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1章 出会いのクッキー

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◇◇◇

「ない!」

あのあと、真司を含めた友人たちと晩ご飯を楽しんだ久志はまだ飲むという三人と分かれ、駅に向かっていた。その途中、リュックにしまった水筒を取ろうとしたところで、あるはずのものがないことに気づいたのだ。

「うそだろ……。あれ、ばーちゃんにもらったやつなのに」

久志が探していたのは、祖母からもらったお守りだった。その場に座り込んでリュックの中を探してみたが、探し物は見つからない。

ひとまず、元来た道を戻ることにした久志は、先ほどまで飲んでいた店までの道を目を凝らして歩いてみることにした。通りには道路に面したオープンテラスの店がずらりと並んでいる。おかげで夜も更けてきたとはいえ明るく、足元はよく見えた。

「……ない」

だが、何も見つけられないまま先ほど出てきた店の前に着いてしまった。念のため店のスタッフに確認してみるも、知らないとのこと。真司にも連絡を入れておいたが、二次会が盛り上がっているのか、メッセージは一向に既読にならない。

「はぁ……」

思わず漏れるため息。たかがお守り一つ、といえばそれまでの話だが、久志が持っていたお守りをくれた祖母はもういない。つまり、形見の品なのだ。それが手元にないだけで、こんなに不安な気持ちになるとは。

「こんなことなら、リュックになんかつけるんじゃなかった……。引っ張ったらすぐに取れるもんなぁ」

と、言ったところではたと気づく。そういえば、真司と北野で見つけた大きなお屋敷の前で、リュックを引っ張られたことを思い出したのだ。

「もしかして、あのときに……」

スマホ画面を見ると、時刻は二十一時を過ぎたところ。

「……見に行くだけ、行ってみるか」

このまま家へ帰ったところで、気になって眠れなくなるのも避けたい。久志はよし、と小さく呟くと、店を出るときに店員にもらったイチゴ味の飴を口に放り込み、夕方に訪れた山側の洋館へと足を向けた。
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