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魔道士クリスティナ
しおりを挟むん、ううん、机のうえで寝ちゃった……
書きかけのメモの上にちょっと水玉があるのは見なかったことにしよう。……顔汚れてないかな。
最近始めたことだけど、ぜんぜんうまくいかない。
昨日も夜寝るのも惜しくて……昼寝になっちゃった。
今は災禍を倒す旅も、ちょっとゆっくりでよかったよ。
聖女様のお供になるって聞いたときは……まさかこんなゆっくり魔法の研究する暇があるとは思わなかったよ。順調に旅が進んでるんだって。
世界を滅ぼすという7つの災禍。
教会から発表があって、当代聖女アエリアーナ様が討伐の旅に出る。
それに付き添う魔道士が必要って、私ですかー!?って、叫んじゃったよね。魔道協会の偉い人の前だったからすごい怒られた。
……でも、あとから考えてみたら、私が選ばれるのは当たり前のことだったんだ。
私のお祖母さんが、魔物の子を産んだ魔女って言われてる。
ほんとかどうか、その魔物の子の父さんは私が小さい頃に亡くなってるし、お祖母さんも。
何が真実かなんて、どうでもいい人たちは、私を見ては嘲笑う。私は魔物の特徴をいっこも持ってないんだけど。
……だから、死ぬかもしれない危険な旅に、重要な人間を選ばないでしょ。気づいたときに、ちょっと泣いた。
でも、聖女様はとってもかわいくて、私の歳が近いからって愛称で呼んでもいいって!友達ってことだよね!?
他の男の人たちはちょっと怖かったけど……騎士様ってそうなのかな?って、そのときは思っていた。
でも、聖女様――リアちゃんが、すごくダインって人のことを怖がってた。暴君騎士って呼ばれてて、すごく乱暴な人っていうのはあとから聞いた。
……その意味が、一番最初に封印が解けた災禍の討伐の時に、よくわかった。
あの時のことは………………………………うん、忘れた。忘れたよ。
そう、その第一の災禍って、人間みたいな人だった。
リュートって名前の、明るい人。色々あって、一緒に旅することになった。
本当は、何百年も封印されてた、世界を滅ぼすものなのにね。
見た目はちょっと怖い?んだけど、今のところぜんぜん災禍っぽくなくて……むしろ、すごくいい人に見える。
私ともよく話してくれるから、なんか同い年の友達みたい。友達だったら、いいな、初めて、ふたりも友達ができた。
そう、リュートはアエリアーナちゃんとも仲がいいよ。
この間もふたりでリュートの部屋に入ってくところ見ちゃった。えーそーなのー?って聞きたいけど、……ううん、聞けないなあ、いろんな意味で。
……リュートって、ダインのことをどう思ってるんだろう。
怖いなって思ったダインは、本当はかわいそうな人だった。
今回の討伐隊の任命も……私と同じ理由じゃないかなって。
昔のことをちょっとだけ聞いて、私は怒る気がなくなっちゃった。
私がひどい目にあったわけじゃないもの。
リュートがすごく同情してたのもある。リュートがそういうなら、私はもう何も言わない。
リアちゃんは、なんだかまだ怒ってるけど。
――だからなんだけど、私もなにか出来たらなって。
たまにすごく役立たずになるんだ、私。魔道士だから仕方がないんだけど……力もないから体張れないし、瘴気に有効な魔法って少ないんだよ。
第四のとき、何も出来なかったから、ものすごく悔しかったから……
今は、みんなには秘密。失敗したらすごく恥ずかしいし。
もうちょっと、のような気もするんだけど……まだ、次の第五までには時間があるから、完成まで仕上げたいよね。
っと、リア?戻ってきたんだ。
……ふふ、またリュートと話してきたの?いつもふたりきりで話したあとってなんか嬉しそうだよね、リアちゃんって。
「急ですが、明後日の朝に旅立とうと思うのですが……」
「うん分かった。荷物まとめとくよ」
数日過ごしたこのお宿ともあと2日か。
まだ旅は続くんだな。
「なんか楽しいことあったの?」
特に今日は嬉しそうなリアちゃん。
なにもないっていうけど、あやしーなー。
ほんとに、前から仲良かったけど、第四のあとにもっと仲良しになったよね、リアちゃんとリュートって。
これはもしや……世に言う三角関係ってやつなのでは?
ダインは、リュートのこと気に入ってるでしょ、ねえ?じゃなきゃ、あんな何度も、むふ。
私は別に男同士って気持ち悪いとか思わないよ?
「ねえ、リアちゃんはリュートのことどう思ってるの?」
聞いちゃった。
そしたら……えっ、すっごい、すんっ……顔になっちゃったアエリアーナちゃん……
「そういうんじゃ、ないんで」
……はい。分かりました。もう言いません。
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