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3-13 スコット侯爵領
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激動の真夏から季節は移り変わり、各地で豊作の祭りが開かれるようになった秋。暑さはようやく鳴りを潜め、日中でも大分と過ごしやすくなってきた。
スコット領へ来てからもう半年が過ぎようとしている。
ルドルフが王都へ戻ってから二ヶ月が経とうとしているけれど、なぜかやたら頻繁に手紙が届く。そろそろ従者を付けなければ箔が付かないのだろうが、オリヴァー以外に志願者もいなかったのだろう。書いている内容はほとんど一緒で、従者になってほしい気持ちだけは痛いほど伝わってきた。まあ、それでも断固としてお断りだが。例え王命を下されようとも、スコット侯爵家のコネをすべて使って国外逃亡してやるつもりでいる。
それに王命などそう簡単に出せるものではなく、従者を任命する際は王命が下されるけれど、本人の意思を確認してからだ。ルドルフの我儘で王の権力を使っていたら国は破綻する。
それが分からないからこそ、ルドルフは傀儡として利用されるのだろう。権力を求めている奴ほど、扱いやすいものはない。
オリヴァー自身も利用しようとしていたのだから、あまり偉そうなことは言えない。
二週に一度ぐらい頭痛が頭痛を呼ぶ手紙が届くぐらいで、オリヴァーの日常は平穏そのものだった。
「お祖父様。市場への視察もかねて祭りに行きたいので、許可をいただけますか」
領地へ来てようやく城の外に出る時間が出来た。後継者ではないけれど、侯爵家の子息として勉強に武術も人並み以上を求められる。特に祖父はその辺りが平等で、次男のオリヴァーにも兄と同じレベルを要求した。まあ、剣術に関しては今なら兄よりも勝っている自信がある。
それらのカリキュラムもようやく落ち着き、スコット領で一番大きい祭りが近々行われるので視察も兼ねて祭りに行こうと考えていた。今年は平年並みに収穫できているらしいので、そこそこ人出もあるはずだ。
「ちゃんと護衛を連れて行くなら構わんぞ」
「分かりました。騎士を三人お借りします」
ここへ来てから共に訓練しているからオリヴァーが付いてきてほしいと言えば、三人ぐらいは快く引き受けてくれるだろう。
「三人か……。うーん、まあ、いいだろう」
人数的に心もとないのか祖父は難しい顔をしている。王都の次に栄えていると言っても、貧民街も存在するのでいい身なりをしていれば追い剥ぎにあう可能性もある。けれどオリヴァーだって鍛えているし、大人数で囲まれたりしなければ自分の身ぐらいは守れる。
その辺りは祖父も認めてくれているだろうが、祭りで人が多くなれば誘拐されたりする確率も上がる。祖父として純粋に心配なのだろう。
「楽しんできなさい」
「はい」
連れて行く騎士も決まって祭りまであと三日と言うところで、オリヴァーが市場へ行くことを聞きつけたのか、アランが息を切らしながらやってきた。
「オリー兄様。祭りへ行くって本当ですか」
そんな急ぎながら聞く内容だろうか。オリヴァーが頷くと「俺も一緒に行きたいです!」と珍しく我儘を言った。
「俺は構わないけど、お祖父様からちゃんと了承を貰ったほうがいい」
「……そう、ですよね」
アランの表情が一気に暗くなり、肩を落としている。さすがに祖父の客としてきている以上、オリヴァーの独断で連れ出すことはできない。それにルドルフが来た時の一件と、彼の素性が未だオリヴァーに隠されていることを考えたら、そうやすやすと城外へ出すわけにはいかなかった。それぐらいの空気は読める。
「エッカルト様がいいって言ったら、良いんですよね?」
「ああ」
「二言はナシですよ!」
そう言ってアランは祖父の執務室へ向かって走り出した。やはり年相応に祭りなんかは気になるのか。
スコット領へ来てからもう半年が過ぎようとしている。
ルドルフが王都へ戻ってから二ヶ月が経とうとしているけれど、なぜかやたら頻繁に手紙が届く。そろそろ従者を付けなければ箔が付かないのだろうが、オリヴァー以外に志願者もいなかったのだろう。書いている内容はほとんど一緒で、従者になってほしい気持ちだけは痛いほど伝わってきた。まあ、それでも断固としてお断りだが。例え王命を下されようとも、スコット侯爵家のコネをすべて使って国外逃亡してやるつもりでいる。
それに王命などそう簡単に出せるものではなく、従者を任命する際は王命が下されるけれど、本人の意思を確認してからだ。ルドルフの我儘で王の権力を使っていたら国は破綻する。
それが分からないからこそ、ルドルフは傀儡として利用されるのだろう。権力を求めている奴ほど、扱いやすいものはない。
オリヴァー自身も利用しようとしていたのだから、あまり偉そうなことは言えない。
二週に一度ぐらい頭痛が頭痛を呼ぶ手紙が届くぐらいで、オリヴァーの日常は平穏そのものだった。
「お祖父様。市場への視察もかねて祭りに行きたいので、許可をいただけますか」
領地へ来てようやく城の外に出る時間が出来た。後継者ではないけれど、侯爵家の子息として勉強に武術も人並み以上を求められる。特に祖父はその辺りが平等で、次男のオリヴァーにも兄と同じレベルを要求した。まあ、剣術に関しては今なら兄よりも勝っている自信がある。
それらのカリキュラムもようやく落ち着き、スコット領で一番大きい祭りが近々行われるので視察も兼ねて祭りに行こうと考えていた。今年は平年並みに収穫できているらしいので、そこそこ人出もあるはずだ。
「ちゃんと護衛を連れて行くなら構わんぞ」
「分かりました。騎士を三人お借りします」
ここへ来てから共に訓練しているからオリヴァーが付いてきてほしいと言えば、三人ぐらいは快く引き受けてくれるだろう。
「三人か……。うーん、まあ、いいだろう」
人数的に心もとないのか祖父は難しい顔をしている。王都の次に栄えていると言っても、貧民街も存在するのでいい身なりをしていれば追い剥ぎにあう可能性もある。けれどオリヴァーだって鍛えているし、大人数で囲まれたりしなければ自分の身ぐらいは守れる。
その辺りは祖父も認めてくれているだろうが、祭りで人が多くなれば誘拐されたりする確率も上がる。祖父として純粋に心配なのだろう。
「楽しんできなさい」
「はい」
連れて行く騎士も決まって祭りまであと三日と言うところで、オリヴァーが市場へ行くことを聞きつけたのか、アランが息を切らしながらやってきた。
「オリー兄様。祭りへ行くって本当ですか」
そんな急ぎながら聞く内容だろうか。オリヴァーが頷くと「俺も一緒に行きたいです!」と珍しく我儘を言った。
「俺は構わないけど、お祖父様からちゃんと了承を貰ったほうがいい」
「……そう、ですよね」
アランの表情が一気に暗くなり、肩を落としている。さすがに祖父の客としてきている以上、オリヴァーの独断で連れ出すことはできない。それにルドルフが来た時の一件と、彼の素性が未だオリヴァーに隠されていることを考えたら、そうやすやすと城外へ出すわけにはいかなかった。それぐらいの空気は読める。
「エッカルト様がいいって言ったら、良いんですよね?」
「ああ」
「二言はナシですよ!」
そう言ってアランは祖父の執務室へ向かって走り出した。やはり年相応に祭りなんかは気になるのか。
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