上 下
7 / 17

3-3 Bub

しおりを挟む
 寄宿学校に通える人数はそう多くないことから、一学年一クラスだ。王子のルイーズやアルフォンス、オズワルドは同じクラスだった。先程の愚行を謝りたくなったけれど、王子が同じクラスにいるとなれば人がそこに集中してしまい、その輪に入る勇気がなかった。

 ルイーズには入学式での共通イベントの他に教室で声を掛けられる出会いイベントがある。ルイーズに声を掛けられるには全ステータス50以上が必要になり、周回アイテムがないと出会いすら厳しい。ステータスをまんべんなく上げるのも大変なのに王子とはイベントも多く、一年の序盤で出会っておかないとプロポーズイベントまで完走しない。

 ま、そんなヒロインの展開なんてモブの俺には全く関係ない。逆玉狙いは俺の精神的にきついから、この三年間でいい就職先を探すほうが簡単そうだ。そのためには成績上位に食い込んで優秀な人物であるというアピールが必要だ。ゲーム内であろうがなかろうが、俺自身のステータス上げは必要な作業らしい。

 セント・ルーネカレッジには部活動があり、自身のスキルを上げるものや攻略対象者たちと同じクラブなど選択肢は色々ある。ただヒロインは生活費を稼がなければならないため、部活動をしていると他のステータスを上げられないというデメリットもあった。親密度を上げるには打って付けなので、あまりステータスを必要としないキャラを攻略するなら部活に入るのは悪くない。

 俺はというとどんなことが得意で何ができないのかが分かるまで部活動には入らないつもりだった。興味本位で入って周囲の足を引っ張るのも嫌だ。それに俺も週に二回ぐらいはバイトをしないと日々の生活が大変だ。学校には前もって許可を取ってあるので門限さえ守ればバイトに出るのは問題ない。あまりいい顔をされなかったが。

 教師も教師で有力貴族の次男だったりするのでこの学校を卒業している人が多い。バイトをしてまで学校に通う気持ちが理解できないのだろう。けれどそれを気にして虚勢を張ったところで生活ができないのだから仕方ない。

 バイトは学校からさほど距離のない食堂ですることになった。夜は居酒屋としても経営していて酒を提供する店に学生が働きに出るのに難色を示されたけれど、土日の日中だけでは休みがほとんどないので平日の晩一日と土曜の日中だけ働くことになった。

 貴族の子息令嬢が庶民が通う食堂になんて来ることもないだろう。バイトしている間だけは何も考えずに済みそうだ。

 寮では二人一部屋で生活する。ここでは貴族階級など関係なく、王子と言えど例外ではない。それでも王子と一緒になる人は限られていて、彼の側近でもあるジェイクが同室だ。てっきり王子と友人でもあるアルフォンスが同室なのかと思っていたけれど違ったらしい。ゲームではジェイクを差し置いてアルフォンスが同室だった。

「まさか、同じ部屋になるとは思わなかったなあ」

 にこにこと微笑んでいるアルフォンスに俺は一歩たじろぐ。人数こそは多くないけれど、どんな確率でアルフォンスと同室を引いてしまったのだろうか。嫌いと言うわけではないが、俺をおちょくったり馬鹿にしてきたりするところもあって、アルフォンスに対して苦手意識を持ち始めていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

嫌われ者だった俺が転生したら愛されまくったんですが

夏向りん
BL
小さな頃から目つきも悪く無愛想だった篤樹(あつき)は事故に遭って転生した途端美形王子様のレンに溺愛される!

【完結】その少年は硝子の魔術士

鏑木 うりこ
BL
 神の家でステンドグラスを作っていた俺は地上に落とされた。俺の出来る事は硝子細工だけなのに。  硝子じゃお腹も膨れない!硝子じゃ魔物は倒せない!どうする、俺?!  設定はふんわりしております。 少し痛々しい。

王道学園なのに、王道じゃない!!

主食は、blです。
BL
今作品の主人公、レイは6歳の時に自身の前世が、陰キャの腐男子だったことを思い出す。 レイは、自身のいる世界が前世、ハマりにハマっていた『転校生は愛され優等生.ᐟ‪‪.ᐟ』の世界だと気付き、腐男子として、美形×転校生のBのLを見て楽しもうと思っていたが…

【完結】だから俺は主人公じゃない!

美兎
BL
ある日通り魔に殺された岬りおが、次に目を覚ましたら別の世界の人間になっていた。 しかもそれは腐男子な自分が好きなキャラクターがいるゲームの世界!? でも自分は名前も聞いた事もないモブキャラ。 そんなモブな自分に話しかけてきてくれた相手とは……。 主人公がいるはずなのに、攻略対象がことごとく自分に言い寄ってきて大混乱! だから、…俺は主人公じゃないんだってば!

