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4-4 王立学園
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今日は入学式が終われば学園では何もすることがなくなる。在校生による委員会の勧誘が始まるけれど、誰かに出くわしても面倒であり、今回はどこかの委員会に入るつもりはないので大人しく自室にこもるつもりでいた。
王太子でもあれば今後の政治手腕を試すためにも生徒会への入会が必須となり、生徒会長として生徒を引っ張っていくのが慣習であるけれど、王太子以下はそうとも限らない。ただすでに王太子はこの学園を卒業済みであり、それならばこの学園を引っ張っていくのは自分だとルドルフが周囲にそう言いふらしほぼ立候補のような他薦で、今では彼が生徒会長だ。それは今も変わっていない。
当然、前回の人生では彼をサポートすべくオリヴァーも生徒会に入っていたけれど、ルドルフとの接点は回避していきたいので、よほどのことがない限り生徒会には近づかないつもりだ。
「オリヴァー様。アレクシス殿下がいらしていますが、どうしますか?」
自分の後を追ってきたであろうアレクシスに対し、話す気などさらさら無いオリヴァーはふいと視線を逸らす。
「疲れて寝ているとでも伝えておいてくれ」
カミラはわずかに眉間に皺を寄せたが、すぐに「かしこまりました」と頭を下げ部屋を出て行った。
朝はゆっくりとお茶を飲んでから登校する。
「オリヴァー様。アレクシス殿下がお見えでございます」
オリヴァーは静かにカップをソーサーの上に置く。これまでバルナバスが来ていたので無視を続けていたが、さすがに王族相手にそれは通用しない。だが不服ぐらいは全面に出しても不敬にはならないだろう。
大人げないですよ。なんて十三歳を相手にそれこそ大人げない発言をしてきたバルナバスは訪問禁止にしたのでカミラによって門前払いされたはずだ。だからわざわざ御自ら来たのか。ゆっくりと身なりを整え、十分に時間をかけてから扉を開けた。
「……大変お待たせいたしました」
オリヴァーはちらりと彼の背後を見る。どうやらバルナバスは連れてこなかったようで誰もいない。それもどうなんだ? と疑問を抱きつつも目下にいるアレクシスに視線を移す。
「いえ、先触れもなしに訪問したのはこちらですから、構いません。……ただ、一言、謝りたくて」
「殿下が謝る必要はございません」
「でも、結果的にはあなたを欺くことになりました」
そう言うけれど、別に騙されたとはオリヴァーも思っていない。あの時、彼がスコット領にいたという事実を伏せなければならなかったのならば、いくら領主の息子とは言え容易に打ち明けることはできなかっただろう。
それならばなぜここまで腹を立てているのか。怒りの矛先をアレクシスに向けるのはお門違いだ。
大人げないですよ。と呆れ顔で言われたのをもう一度思い出して、羞恥心が込みあがってきた。
「いや……、本当に気にしていませんから、謝らないでください」
ここ数日の自分を思い出して居た堪れなくなる。
「それなら、オレと仲良くしてくれますか?」
輝かしい目を向けられて、オリヴァーは息を吐く。それとこれは、また別の話だ。
王太子でもあれば今後の政治手腕を試すためにも生徒会への入会が必須となり、生徒会長として生徒を引っ張っていくのが慣習であるけれど、王太子以下はそうとも限らない。ただすでに王太子はこの学園を卒業済みであり、それならばこの学園を引っ張っていくのは自分だとルドルフが周囲にそう言いふらしほぼ立候補のような他薦で、今では彼が生徒会長だ。それは今も変わっていない。
当然、前回の人生では彼をサポートすべくオリヴァーも生徒会に入っていたけれど、ルドルフとの接点は回避していきたいので、よほどのことがない限り生徒会には近づかないつもりだ。
「オリヴァー様。アレクシス殿下がいらしていますが、どうしますか?」
自分の後を追ってきたであろうアレクシスに対し、話す気などさらさら無いオリヴァーはふいと視線を逸らす。
「疲れて寝ているとでも伝えておいてくれ」
カミラはわずかに眉間に皺を寄せたが、すぐに「かしこまりました」と頭を下げ部屋を出て行った。
朝はゆっくりとお茶を飲んでから登校する。
「オリヴァー様。アレクシス殿下がお見えでございます」
オリヴァーは静かにカップをソーサーの上に置く。これまでバルナバスが来ていたので無視を続けていたが、さすがに王族相手にそれは通用しない。だが不服ぐらいは全面に出しても不敬にはならないだろう。
大人げないですよ。なんて十三歳を相手にそれこそ大人げない発言をしてきたバルナバスは訪問禁止にしたのでカミラによって門前払いされたはずだ。だからわざわざ御自ら来たのか。ゆっくりと身なりを整え、十分に時間をかけてから扉を開けた。
「……大変お待たせいたしました」
オリヴァーはちらりと彼の背後を見る。どうやらバルナバスは連れてこなかったようで誰もいない。それもどうなんだ? と疑問を抱きつつも目下にいるアレクシスに視線を移す。
「いえ、先触れもなしに訪問したのはこちらですから、構いません。……ただ、一言、謝りたくて」
「殿下が謝る必要はございません」
「でも、結果的にはあなたを欺くことになりました」
そう言うけれど、別に騙されたとはオリヴァーも思っていない。あの時、彼がスコット領にいたという事実を伏せなければならなかったのならば、いくら領主の息子とは言え容易に打ち明けることはできなかっただろう。
それならばなぜここまで腹を立てているのか。怒りの矛先をアレクシスに向けるのはお門違いだ。
大人げないですよ。と呆れ顔で言われたのをもう一度思い出して、羞恥心が込みあがってきた。
「いや……、本当に気にしていませんから、謝らないでください」
ここ数日の自分を思い出して居た堪れなくなる。
「それなら、オレと仲良くしてくれますか?」
輝かしい目を向けられて、オリヴァーは息を吐く。それとこれは、また別の話だ。
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