やり直しの人生、今度こそ絶対に成り上がってやる(本編完結)

カイリ

文字の大きさ
上 下
52 / 59

7-3 オリヴァー・フォン・スコットという男(R18)

しおりを挟む
「……その俺だけって言うの、どういう意味ですか」

 絞りだすような声にオリヴァーは「知らない」と即答する。こんなこと二回分の人生を合わせても初めてなのだから分かるはずがない。

「男同士のセックスなんて、痛いだけで気持ちよくないものだと、思っていたんだ」

 実際、ルドルフや言い寄ってきた男に仕方なく抱かせてやったときは、あれこれされても全く気持ちよくなくてただ気持ち悪いだけだった。

「それなのに俺を誘うような発言したんですか?」

 少し怒りが混じっている声に、オリヴァーは「……その」と言いよどむ。

「お前が俺を抱きたいって思っているなら、叶えてやろうと思っただけだ」

 オリヴァーが言い終わってから少しの時間、沈黙が続く。居た堪れなくなって何か言おうとしたところで、大きなため息が聞こえてきた。覆いかぶさっているせいで表情が読めない。

「そういうところですよ」

「は?」

「なんであなたは自分を大切にしないんですか。おとり作戦の時もそうですけど、自分を犠牲にしすぎですよ」

 ぎゅうと抱きしめられて、オリヴァーは言葉に詰まった。そんなつもりは更々なかった。むしろ、これまで自分のことしか考えてなく、誰が犠牲になろうともどうとも思わなかった。物事が円滑に進むのなら、多少は我慢ができたからそうしていたにすぎない。

「もう少し自分を大切にしてください。あなたを大切に想っている人たちを傷つけているんですよ」

 そう言われて隣を見るとアレクシスは怒っているような苦しそうな顔をしていた。オリヴァーはこれまで周囲の人間を大切にしてこなかったから、自分も大切にされないのも当たり前だった。特段、それで困ったこともなかったし、我慢する相手は自分よりも上の人間だけだったので、下の人間に対しては辛く当たることも多かった。

 だから悪事が明るみに出た際は首謀者にされて全ての罪を擦り付けられ、やり直した人生では少しぐらい周囲を大切にしようと思った。

 ――だから、周りも自分を大切にしてくれていたのか。

 その筆頭は、今、自分を抱きしめているこの男なのだろう。

「慣れていないから、分からなかったんだ。悪かった」

「……やっと分かってくれたんですね」

 オリヴァーがこくりと頷くと、ようやくアレクシスは破顔した。

「これから俺が鬱陶しいぐらい大切にしますから、慣れて行ってください」

 もう十分だが、と思ったけれど、オリヴァーはそれも悪くないと考えを改め、「分かった」と頷いた。




 かぶりと耳を食われて舌が形をなぞる様に動く。じわりと下腹部が重たくなるのを感じて、オリヴァーはつま先に力を入れる。耳から入ってくる音に脳が犯されている。気持ちいいのか苦しいのかよく分からないが、体はしっかりと反応していてアレクシスのごつごつとした手がそれを握りしめる。

「う、ぁあっ……、やだ」

 独り言のように呟いた懇願は聞き入れられず、耳たぶを甘噛みされてじわっと先から何かが漏れるのを感じた。

「我慢しないほうがいいですよ。力、抜いて」

 アレクシスはぽそっとそう呟いて体を起こした。ようやく解放されてほっとしたのもつかの間、ソレを掴んでいたアレクシスの手が動き始める。先からあふれ出した汁を手のひらに伸ばしてぐちゅぐちゅと音を立てて動く。

「やっ、んんっ!」

 これまで自分の欲を発散するために一人ですることはしばしばあったけれど、他人にされて気持ちいいのは初めてだ。剣士らしい皮の硬い手がゆっくりとオリヴァーを絶頂へと導こうとする。

「もう出そうですか?」

「はっ、ぁ、あ、うん、でそっ……」

 達しそうになる直前になって、なんかみっともない顔をしていないか、こんな早く出してしまってだらしなくないのか、などと突然、アレクシスにどう思われるか不安になる。ほんのわずかに萎えたけれど、結局は快感を与えられ続ければ達してしまうもので、情けないぐらいあっという間に白濁を吐き出した。

 アレクシスは汚れた手をまじまじと見つめてから、それをオリヴァーの尻に塗り付ける。一瞬、何をされたのか分からなかったが、後孔の周りをぐりぐりと指で刺激されて慣らそうとしているのに気づいた。

 なんか、慣れていないだろうか。

 オリヴァーを傷つけないよう優しくゆっくりと中に指が入ってくる。

「痛かったら教えてくださいね」

「ん、だいじょうぶ、だ」

 もう少し雑に扱ってくれても構わないというのに、じれったさを覚えるほどに手つきは優しい。ふと視線をアレクシスに向けるとにこりと微笑まれて、オリヴァーはすぐに顔を背けた。なんか急に心臓が苦しくなってくる。ぐりぐりと内壁を押しながら、アレクシスは小声で「大丈夫かな」と呟く。

「どう、かしたのか……?」

「いや……、思ったより狭いんで、大丈夫かな、と」

「は?」

 失礼な物言いだな、と内心で不満に思う。

「大丈夫ってどういうことだ」

「あ、いや、単純に入るのかなって思って」

 確かにそれはオリヴァーも不思議に思うところだが、これまでも何とか受け入れてはいたわけだし、何とかなるのではないかと視線を下に向ける。アレクシスのズボンを押し上げている見て、前言撤回する。

「いや、無理だろうな」

「即答!?」

「だって、それ、俺が知ってるサイズじゃない」

 わずかに引いているというのに、アレクシスはどこか嬉しそうで、

「それ、男を喜ばせるだけだって気づいてます?」

 と言った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

フローブルー

とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。 高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

塔の上のカミーユ~幽囚の王子は亜人の国で愛される~

蕾白
BL
国境近くにあるその白い石の塔には一人の美しい姫君が幽閉されている。 けれど、幽閉されていたのはある事情から王女として育てられたカミーユ王子だった。彼は父王の罪によって十三年間を塔の中で過ごしてきた。 そんな彼の前に一人の男、冒険者のアレクが現れる。 自分の世界を変えてくれるアレクにカミーユは心惹かれていくけれど、彼の不安定な立場を危うくする事態が近づいてきていた……というお話になります。 2024/11/16 第一部完結になります。 ファンタジーBLです。どうかよろしくお願いいたします。

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

某国の皇子、冒険者となる

くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。 転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。 俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために…… 異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。 主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。 ※ BL要素は控えめです。 2020年1月30日(木)完結しました。

運命の息吹

梅川 ノン
BL
ルシアは、国王とオメガの番の間に生まれるが、オメガのため王子とは認められず、密やかに育つ。 美しく育ったルシアは、父王亡きあと国王になった兄王の番になる。 兄王に溺愛されたルシアは、兄王の庇護のもと穏やかに暮らしていたが、運命のアルファと出会う。 ルシアの運命のアルファとは……。 西洋の中世を想定とした、オメガバースですが、かなりの独自視点、想定が入ります。あくまでも私独自の創作オメガバースと思ってください。楽しんでいただければ幸いです。

処理中です...