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2章 遺言状とプリン・ア・ラ・モード

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そのあと、加賀美は別の用事を済ませてくると出ていき、広い厨房には久志一人となった。

「さてと、まずはカラメルソースから作るか」

腕まくりをして久志がまず取りかかったのは、カラメルソース作り。まずは砂糖と水、小さめの鍋を用意して火にかける。このとき砂糖に対して水が多すぎると飴色にならないから分量はしっかり測るのがポイント。

あと、ついつい鍋をかき混ぜたくなってしまうが、混ぜると砂糖が再結晶化してしまうので少し鍋をゆすりながら焦げないように気をつけるのがコツである。

仕上がったカラメルソースは、加賀美が用意してくれたプリンカップに流していく。ソースができたら、次はプリン液作りに取り掛かる。卵と砂糖を入れて泡立て器で軽くほぐすように混ぜる久志。

それが終わると、今度は小鍋を用意して牛乳と砂糖、バニラビーンズを投入して中火にかける。軽くゆすりながら砂糖を溶かしていくのだが、ここでも沸騰させないように注意しなければいけない。

「んで、次はこの牛乳をさっきほぐした卵に少しずつ加えて、こしたら冷めないうちにプリン液をカップに流すっと」

一人でぶつぶつと呟きながらも、広い厨房でスイーツ作りをするのは久志にはとても楽しいことだったようだ。その顔には笑みが浮かんでおり、今にも鼻歌が聞こえてきそうな雰囲気である。

「プリンはレトロ喫茶店みたいな、固めのプリンにするとして……」

と思いついたところで、久志の表情がパッと明るくなった。「それなら」と、冷蔵庫の中身を漁って、お目当てのものがあるかを探し始める。

「ほおほお、さすがは豪邸にある冷蔵庫。食材も豊富だな」

これと、これと……と呟きながら、必要なものを取り出していく。「と言っても、アレはないか」と見つからなかったものもあったようだが、「よし!」と久志は自分で自分を励ますように気合いの入った声を上げた。

「とりあえず、今ある材料でやりますか」

主人の満足するスイーツを、と意気込んだ久志は、そのあとも鼻歌交じりに作業を続けたのだった。
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