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3章 思い出のタルト・タタン

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◇◇◇

「やあ、薫君。今日はこちらがお招きいただいて、ありがとう」

雲ひとつない快晴の週末、神宮寺邸に2人の客人が訪れた。ハットに小洒落たスーツを見に纏った老紳士の松風総二郎と、孫の香澄だ。今日は以前、パーティに呼んでもらったお礼と称して、神宮寺邸でちょっとしたお茶会をすることになったのだ。

「我が家に来るのは祖父母がいたとき以来でしょう?今日はゆっくりしていってください」
「ああ、確かにそうだったか。いや、懐かしい」
「ご要望とあらば、祖父がよく使っていた書庫も案内しますよ」
「おお、それはいい。アイツは、なかなかてにはいらない貴重な本をたくさん持っとったからな」

薫と総二郎は、和やかな会話を交わしながら笑う。「どうぞ、こちらへ」と家の中へと案内する加賀美を横目に、久志は香澄に近づいた。今日は、黒のワンピース姿。すらりと伸びる手足は長く、モデルのよう。相変わらず、大人っぽい少女である。

「香澄ちゃん、大丈夫?」

小声で尋ねる久志に、香澄は小さく頷いた。

「……味はバッチリだし、大丈夫、なはず」

少しぎこちないながらも、香澄の言葉に久志はふと口元を緩めた。久志は「俺たちもいるから安心して」と続け、緊張気味な彼女をエスコートするように屋敷内へと案内した。
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