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夜は続く(3)
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「…あのさ、そろそろ起きない?」
「だめ、あと少し」
「えぇー……」
もぞもぞと布団から出ようとすると、中から伸びてきた腕に引っ張られて、私の体はまたベッドへと沈む。もう何回目のやりとりだろう。
特に何をするというわけでもなく、髪を撫でられたり、たまに毛先を指に巻き付けてはくるくると解いてみたり。そうされているうちに私もウトウトとしてまた目を開けて、というようなことをさっきから繰り返している。
「そろそろ起きて、いったん帰りたいんだけどなぁ」
「何で?」
「だって着替えとか、持ってないし…」
あぁそっか、と今やっと思い出したみたいな顔をするけれど、状況が変わる気配はない。私は仕方なく、体勢を変えながら落ち着きの良い居場所を探す。
私の動きが寒さからくると思ったのか、姫が布団を手繰り寄せて背中からふわりと掛けてくれる。
私は、ちょうど掛けられた布団を自分側に抱き込むようにして掴んだ。あぁ、これが一番落ち着くかも。
「…ゆきのってさ、クッションとか抱き枕がないと寝られないタイプ?」
「え、何で分かったの?」
確かに小さい頃からベッドの周りにはぬいぐるみを置いて、毎晩お気に入りの子を抱きしめながらじゃないと寝られなかった。今はもうぬいぐるみではないけれど、大きめのクッションを抱き枕がわりにして寝ている。とにかく何かを掴んでいないと落ち着かないのだ。
「夜中寝てるときずっと抱き着いたまま離れないから、もしかしてそうかなと思って」
「……うそ、一晩中?」
何それ、そんなの知らない。
動揺して固まった私を見て、姫の口元がおかしそうに微笑む。言葉は出さずともこれは肯定だ。
そうなると、今もたまに触れる素肌の感触だとかいろいろ再認識させられて、とりあえず私は顔を見られたくなくて布団を頭から被って潜り込んだ。
「いつまでそうしてんの?」
長いか短いか分からない程度の間そうしていると、上から宥めるようにぽんぽんと叩かれる。
「……子どもっぽいって思った?」
抱き枕がないと寝られないことも、こんなふうに隠れることも。
「いや?可愛い思うけど」
あぁそうだ、朝の姫は心臓に悪かったんだった。
事も無げに言われると、何だか意地を張って隠れているのもばかばかしくなってきて、のそのそと布団から顔だけ覗かせると、姫は穏やかに微笑んでいる。
「出てくる気になった?」
「……このまま起きるなら、出る」
閉じたカーテンの隙間から覗く太陽は、最初に目が覚めたときより随分高い位置にある。こうやってごろごろしているのは好きだけれど、本当にそれだけで終わってしまいそうだ。
「分かった、じゃあ起きるか」
交換条件成立。
そうして私たちはようやくベッドから抜け出した。
◇◇◇◇
「もうこんな時間だったのか」
先にベッドを出た姫の言葉にふと時計を見ると、もう10時半を軽く回ってもうすぐ11時になろうとしている。普段の休日でもここまで寝坊することはあまりない。
目が覚めてから、いったいどれぐらいの間まどろんでいたんだろうかとおかしくなった。
「家って吉祥寺だよな。着替えに帰ってから、昼どこかで食べる?」
「うん、そうしよっか?」
私は散らばった服を手繰り寄せて手早く着ると、ベッドから立ち上がる。
「あとどこか行きたいところある?」
「行きたいところ…あ、昨日姫が言ってたドライヤー見に行くのは?」
「俺はいいけど、そんなのでいいの?」
私の提案が予想外だったのか、姫も服を着ながら少し驚いた顔で振り返った。
「うん、私家電見るの好きなんだ。パンフレットを持ち帰って見比べるのも好きだよ」
「初耳、知らなかった」
そう言われると、今まで誰にも言ったことはなかったかもしれない。駅の近くに大きい量販店があるからそこに見に行っていいかと尋ねると、ゆきのにまかせると返ってきた。
「結構何でも揃ってるんだな」
「姫は大学もこっちの方だからあんまり行くことないよね。あ、じゃあ姫がどこか行きたいところとかある?案内するよ」
私は実家にいたころから、友達と遊ぶのも買い物するのもまずは吉祥寺だったから、大体の地理は把握しているしお店にも詳しい方だと思う。
私の言葉にしばらく悩む素振りのあと、姫は思いついたように
「じゃあ、ゆきのの部屋に行きたい」
と言った。
「わ、私の部屋?」
もっと有名な観光スポットや欲しいものが買えるお店のようなところを想像していたから、今度は私が面食らう番になった。
「だめ?」
表情は変わらないけれど、声に少し不安げな色がするものだから私はを振る。
「ううん、だめじゃないんだけど…そんなに広くないよ?ソファーもないし」
「そんなの全然いい、一人暮らしの部屋って大体そういうものだし」
「うん、姫がいいなら来る?」
嬉しそうに、ちょっとほっとしたように笑うのが可愛いと思ってしまった。
「でも何でかベランダは広めなんだよね。あと、マンションの前の街路樹が桜並木だから春は綺麗だよ。ベランダに出てちょっとお花見ができるの」
自分の部屋は3階で道路に面しているから素晴らしい眺望ではないけれど、その桜並木が部屋を借りた決め手だと言ってもいいくらい気に入っている。
「いいなそれ。この辺りも川沿いに桜並木あるけど人が多すぎるから」
「じゃあ、来年の春はうちでお花見しよう?あ、今年はベランダの窓締め忘れてて、風が吹いた途端花びらがぶわーって部屋に入ってきちゃってもう後の掃除が大変だっ…た!?」
突然腕を引っ張られる。
それと同時に抱き寄せられていて、目の前には姫の服といい匂いに包まれた。え、どうしてこんなことになっているの?
