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1章 出会いのクッキー
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(え、本物の執事…?)
思わず心の中でそう叫ぶ。男は漫画やアニメで見かける「ザ・執事」と同じ格好で、見るからに品の良い佇まいをしていた。年は三十代半ばくらいだろうか。スマホを持ったまま固まっている久志を、じっと見つめていた。
(もしかして俺、不審者と思われてる……?)
こんな夜に屋敷の前にいる男。となれば、怪しまれるのも当然だろう。
「いや、違うんです!俺、その……探し物があって……!」
久志が慌ててそう言うと、執事らしき男は「ああ」となにかを思い出したようにポンと手を叩いた。スマートな外見に似合わず、その仕草はどうも昭和くさく見える。
「もしかして、濃紺のお守りでしょうか。それなら屋敷の前に落ちていましたが……」
「そ、そうです!どこかに落としちゃって探してたところで……」
「なるほど、そうだったのですね」
執事はそう言うと、「少々お待ちください」と屋敷へ戻っていく。もしや彼が拾ってくれていたのだろうか。探し物が見つかったことに安堵した久志は、小さく息を吐いた。これで今夜はぐっすりと眠れそうだ。
「おい、加賀美ー。誰か客人かー?」
と、そのとき、屋敷の方から聞こえてきた、やや高めの声。もしや例の金髪イケメン吸血鬼か……だなんて、ほんのわずかな好奇心が首を出す。真司をミーハーだなんて言ったが、目の前にその機会があるなら話は別で。久志は門の向こうに見える庭の奥をちらりと覗いてみた。
瞬間、息を飲む。
金糸のような美しい金髪に、やや茶色がかった瞳、陶器のように白い肌、通った鼻筋、甲高の頬、何もつけていないのに薄く色づいている唇。月夜に照らされたその姿は、どこか儚げで、人ならざる者のような雰囲気を醸し出している麗しい男がそこにいた。
思わず心の中でそう叫ぶ。男は漫画やアニメで見かける「ザ・執事」と同じ格好で、見るからに品の良い佇まいをしていた。年は三十代半ばくらいだろうか。スマホを持ったまま固まっている久志を、じっと見つめていた。
(もしかして俺、不審者と思われてる……?)
こんな夜に屋敷の前にいる男。となれば、怪しまれるのも当然だろう。
「いや、違うんです!俺、その……探し物があって……!」
久志が慌ててそう言うと、執事らしき男は「ああ」となにかを思い出したようにポンと手を叩いた。スマートな外見に似合わず、その仕草はどうも昭和くさく見える。
「もしかして、濃紺のお守りでしょうか。それなら屋敷の前に落ちていましたが……」
「そ、そうです!どこかに落としちゃって探してたところで……」
「なるほど、そうだったのですね」
執事はそう言うと、「少々お待ちください」と屋敷へ戻っていく。もしや彼が拾ってくれていたのだろうか。探し物が見つかったことに安堵した久志は、小さく息を吐いた。これで今夜はぐっすりと眠れそうだ。
「おい、加賀美ー。誰か客人かー?」
と、そのとき、屋敷の方から聞こえてきた、やや高めの声。もしや例の金髪イケメン吸血鬼か……だなんて、ほんのわずかな好奇心が首を出す。真司をミーハーだなんて言ったが、目の前にその機会があるなら話は別で。久志は門の向こうに見える庭の奥をちらりと覗いてみた。
瞬間、息を飲む。
金糸のような美しい金髪に、やや茶色がかった瞳、陶器のように白い肌、通った鼻筋、甲高の頬、何もつけていないのに薄く色づいている唇。月夜に照らされたその姿は、どこか儚げで、人ならざる者のような雰囲気を醸し出している麗しい男がそこにいた。
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