転生したら乙女ゲームの攻略対象者!?攻略されるのが嫌なので女装をしたら、ヒロインそっちのけで口説かれてるんですけど…

リンゴリラ
BL
病弱だった男子高校生。 乙女ゲームあと一歩でクリアというところで寿命が尽きた。 (あぁ、死ぬんだ、自分。……せめて…ハッピーエンドを迎えたかった…) 次に目を開けたとき、そこにあるのは自分のではない体があり… 前世やっていた乙女ゲームの攻略対象者、『ジュン・テイジャー』に転生していた… そうして…攻略対象者=女の子口説く側という、前世入院ばかりしていた自分があの甘い言葉を吐けるわけもなく。 それならば、ただのモブになるために!!この顔面を隠すために女装をしちゃいましょう。 じゃあ、ヒロインは王子や暗殺者やらまぁ他の攻略対象者にお任せしちゃいましょう。 ん…?いや待って!!ヒロインは自分じゃないからね!? ※ただいま修正につき、全てを非公開にしてから1話ずつ投稿をしております

大好きな乙女ゲームの世界に転生したぞ!……ってあれ?俺、モブキャラなのに随分シナリオに絡んでませんか!?

あるのーる
BL
普通のサラリーマンである俺、宮内嘉音はある日事件に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 しかし次に目を開けた時、広がっていたのは中世ファンタジー風の風景だった。前世とは似ても似つかない風貌の10歳の侯爵令息、カノン・アルベントとして生活していく中、俺はあることに気が付いてしまう。どうやら俺は「きっと未来は素晴らしく煌めく」、通称「きみすき」という好きだった乙女ゲームの世界に転生しているようだった。 ……となれば、俺のやりたいことはただ一つ。シナリオの途中で死んでしまう運命である俺の推しキャラ(モブ)をなんとしてでも生存させたい。 学園に入学するため勉強をしたり、熱心に魔法の訓練をしたり。我が家に降りかかる災いを避けたり辺境伯令息と婚約したり、と慌ただしく日々を過ごした俺は、15になりようやくゲームの舞台である王立学園に入学することができた。 ……って、俺の推しモブがいないんだが? それに、なんでか主人公と一緒にイベントに巻き込まれてるんだが!? 由緒正しきモブである俺の運命、どうなっちゃうんだ!? ・・・・・ 乙女ゲームに転生した男が攻略対象及びその周辺とわちゃわちゃしながら学園生活を送る話です。主人公が攻めで、学園卒業まではキスまでです。 始めに死ネタ、ちょくちょく虐待などの描写は入るものの相手が出てきた後は基本ゆるい愛され系みたいな感じになるはずです。

『ぼくの考えた最強の攻様』に転生したけど解釈違いが覆せない悲しみ

雪雲
BL
病死した腐女子の主人公は、目が覚めたら見知らぬ場所で入院友達でありお腐れさま同志と考えた『ぼくの考えた最強の攻様』になって居たのだが…何故か設定とは異なる点、そして何よりも中身が腐女子である自分!最悪か!唯一の友達との思い出の詰まった『最強の攻様』像を壊さない為に、友人との右とか左の闘争を避けるべく、『最強の攻様』に成ろうと決意するが、良く分からない世界に良く分からない自分の現状。周囲の解釈違いにより『総受け』まっしぐらに焦りが増していく…。 「まっさん……私は正直逆カプとか平気なんだ。ただできれば第三者視点で見たい。私は壁に成りたい…。でもまっさんとの思い出を穢さない為にも、ガンバリマスネー(白目)」 尚、努力は実らない。病院暮らしのコミュニケーション経験値の低い主人公には『最強の攻め』は難易度が高すぎた…。

血迷わないでください義兄さん!悪役令息の弟に転生したので、兄と一緒に冒険者になります

さえ
BL
BLです。 トラック転生を果たした僕。気がついたら前世でプレイしていた乙女ゲームに!? 僕は作品中でもモブ中のモブ、悪役令息の弟なのか。 そうだ。悪役令息役である兄を連れて冒険者になろう。そしたら学校に通わないからゲームは始まらなくて断罪イベントにならなくて済むじゃん。 に、兄さん!?僕は弟でしかも男です!血迷わないでください!! ひょっとして兄さんはツンデレですか? え!兄さんじゃなくて義兄なの!?なら、、、 、、、なんで、、、、なんで学校に通うことになってるの!?世界の強制力ってやつか!? 気楽に読めるを目指してます。 ※R-18シーンは☆マークつけます

処理中です...