「えっ?ちょ、何でっ……?」
訳が分からなくて私は目をまばたいた。
「いや……そんな当たり前に、先の約束までするんだなと思って」
そう指摘されて、私ははっとして言葉を失う。自分だけものすごくはしゃいでいたみたいで恥ずかしくなって、しゅんとしおらしくしていると、頭を抱き寄せていた手が背中を撫で始めた。
「……なぁ、やっぱり出かけるの、午後からにしない?」
「………え、?」
着たばっかりのシャツの裾から、手が入った。
遠慮がなくなった触れ方に身の危険を感じて抵抗するものの、姫はお構いなしに髪を梳き耳を甘噛みされる。
さっき可愛いな、なんて侮った自分に全力で忠告しにいきたいーーー
そう思ったときにはすでに遅くて、覗き込む視線に搦めとられたら力なく睨み返すことしかできない。悔しくて、私も姫の背中に手を回したついでに小さくつねってみた。
「…罰ゲームだと思って受け取るよ。この程度じゃまだおつりがくるくらい」
くすくすと嬉しそうに言われて、何とも気が抜けてしまう。
どうやら解放してもらえそうにないと悟った私は諦めて、それでも一矢報いようと交換条件を出すことにした。
「じゃあ、今日のお昼は姫にご馳走してもらう。おつりなんて許さないんだから…っ」
姫が頭上でひとこと、了解と言ってから唇が重なる。
私は照れ隠しでぎゅっと姫の体にしがみついて、まだもうしばらく太陽から隠れるように、再びシーツの海に飛び込んだ。
「だめ、あと少し」
「えぇー……」
もぞもぞと布団から出ようとすると、中から伸びてきた腕に引っ張られて、私の体はまたベッドへと沈む。もう何回目のやりとりだろう。
特に何をするというわけでもなく、髪を撫でられたり、たまに毛先を指に巻き付けてはくるくると解いてみたり。そうされているうちに私もウトウトとしてまた目を開けて、というようなことをさっきから繰り返している。
「そろそろ起きて、いったん帰りたいんだけどなぁ」
「何で?」
「だって着替えとか、持ってないし…」
あぁそっか、と今やっと思い出したみたいな顔をするけれど、状況が変わる気配はない。私は仕方なく、体勢を変えながら落ち着きの良い居場所を探す。
私の動きが寒さからくると思ったのか、姫が布団を手繰り寄せて背中からふわりと掛けてくれる。
私は、ちょうど掛けられた布団を自分側に抱き込むようにして掴んだ。あぁ、これが一番落ち着くかも。
「…ゆきのってさ、クッションとか抱き枕がないと寝られないタイプ?」
「え、何で分かったの?」
確かに小さい頃からベッドの周りにはぬいぐるみを置いて、毎晩お気に入りの子を抱きしめながらじゃないと寝られなかった。今はもうぬいぐるみではないけれど、大きめのクッションを抱き枕がわりにして寝ている。とにかく何かを掴んでいないと落ち着かないのだ。
「夜中寝てるときずっと抱き着いたまま離れないから、もしかしてそうかなと思って」
「……うそ、一晩中?」
何それ、そんなの知らない。
動揺して固まった私を見て、姫の口元がおかしそうに微笑む。言葉は出さずともこれは肯定だ。
そうなると、今もたまに触れる素肌の感触だとかいろいろ再認識させられて、とりあえず私は顔を見られたくなくて布団を頭から被って潜り込んだ。
「いつまでそうしてんの?」
長いか短いか分からない程度の間そうしていると、上から宥めるようにぽんぽんと叩かれる。
「……子どもっぽいって思った?」
抱き枕がないと寝られないことも、こんなふうに隠れることも。
「いや?可愛い思うけど」
あぁそうだ、朝の姫は心臓に悪かったんだった。
事も無げに言われると、何だか意地を張って隠れているのもばかばかしくなってきて、のそのそと布団から顔だけ覗かせると、姫は穏やかに微笑んでいる。
「出てくる気になった?」
「……このまま起きるなら、出る」
閉じたカーテンの隙間から覗く太陽は、最初に目が覚めたときより随分高い位置にある。こうやってごろごろしているのは好きだけれど、本当にそれだけで終わってしまいそうだ。
「分かった、じゃあ起きるか」
交換条件成立。
そうして私たちはようやくベッドから抜け出した。
◇◇◇◇
「もうこんな時間だったのか」
