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対峙するとき2
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「……どうしてなんだ?お前だって、初めはあんなに喜んでたじゃないか。なぜこんなことをする必要があったんだ?」
久志の問いかけが聞こえているのかいないのか、佐和子は何も答えない。
洸もなぜこんな手の込んだことをする必要があったのか、初めは不思議だった。
結婚させたくないのなら、そもそも洸が結婚話を持ち掛けたときに拒否すればいいものを、あのときの佐和子はこちらが辟易するくらいに積極的だったのだ。
「理由は、お金なのでは?」
佐和子の肩がピクリと小さく震える。
唯崎を使って調べさせたところ、会社の業績は10年前を最後にずっと下降線を辿っていた。さらに担当の会計士を詰めたところ明らかに使途不明な入出金も見られるという話だった。おそらくキャッシュもほとんどないのだろう。
「佐和子、加賀城さんの言うことは本当なのか?」
「ご存じありませんでしたか?あなたも一応経営に名前を連ねているのでは?」
「それは…佐和子には、元は私の姉夫婦の会社なのだからあなたに首を突っ込む資格はないと言われて…何となく芳しくはないんだろうと感じていましたが、でもこの家の建て替えもできましたし、それほど困ってる感じもなかったのでてっきり大丈夫なのかと」
洸はしどろもどろに答える久志を呆れた目で一瞥した。
「これはうちの部下が調べた佐和子さん個人の資産状況です。時間がなかったので数年分しか遡れませんでしたが、借金を繰り返しているんですね」
「…っ!!勝手になんてことを!」
唯崎が調べた資料を見せると、佐和子は途端に激高した。
「ええ、調べさせていただきました。どうですか、他人に過去を勝手に調べ上げられて暴かれる気分は?」
佐和子の態度を鼻で笑い、抗議を無視して続けた。
「借金額が大きかったのが今から5年前。清流が大学に入り、のちに入籍した年です」
結婚相手は二回り年上の資産家だとあった。
清流の結婚には何らかの取引があり、佐和子は相手側から見返りとして金銭を受け取って穴埋めにしたのではないか。
「そして現在、当時と同額に近い借金を抱えている。
そういえば…私が清流と結婚したいとあなたに話したとき、結納金のことをずいぶん気にしていましたね?あなたの目的はそれだったのでは?」
『ところで、結納金は弾んでいただけるのかしら?』
あのとき洸は清流をどう説得するかに気を取られていたが、今思い返せばあれこれと話す佐和子は性急に話を進めたがっていた印象がある。
「……そいのよ」
「はい?」
「遅いのよ何もかも!すぐに同居をして話が進むのかと思えばそれから一向に音沙汰はないし、一度あの子にどうなってるのか聞いたらまったく何も進んでないどころか『本当に結婚するかは決まってない』とか曖昧なこと言って!」
佐和子は、清流と洸が6ヶ月の試用期間を設けたことを知らない。
いつまでも結婚話が進まないことに痺れを切らしていたのだとしたら。
「さっさとしなさいと言っても仕事が忙しいだのなんだのとはぐらかして…
何のために大河内さんの話を蹴ったと思っているの?
こんなことならあなたの話を受けずに縁談を進めて、こんな会社もあの子も渡してしまえばよかった!!」
佐和子は顔を歪めて、制御がきかなくなったかのように喚き散らす。
テーブルの上の資料をぐしゃぐしゃに握りつぶされていた。
「あの子はいつもそう。変なところで頑固で、自分のやりたいことを押し通してちっとも言うことを聞かない!そんなところも姉とそっくり!
あんな子嫌い、大っ嫌いよ!!」
久志の問いかけが聞こえているのかいないのか、佐和子は何も答えない。
洸もなぜこんな手の込んだことをする必要があったのか、初めは不思議だった。
結婚させたくないのなら、そもそも洸が結婚話を持ち掛けたときに拒否すればいいものを、あのときの佐和子はこちらが辟易するくらいに積極的だったのだ。
「理由は、お金なのでは?」
佐和子の肩がピクリと小さく震える。
唯崎を使って調べさせたところ、会社の業績は10年前を最後にずっと下降線を辿っていた。さらに担当の会計士を詰めたところ明らかに使途不明な入出金も見られるという話だった。おそらくキャッシュもほとんどないのだろう。
「佐和子、加賀城さんの言うことは本当なのか?」
「ご存じありませんでしたか?あなたも一応経営に名前を連ねているのでは?」
「それは…佐和子には、元は私の姉夫婦の会社なのだからあなたに首を突っ込む資格はないと言われて…何となく芳しくはないんだろうと感じていましたが、でもこの家の建て替えもできましたし、それほど困ってる感じもなかったのでてっきり大丈夫なのかと」
洸はしどろもどろに答える久志を呆れた目で一瞥した。
「これはうちの部下が調べた佐和子さん個人の資産状況です。時間がなかったので数年分しか遡れませんでしたが、借金を繰り返しているんですね」
「…っ!!勝手になんてことを!」
唯崎が調べた資料を見せると、佐和子は途端に激高した。
「ええ、調べさせていただきました。どうですか、他人に過去を勝手に調べ上げられて暴かれる気分は?」
佐和子の態度を鼻で笑い、抗議を無視して続けた。
「借金額が大きかったのが今から5年前。清流が大学に入り、のちに入籍した年です」
結婚相手は二回り年上の資産家だとあった。
清流の結婚には何らかの取引があり、佐和子は相手側から見返りとして金銭を受け取って穴埋めにしたのではないか。
「そして現在、当時と同額に近い借金を抱えている。
そういえば…私が清流と結婚したいとあなたに話したとき、結納金のことをずいぶん気にしていましたね?あなたの目的はそれだったのでは?」
『ところで、結納金は弾んでいただけるのかしら?』
あのとき洸は清流をどう説得するかに気を取られていたが、今思い返せばあれこれと話す佐和子は性急に話を進めたがっていた印象がある。
「……そいのよ」
「はい?」
「遅いのよ何もかも!すぐに同居をして話が進むのかと思えばそれから一向に音沙汰はないし、一度あの子にどうなってるのか聞いたらまったく何も進んでないどころか『本当に結婚するかは決まってない』とか曖昧なこと言って!」
佐和子は、清流と洸が6ヶ月の試用期間を設けたことを知らない。
いつまでも結婚話が進まないことに痺れを切らしていたのだとしたら。
「さっさとしなさいと言っても仕事が忙しいだのなんだのとはぐらかして…
何のために大河内さんの話を蹴ったと思っているの?
こんなことならあなたの話を受けずに縁談を進めて、こんな会社もあの子も渡してしまえばよかった!!」
佐和子は顔を歪めて、制御がきかなくなったかのように喚き散らす。
テーブルの上の資料をぐしゃぐしゃに握りつぶされていた。
「あの子はいつもそう。変なところで頑固で、自分のやりたいことを押し通してちっとも言うことを聞かない!そんなところも姉とそっくり!
あんな子嫌い、大っ嫌いよ!!」
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