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7-6 オリヴァー・フォン・スコットという男
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意地でも付いて来ようとするアレクシスをジュノ家の兄弟に任せてオリヴァーはスコット領に急いだ。この件に関してはオリヴァーが密偵として帝国に入り込んでからしっかりと計画を立ててくれていたようで、事後処理に関しては王国から文官が派遣されて彼らに任すこととなった。
と言っても、結局、オリヴァーが移動できるようになったのはルドルフが捕まってから三日後で、そこからスコット領に急いで戻ったものの、待ちきれない祖父が王都に移動したと聞いてオリヴァーも王都の屋敷に向かった。
「…………ただいま帰りました」
険しい顔をした家族がずらりと並んでいてさすがに居た堪れない。よくやった、と褒められるとは思わなかったが、こんなにも怒っているとは思わなかった。それだけ心配をかけてしまったのだろう。気まずそうにしているとまず祖父がオリヴァーの前に立ち、何も言わずに抱きしめられた。
「よく、無事に戻ってくれた」
戦地に赴いたわけでもないのにこんなにも心配をかけていたとは、オリヴァーは予想以上に小さくなっている祖父の体を抱きしめ返す。
「ご心配をおかけしました」
オリヴァーがそう言うと父や母も顔を綻ばせてこちらにやってくる。
「本当に心配したんだからな」
「無事に帰って来てくれて良かったわ」
母の瞳には涙が滲んでいて、父の目元は薄っすらと隈が出来ていた。きっと前回の人生でも家族達はこうしてオリヴァーの心配をしてくれていたことだろう。こんなにも大切にしてくれる家族をないがしろにして、成り上がることだけを考えていた自分がとても恥ずかしくなった。
やり直す機会を与えてくれたアレクシスに改めて礼を言おうと、オリヴァーは思った。
と言っても、結局、オリヴァーが移動できるようになったのはルドルフが捕まってから三日後で、そこからスコット領に急いで戻ったものの、待ちきれない祖父が王都に移動したと聞いてオリヴァーも王都の屋敷に向かった。
「…………ただいま帰りました」
険しい顔をした家族がずらりと並んでいてさすがに居た堪れない。よくやった、と褒められるとは思わなかったが、こんなにも怒っているとは思わなかった。それだけ心配をかけてしまったのだろう。気まずそうにしているとまず祖父がオリヴァーの前に立ち、何も言わずに抱きしめられた。
「よく、無事に戻ってくれた」
戦地に赴いたわけでもないのにこんなにも心配をかけていたとは、オリヴァーは予想以上に小さくなっている祖父の体を抱きしめ返す。
「ご心配をおかけしました」
オリヴァーがそう言うと父や母も顔を綻ばせてこちらにやってくる。
「本当に心配したんだからな」
「無事に帰って来てくれて良かったわ」
母の瞳には涙が滲んでいて、父の目元は薄っすらと隈が出来ていた。きっと前回の人生でも家族達はこうしてオリヴァーの心配をしてくれていたことだろう。こんなにも大切にしてくれる家族をないがしろにして、成り上がることだけを考えていた自分がとても恥ずかしくなった。
やり直す機会を与えてくれたアレクシスに改めて礼を言おうと、オリヴァーは思った。
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