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3章 思い出のタルト・タタン
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◇◇◇
「君が噂の新入り君かい⁈いいね、測り甲斐がある体だ!肩から腰にかけてのラインがなかなかスマートじゃないか!細身のジャケットを着れば、それは似合うだろうなぁ!」
それから数時間後、久志は加賀美が「栄養ドリンクを~」と言っていた理由を身にしみて実感していた。
先ほどからマシンガンのようにポンポンと出てくる言葉に、口を挟む隙が全く見当たらない。一方的に話しかけられ、いろんな角度から、いろんな部位をメジャーで測られている。
そう、久志が連れてこられたのは、神宮寺薫御用達のテーラーである白鳥朔夜の店だった。旧居留地に佇むオーダーメイドスーツを仕立てる店。こじんまりとしているが、高級感あふれる内装はいたるところがキラキラとしていて、庶民の久志にはなんだか萎縮してしまう。
「あまりの押しの強さに、うちのバイトが縮こまっているじゃないか。やめろ」
「着せ替え人形にぴったりな人間を見つけた僕に、このチャンスを見逃せというか⁈久志君と言ったなっ!あんな男なぞ、放っておいてうちの店で働かないか⁈」
朔夜はそう言うと、ガシッと久志の両手を握りしめ、さらに距離を詰めてきた。
ブロンズ色の、胸ほどまである長い髪に流麗な瞳。チェック柄のオシャレなスーツに身を包んだ年齢不詳の「白鳥さん」は、久志がこれまでの人生で出会った中でも、ダントツでインパクトの大きい人だった。
「給金なら弾むよ!僕のモデルになってくれるのなら、従業員特典としてスーツを何着でもプレゼントしてあげよう!」
なぜだか気に入られた様子で、先ほどから仕切りに久志のことを勧誘してくる朔夜。久志の周りにはいないタイプの人で、ただただ愛想笑いをするほかなかった。
「久志はうちのバイトだ。勝手な勧誘はよせ」
と、そこに横やりを入れてきたのは薫だった。お客様をもてなすサロンのソファに腰掛けながら、朔夜のことを不機嫌そうな顔で見つめていた。
「わかったとも、わかったとも!では、代わりに君がモデルになってくれるかい⁈ちょうど次の新作コレクションのスーツがやっとこさ、昨晩すべて出来上がったところなんだ!」
にこにこと楽しそうな表情を浮かべて、今度は薫に詰め寄る朔夜。そんな薫とはまた違った自由奔放さを発揮しているテーラーに、薫は眉間にシワを寄せたまま「な・ら・な・い」と返す。
「君が噂の新入り君かい⁈いいね、測り甲斐がある体だ!肩から腰にかけてのラインがなかなかスマートじゃないか!細身のジャケットを着れば、それは似合うだろうなぁ!」
それから数時間後、久志は加賀美が「栄養ドリンクを~」と言っていた理由を身にしみて実感していた。
先ほどからマシンガンのようにポンポンと出てくる言葉に、口を挟む隙が全く見当たらない。一方的に話しかけられ、いろんな角度から、いろんな部位をメジャーで測られている。
そう、久志が連れてこられたのは、神宮寺薫御用達のテーラーである白鳥朔夜の店だった。旧居留地に佇むオーダーメイドスーツを仕立てる店。こじんまりとしているが、高級感あふれる内装はいたるところがキラキラとしていて、庶民の久志にはなんだか萎縮してしまう。
「あまりの押しの強さに、うちのバイトが縮こまっているじゃないか。やめろ」
「着せ替え人形にぴったりな人間を見つけた僕に、このチャンスを見逃せというか⁈久志君と言ったなっ!あんな男なぞ、放っておいてうちの店で働かないか⁈」
朔夜はそう言うと、ガシッと久志の両手を握りしめ、さらに距離を詰めてきた。
ブロンズ色の、胸ほどまである長い髪に流麗な瞳。チェック柄のオシャレなスーツに身を包んだ年齢不詳の「白鳥さん」は、久志がこれまでの人生で出会った中でも、ダントツでインパクトの大きい人だった。
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「久志はうちのバイトだ。勝手な勧誘はよせ」
と、そこに横やりを入れてきたのは薫だった。お客様をもてなすサロンのソファに腰掛けながら、朔夜のことを不機嫌そうな顔で見つめていた。
「わかったとも、わかったとも!では、代わりに君がモデルになってくれるかい⁈ちょうど次の新作コレクションのスーツがやっとこさ、昨晩すべて出来上がったところなんだ!」
にこにこと楽しそうな表情を浮かべて、今度は薫に詰め寄る朔夜。そんな薫とはまた違った自由奔放さを発揮しているテーラーに、薫は眉間にシワを寄せたまま「な・ら・な・い」と返す。
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