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7-3 オリヴァー・フォン・スコットという男(R18)

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「……その俺だけって言うの、どういう意味ですか」

 絞りだすような声にオリヴァーは「知らない」と即答する。こんなこと二回分の人生を合わせても初めてなのだから分かるはずがない。

「男同士のセックスなんて、痛いだけで気持ちよくないものだと、思っていたんだ」

 実際、ルドルフや言い寄ってきた男に仕方なく抱かせてやったときは、あれこれされても全く気持ちよくなくてただ気持ち悪いだけだった。

「それなのに俺を誘うような発言したんですか?」

 少し怒りが混じっている声に、オリヴァーは「……その」と言いよどむ。

「お前が俺を抱きたいって思っているなら、叶えてやろうと思っただけだ」

 オリヴァーが言い終わってから少しの時間、沈黙が続く。居た堪れなくなって何か言おうとしたところで、大きなため息が聞こえてきた。覆いかぶさっているせいで表情が読めない。

「そういうところですよ」

「は?」

「なんであなたは自分を大切にしないんですか。おとり作戦の時もそうですけど、自分を犠牲にしすぎですよ」

 ぎゅうと抱きしめられて、オリヴァーは言葉に詰まった。そんなつもりは更々なかった。むしろ、これまで自分のことしか考えてなく、誰が犠牲になろうともどうとも思わなかった。物事が円滑に進むのなら、多少は我慢ができたからそうしていたにすぎない。

「もう少し自分を大切にしてください。あなたを大切に想っている人たちを傷つけているんですよ」

 そう言われて隣を見るとアレクシスは怒っているような苦しそうな顔をしていた。オリヴァーはこれまで周囲の人間を大切にしてこなかったから、自分も大切にされないのも当たり前だった。特段、それで困ったこともなかったし、我慢する相手は自分よりも上の人間だけだったので、下の人間に対しては辛く当たることも多かった。

 だから悪事が明るみに出た際は首謀者にされて全ての罪を擦り付けられ、やり直した人生では少しぐらい周囲を大切にしようと思った。

 ――だから、周りも自分を大切にしてくれていたのか。

 その筆頭は、今、自分を抱きしめているこの男なのだろう。

「慣れていないから、分からなかったんだ。悪かった」

「……やっと分かってくれたんですね」

 オリヴァーがこくりと頷くと、ようやくアレクシスは破顔した。

「これから俺が鬱陶しいぐらい大切にしますから、慣れて行ってください」

 もう十分だが、と思ったけれど、オリヴァーはそれも悪くないと考えを改め、「分かった」と頷いた。




 かぶりと耳を食われて舌が形をなぞる様に動く。じわりと下腹部が重たくなるのを感じて、オリヴァーはつま先に力を入れる。耳から入ってくる音に脳が犯されている。気持ちいいのか苦しいのかよく分からないが、体はしっかりと反応していてアレクシスのごつごつとした手がそれを握りしめる。

「う、ぁあっ……、やだ」

 独り言のように呟いた懇願は聞き入れられず、耳たぶを甘噛みされてじわっと先から何かが漏れるのを感じた。

「我慢しないほうがいいですよ。力、抜いて」

 アレクシスはぽそっとそう呟いて体を起こした。ようやく解放されてほっとしたのもつかの間、ソレを掴んでいたアレクシスの手が動き始める。先からあふれ出した汁を手のひらに伸ばしてぐちゅぐちゅと音を立てて動く。

「やっ、んんっ!」

 これまで自分の欲を発散するために一人ですることはしばしばあったけれど、他人にされて気持ちいいのは初めてだ。剣士らしい皮の硬い手がゆっくりとオリヴァーを絶頂へと導こうとする。

「もう出そうですか?」

「はっ、ぁ、あ、うん、でそっ……」

 達しそうになる直前になって、なんかみっともない顔をしていないか、こんな早く出してしまってだらしなくないのか、などと突然、アレクシスにどう思われるか不安になる。ほんのわずかに萎えたけれど、結局は快感を与えられ続ければ達してしまうもので、情けないぐらいあっという間に白濁を吐き出した。

 アレクシスは汚れた手をまじまじと見つめてから、それをオリヴァーの尻に塗り付ける。一瞬、何をされたのか分からなかったが、後孔の周りをぐりぐりと指で刺激されて慣らそうとしているのに気づいた。

 なんか、慣れていないだろうか。

 オリヴァーを傷つけないよう優しくゆっくりと中に指が入ってくる。

「痛かったら教えてくださいね」

「ん、だいじょうぶ、だ」

 もう少し雑に扱ってくれても構わないというのに、じれったさを覚えるほどに手つきは優しい。ふと視線をアレクシスに向けるとにこりと微笑まれて、オリヴァーはすぐに顔を背けた。なんか急に心臓が苦しくなってくる。ぐりぐりと内壁を押しながら、アレクシスは小声で「大丈夫かな」と呟く。

「どう、かしたのか……?」

「いや……、思ったより狭いんで、大丈夫かな、と」

「は?」

 失礼な物言いだな、と内心で不満に思う。

「大丈夫ってどういうことだ」

「あ、いや、単純に入るのかなって思って」

 確かにそれはオリヴァーも不思議に思うところだが、これまでも何とか受け入れてはいたわけだし、何とかなるのではないかと視線を下に向ける。アレクシスのズボンを押し上げている見て、前言撤回する。

「いや、無理だろうな」

「即答!?」

「だって、それ、俺が知ってるサイズじゃない」

 わずかに引いているというのに、アレクシスはどこか嬉しそうで、

「それ、男を喜ばせるだけだって気づいてます?」

 と言った。
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