45 / 68
3章 思い出のタルト・タタン
2
しおりを挟む
「本日はアッサムをご用意しました。どうぞ」
目覚めたら、まず紅茶を飲む主人のために加賀美は毎朝とっておきの一杯を用意する。今日は、白に金字で描かれた繊細で華やかなデザインのティーカップに淹れられたアッサム。茶葉や使用するカップも、すベて加賀美がその日に合わせて選んでいる。
カップからは美味しい紅茶になるように、ここに来るまでの時間もしっかりと計算して蒸らされた茶葉の香りがほんのりと漂っていた。
薫はゆったりとした動作でカップを手に取り、優雅にお茶を飲む。起き抜けといえども、その上品な所作はさすが礼儀作法を厳しくしつけられた御曹司といったところか。
一口すすり、ほぅ……と息をついた薫を見て満足そうな笑みを浮かべた加賀美は、ティーポットを載せたワゴンを移動させ、もといた場所に戻る。天気も良く静かな朝は、ゆったりと時が過ぎ、どこか心が落ち着く時間でもあった。
「今日の予定は?」
テーブルにカップを置いて加賀美にそう尋ねる薫。
「本日は、来月鈴木様が催されるパーティのスーツを仕立てに行く予定ですよ」
「ああ、真珠会社の……」
「ええ」
加賀美の返事に薫は「となると、あそこに行かなくてはならないのか」と大きなため息をついて、ソファのひじ掛けに寄りかかる。
「あまり気は進まないが、あの男のスーツを一度着たら、もう他のものは着れないからな」
「腕は超一流でいらっしゃいますからね、白鳥様は。もっとも、私もあの方は少々苦手ですが」
「同感だ」と続けたご主人様に、加賀美は苦笑いするのだった。
目覚めたら、まず紅茶を飲む主人のために加賀美は毎朝とっておきの一杯を用意する。今日は、白に金字で描かれた繊細で華やかなデザインのティーカップに淹れられたアッサム。茶葉や使用するカップも、すベて加賀美がその日に合わせて選んでいる。
カップからは美味しい紅茶になるように、ここに来るまでの時間もしっかりと計算して蒸らされた茶葉の香りがほんのりと漂っていた。
薫はゆったりとした動作でカップを手に取り、優雅にお茶を飲む。起き抜けといえども、その上品な所作はさすが礼儀作法を厳しくしつけられた御曹司といったところか。
一口すすり、ほぅ……と息をついた薫を見て満足そうな笑みを浮かべた加賀美は、ティーポットを載せたワゴンを移動させ、もといた場所に戻る。天気も良く静かな朝は、ゆったりと時が過ぎ、どこか心が落ち着く時間でもあった。
「今日の予定は?」
テーブルにカップを置いて加賀美にそう尋ねる薫。
「本日は、来月鈴木様が催されるパーティのスーツを仕立てに行く予定ですよ」
「ああ、真珠会社の……」
「ええ」
加賀美の返事に薫は「となると、あそこに行かなくてはならないのか」と大きなため息をついて、ソファのひじ掛けに寄りかかる。
「あまり気は進まないが、あの男のスーツを一度着たら、もう他のものは着れないからな」
「腕は超一流でいらっしゃいますからね、白鳥様は。もっとも、私もあの方は少々苦手ですが」
「同感だ」と続けたご主人様に、加賀美は苦笑いするのだった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
13歳女子は男友達のためヌードモデルになる
矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。
後悔と快感の中で
なつき
エッセイ・ノンフィクション
後悔してる私
快感に溺れてしまってる私
なつきの体験談かも知れないです
もしもあの人達がこれを読んだらどうしよう
もっと後悔して
もっと溺れてしまうかも
※感想を聞かせてもらえたらうれしいです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる