手で押さえる。
「もう!ここで大きな声を出したら全部台無しでしょ!」
「す、すまん」
「急いでここを出ましょう、戻る前に誰かに見つかったら終わりよ」
二人は地図を手に慎重に書庫を抜け出し、再び廊下を進んで厨房へと戻った。厨房に戻ると、二人は安堵のため息を漏らした。
*
厨房に戻った二人は、なんとか無事に地図を手に入れたことに安堵した。遥斗は地図をリセリアと共に確認し、王宮内部の配置を把握し始めた。脱出経路や見張りが薄い場所、隠れられる場所など、次の計画を進めるための重要な情報がそこに詰まっていた。
「これで大体の道筋が立てられる。次は見張りの交代時間を確実に把握して、最短ルートを使ってここから脱出しましょう」
リセリアが冷静に告げると、遥斗も真剣な表情で頷いた。しかしその時、二人の安堵を打ち破るように、突然厨房のドアが勢いよく開かれた。そこには怒りの表情を浮かべた衛兵が立っており、部屋の中を鋭く見渡していた。
「今、誰かが書庫に忍び込んだという通報があった。この厨房の奴隷たち、全員集まれ!」
驚いた奴隷たちが慌てて並び始める中、遥斗とリセリアも緊張を隠せずにその列に加わった。衛兵は一人ずつじろじろと睨みつけ、少しでも怪しい動きを見せれば容赦なく取り押さえられる雰囲気だった。
「どうする?見つかったら確実に拷問されるわ」
リセリアが小声で囁くと、遥斗は冷静を装いながらも心臓が高鳴るのを感じていた。既に書庫から地図を持ち出している。今身体検査をされたら、地図が見つかりどうやっても言い逃れできるような状態ではない。
衛兵が二人の方に近づいてくる。その瞬間、リセリアが急に前に出て、わざと手を滑らせて足元の鍋を転がした。
ガッシャーン
と大きな音が鳴り響く。
「す、すみません……!手元が滑ってしまって……!」
衛兵の視線が鍋に一瞬釘付けになった。その隙をついて、遥斗は持っていた地図を背後の隙間に素早く押し込んだ。
「しっかりしろ!気をつけるんだ!次にこんなことがあったらただではすまさん!」
衛兵が怒鳴りつけると、リセリアは小さく頭を下げて謝罪し、何とかその場をやり過ごした。衛兵が他の奴隷たちに目を向けたのを確認し、遥斗とリセリアは安堵の息を漏らしながら再び厨房の片隅へと戻った。
「危なかったわね。今度は慎重にいかないと……」
リセリアが小声で言うと、遥斗も同意するように頷いた。
「だが、これで脱出の準備は整った。あとは実行に移すだけだ」
二人はお互いを見つめ、密かな決意を交わした。彼らの心には、新たな希望が芽生えていた。
彼女が事前に得た情報では、王宮の書庫が貴族たちの部屋近くにあるということだった。そこならば地図があるかもしれないとのことだった。
「書庫には警備がいると思う、でも夜の交代時間を狙えば隙ができるかもしれない。万が一見つかったら、私が注意を引くから、君は地図を探して」
リセリアが毅然とした口調で告げた。
遥斗は心配そうに眉をひそめたが、すぐに頷いた。
「わかった」
そしてさらが更けた時、二人は厨房を抜け出し、足音を立てないように細心の注意をはらいながら書庫へ向けて出発をした。暗い廊下を進む中、遥斗の耳に遠くから衛兵の足音が微かに聞こえてくる。
そんな中でもリセリアはいたって冷静だった。的確に身振り手振りで遥斗に対して合図を送り、衛兵に気づかれないように上手く目的地まで進んでいった。
やがて書庫にたどり着くと、重厚な扉の前で二人は一瞬息を整えた。リセリアが慎重に扉を開けると、埃っぽい空気が二人の顔に漂ってくる。中には暗闇に埋もれた古い書物がずらりと並び、長い年月を感じさせた。
「地図はどこだ……?」
