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1章 出会いのクッキー
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『吸血鬼やって噂らしいで』
真司が意気揚々とそう話していたことを思い出す。吸血鬼。そんな非科学的な存在など信じない主義の久志だったが、目の前の男の美貌は、それを信じさせるに値する容姿だった。
「どうした?青年」
黙ったまま、ぼんやりと男を眺めていると、向こうから声をかけてきた。男は少し首を傾けて、不思議そうにこちらを見ている。
「あ、いや……その、人間です、よね」
思わず口から出た言葉。それは無意識に出た言葉だったが、言ってしまってからマズイと思っても後の祭り。金髪イケメンは怪訝な表情を浮かべて、久志のことを見た。その表情にはっとする久志。
「って、すみません!俺、失礼なことを……」
いくら目の前の男が人外じみた美貌の持ち主であったとしても、初対面の人間に「人間ですよね」は、いくらなんでも失礼すぎる。久志は慌てて頭を下げたが、隣からはクスクスと笑い声が聞こえてきた。顔を上げると、先ほどの執事がおかしそうに目元を抑えて笑っている。
「ああ、申し訳ございません。そのようなことを面と向かって発言される方は初めてでしたので、つい」
「す、すみません……」
ということは直接言われることはないが、久志が金髪イケメンに感じるのと同じように彼をそう思う人間は多いのだろうか。ちらりと金髪イケメンの方を見ると、こういう反応は慣れているのか、気にしているような様子もない。
(けど、男の俺から見てもイケメンだよな。女装したら絶対美人になるタイプ)
足を組んで椅子に座っているだけなのに、まるで一枚の絵画を見ているような芸術的な雰囲気が漂っている。周りに咲く色とりどりの花さえ、この男の前では彼の美しさを引き立てる小道具にしか見えなかった。
真司が意気揚々とそう話していたことを思い出す。吸血鬼。そんな非科学的な存在など信じない主義の久志だったが、目の前の男の美貌は、それを信じさせるに値する容姿だった。
「どうした?青年」
黙ったまま、ぼんやりと男を眺めていると、向こうから声をかけてきた。男は少し首を傾けて、不思議そうにこちらを見ている。
「あ、いや……その、人間です、よね」
思わず口から出た言葉。それは無意識に出た言葉だったが、言ってしまってからマズイと思っても後の祭り。金髪イケメンは怪訝な表情を浮かべて、久志のことを見た。その表情にはっとする久志。
「って、すみません!俺、失礼なことを……」
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「ああ、申し訳ございません。そのようなことを面と向かって発言される方は初めてでしたので、つい」
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ということは直接言われることはないが、久志が金髪イケメンに感じるのと同じように彼をそう思う人間は多いのだろうか。ちらりと金髪イケメンの方を見ると、こういう反応は慣れているのか、気にしているような様子もない。
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足を組んで椅子に座っているだけなのに、まるで一枚の絵画を見ているような芸術的な雰囲気が漂っている。周りに咲く色とりどりの花さえ、この男の前では彼の美しさを引き立てる小道具にしか見えなかった。
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