先にベッドを出た姫の言葉にふと時計を見ると、もう10時半を軽く回ってもうすぐ11時になろうとしている。普段の休日でもここまで寝坊することはあまりない。
目が覚めてから、いったいどれぐらいの間まどろんでいたんだろうかとおかしくなった。
「家って吉祥寺だよな。着替えに帰ってから、昼どこかで食べる?」
「うん、そうしよっか?」
私は散らばった服を手繰り寄せて手早く着ると、ベッドから立ち上がる。
「あとどこか行きたいところある?」
「行きたいところ…あ、昨日姫が言ってたドライヤー見に行くのは?」
「俺はいいけど、そんなのでいいの?」
私の提案が予想外だったのか、姫も服を着ながら少し驚いた顔で振り返った。
「うん、私家電見るの好きなんだ。パンフレットを持ち帰って見比べるのも好きだよ」
「初耳、知らなかった」
そう言われると、今まで誰にも言ったことはなかったかもしれない。駅の近くに大きい量販店があるからそこに見に行っていいかと尋ねると、ゆきのにまかせると返ってきた。
「結構何でも揃ってるんだな」
「姫は大学もこっちの方だからあんまり行くことないよね。あ、じゃあ姫がどこか行きたいところとかある?案内するよ」
私は実家にいたころから、友達と遊ぶのも買い物するのもまずは吉祥寺だったから、大体の地理は把握しているしお店にも詳しい方だと思う。
私の言葉にしばらく悩む素振りのあと、姫は思いついたように
「じゃあ、ゆきのの部屋に行きたい」
と言った。
「わ、私の部屋?」
もっと有名な観光スポットや欲しいものが買えるお店のようなところを想像していたから、今度は私が面食らう番になった。
「だめ?」
表情は変わらないけれど、声に少し不安げな色がするものだから私はを振る。
「ううん、だめじゃないんだけど…そんなに広くないよ?ソファーもないし」
「そんなの全然いい、一人暮らしの部屋って大体そういうものだし」
「うん、姫がいいなら来る?」
嬉しそうに、ちょっとほっとしたように笑うのが可愛いと思ってしまった。
「でも何でかベランダは広めなんだよね。あと、マンションの前の街路樹が桜並木だから春は綺麗だよ。ベランダに出てちょっとお花見ができるの」
自分の部屋は3階で道路に面しているから素晴らしい眺望ではないけれど、その桜並木が部屋を借りた決め手だと言ってもいいくらい気に入っている。
「いいなそれ。この辺りも川沿いに桜並木あるけど人が多すぎるから」
「じゃあ、来年の春はうちでお花見しよう?あ、今年はベランダの窓締め忘れてて、風が吹いた途端花びらがぶわーって部屋に入ってきちゃってもう後の掃除が大変だっ…た!?」
突然腕を引っ張られる。
それと同時に抱き寄せられていて、目の前には姫の服といい匂いに包まれた。え、どうしてこんなことになっているの?
「えっ?ちょ、何でっ……?」
訳が分からなくて私は目をまばたいた。
「いや……そんな当たり前に、先の約束までするんだなと思って」
そう指摘されて、私ははっとして言葉を失う。自分だけものすごくはしゃいでいたみたいで恥ずかしくなって、しゅんとしおらしくしていると、頭を抱き寄せていた手が背中を撫で始めた。
「……なぁ、やっぱり出かけるの、午後からにしない?」
「………え、?」
着たばっかりのシャツの裾から、手が入った。
遠慮がなくなった触れ方に身の危険を感じて抵抗するものの、姫はお構いなしに髪を梳き耳を甘噛みされる。
さっき可愛いな、なんて侮った自分に全力で忠告しにいきたいーーー
そう思ったときにはすでに遅くて、覗き込む視線に搦めとられたら力なく睨み返すことしかできない。悔しくて、私も姫の背中に手を回したついでに小さくつねってみた。
「…罰ゲームだと思って受け取るよ。この程度じゃまだおつりがくるくらい」
くすくすと嬉しそうに言われて、何とも気が抜けてしまう。
どうやら解放してもらえそうにないと悟った私は諦めて、それでも一矢報いようと交換条件を出すことにした。
「じゃあ、今日のお昼は姫にご馳走してもらう。おつりなんて許さないんだから…っ」
姫が頭上でひとこと、了解と言ってから唇が重なる。
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