やり直しの人生、今度こそ絶対に成り上がってやる(本編完結)

カイリ

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3-4 スコット侯爵領

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 祖父の訓練はまだ夜も明けきらぬうちから始まる。

 訓練場の周りを十周。それから腕立て伏せや腹筋などの基礎トレーニングを二時間。それが終わってからようやく朝食にありつける。

 元々、少食だったとはいえ、朝からそれほど動けば腹だって減る。食べるのもトレーニングだと山盛りの食事に見ているだけで満腹になるかと思いきや、体は素直でペロリと平らげてしまった。それからアランやバルナバスの皿に盛られた量を見て、まだまだ手加減してくれていたのだと知る。

 そんな生活を一ヶ月も続けていると背も体重も増えてここへ来た時よりも一回り大きくなった。全体的に筋肉も付いたけれど、あまり付きやすい体質ではないので一見は華奢に見える。一年も続けていれば変わるだろうか。 

 ここでの生活はやはり思い通りにいかない。あまり仲良くするつもりのなかったアランに懐かれてしまい、どちらかと言えば仲良くしたかったバルナバスには一線引かれているようだった。なぜかバルナバスはアランに敬語を使っていて、アランが何をするにも傍に付いていた。彼が自由行動を取るのはアランの傍に祖父がついている時だけだった。

 辺境伯嫡子であるバルナバスが敬語を使う相手。もしかして身分を隠しているのだろうか。その可能性は高いけれどわざわざ隠さなければならないのなら、どこぞの公爵の庶子だったりとややこしい立場なのだろう。やはり関わらない方が自分のためだ。

 それなのに勉強をするときも、鍛錬をするときも、食事をするときも一緒だ。何か話すわけでもないのに。嫌そうな顔をしてしまうとバルナバスの表情も厳しくなるので邪険にできない。 

 やはりここでの生活は一筋縄ではいかない。
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