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2章 遺言状とプリン・ア・ラ・モード
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「加賀美、ペンと紙を」
薫の声にすぐに反応した加賀美は、机の上にあった真っ白なメモ用紙と万年筆を主人へと手渡した。冨山氏の手紙とメモを並べた薫は、メモにひらがなの五十音表を書いているようだ。
「五十音表と、この暗号に何か関係が?」
「ああ。『あるものがない』、つまりこの文章の中で使われていない文字を探すんだ」
紙を見比べながら、使用されている文字に斜線を入れていく薫。加賀美も久志も、その様子をじっと見つめていた。次第に斜線の数が増えていき、使われていない文字が減っていく。そして、全ての文字を調べたところ──。
「なるほど」
万年筆を机に置いた薫が、ふと笑みを深くした。使用された文字は斜線が引かれ、使用されていない文字は○で囲まれている。残っていたのは「う」「す」「た」「の」「ら」「ん」の6文字。
「これを並べかえると……」と、薫が続けると、ピンときた久志が「たんすの裏!」と声を上げた。
「ということだ」
仕事は終わったと言わんばかりに薫は万年筆を置き、ソファの背もたれに背中を預けた。
「この文章自体に意味があるわけではなかったのですね」
「ああ。どうりで、文の意味を考えても答えが浮かばなかったわけだ」
「よく気づきましたね。使われていない文字があるって」
「プリンアラモードのおかげだ!」
「なるほど……!」
そう言って久志が薫を褒めそやしていたが、当の本人の意識はすでに遺言状の謎解きからは離れていた。何せ、目の前には彼の大好物のスイーツがあるのだ。
「と、いうことで無事謎も解けたことだし、いただきます!」
にっこりと嬉しそうな笑みを浮かべてスプーンを手に取った薫は、ようやく謎解きのあとのご褒美にありつけたのだった。
薫の声にすぐに反応した加賀美は、机の上にあった真っ白なメモ用紙と万年筆を主人へと手渡した。冨山氏の手紙とメモを並べた薫は、メモにひらがなの五十音表を書いているようだ。
「五十音表と、この暗号に何か関係が?」
「ああ。『あるものがない』、つまりこの文章の中で使われていない文字を探すんだ」
紙を見比べながら、使用されている文字に斜線を入れていく薫。加賀美も久志も、その様子をじっと見つめていた。次第に斜線の数が増えていき、使われていない文字が減っていく。そして、全ての文字を調べたところ──。
「なるほど」
万年筆を机に置いた薫が、ふと笑みを深くした。使用された文字は斜線が引かれ、使用されていない文字は○で囲まれている。残っていたのは「う」「す」「た」「の」「ら」「ん」の6文字。
「これを並べかえると……」と、薫が続けると、ピンときた久志が「たんすの裏!」と声を上げた。
「ということだ」
仕事は終わったと言わんばかりに薫は万年筆を置き、ソファの背もたれに背中を預けた。
「この文章自体に意味があるわけではなかったのですね」
「ああ。どうりで、文の意味を考えても答えが浮かばなかったわけだ」
「よく気づきましたね。使われていない文字があるって」
「プリンアラモードのおかげだ!」
「なるほど……!」
そう言って久志が薫を褒めそやしていたが、当の本人の意識はすでに遺言状の謎解きからは離れていた。何せ、目の前には彼の大好物のスイーツがあるのだ。
「と、いうことで無事謎も解けたことだし、いただきます!」
にっこりと嬉しそうな笑みを浮かべてスプーンを手に取った薫は、ようやく謎解きのあとのご褒美にありつけたのだった。
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