遥斗が小声で呟く。
二人は書庫の奥へ進み、壁にそって並べられた巻物を調べ始めた。だが、なかなか目的の地図が見つからない。焦り始める遥斗の横で、リセリアが微かに呟いた。
「……気をつけて。誰かが来る気配を感じる」
二人は慌てて書棚の影に身を潜めた。やがて扉が開き、衛兵のひとりが書庫に入ってきた。彼は辺りを見回し、物音を立てずに書棚を巡回している。リセリアは息を潜め、遥斗の手を引いてさらに奥の棚へと静かに移動した。
幸運にも衛兵は二人に気づかず、数分後に部屋を出て行った。遥斗は冷や汗を拭い、再び地図を探し始める。
ようやく、棚の隅で古びた羊皮紙の巻物を見つけた遥斗がそれを広げると、そこには王宮の見取り図が描かれていた。
「これだ……!」
遥斗は思わず大きい声となってしまった。それに対しリセリアが咄嗟に、遥斗の口を手で押さえる。
「もう!ここで大きな声を出したら全部台無しでしょ!」
「す、すまん」
「急いでここを出ましょう、戻る前に誰かに見つかったら終わりよ」
二人は地図を手に慎重に書庫を抜け出し、再び廊下を進んで厨房へと戻った。厨房に戻ると、二人は安堵のため息を漏らした。
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厨房に戻った二人は、なんとか無事に地図を手に入れたことに安堵した。遥斗は地図をリセリアと共に確認し、王宮内部の配置を把握し始めた。脱出経路や見張りが薄い場所、隠れられる場所など、次の計画を進めるための重要な情報がそこに詰まっていた。
「これで大体の道筋が立てられる。次は見張りの交代時間を確実に把握して、最短ルートを使ってここから脱出しましょう」
リセリアが冷静に告げると、遥斗も真剣な表情で頷いた。しかしその時、二人の安堵を打ち破るように、突然厨房のドアが勢いよく開かれた。そこには怒りの表情を浮かべた衛兵が立っており、部屋の中を鋭く見渡していた。
「今、誰かが書庫に忍び込んだという通報があった。この厨房の奴隷たち、全員集まれ!」
驚いた奴隷たちが慌てて並び始める中、遥斗とリセリアも緊張を隠せずにその列に加わった。衛兵は一人ずつじろじろと睨みつけ、少しでも怪しい動きを見せれば容赦なく取り押さえられる雰囲気だった。
「どうする?見つかったら確実に拷問されるわ」
リセリアが小声で囁くと、遥斗は冷静を装いながらも心臓が高鳴るのを感じていた。既に書庫から地図を持ち出している。今身体検査をされたら、地図が見つかりどうやっても言い逃れできるような状態ではない。
衛兵が二人の方に近づいてくる。その瞬間、リセリアが急に前に出て、わざと手を滑らせて足元の鍋を転がした。
ガッシャーン
と大きな音が鳴り響く。
「す、すみません……!手元が滑ってしまって……!」
衛兵の視線が鍋に一瞬釘付けになった。その隙をついて、遥斗は持っていた地図を背後の隙間に素早く押し込んだ。
「しっかりしろ!気をつけるんだ!次にこんなことがあったらただではすまさん!」
衛兵が怒鳴りつけると、リセリアは小さく頭を下げて謝罪し、何とかその場をやり過ごした。衛兵が他の奴隷たちに目を向けたのを確認し、遥斗とリセリアは安堵の息を漏らしながら再び厨房の片隅へと戻った。
「危なかったわね。今度は慎重にいかないと……」
リセリアが小声で言うと、遥斗も同意するように頷いた。
「だが、これで脱出の準備は整った。あとは実行に移すだけだ」
二人はお互いを見つめ、密かな決意を交わした。彼らの心には、新たな希望が芽生えていた。
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