僕の初恋を返せ

鹿音二号

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2−12.1※

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「して」

抱きつかれて、首筋に顔を埋められた。
その頼りなく稚い声は、今まで食べたどんな菓子よりも甘かった。
その甘さは、即座にグレオルの体に響いた。
気がつけば、出していた。

「……」
「……」

震える腰に、鋭い快感の余韻。萎んだ、グレオルの、性器。
たった、先っぽを少し入れただけでこの体たらく。
情けなさより何より、

(……………………………………1回……ッ!)

これっきりの。
デイルも、分かったらしい。どうしたものかと戸惑っているのが分かる。抱き締め合っていて、お互い顔が見えていないのが救いだった。情けなさすぎて泣けてきている。
こわばっていたデイルの身体も弛緩している。
さっきまで苦しそうだった。それはグレオルが彼へと差し入れたからだけではないのは丸わかりだった。ちょっとでも苦痛を忘れてくれたのなら、良かった。
それが慰めになった。
腰を引こうとすると、くっと首に回った細い腕がそれを、引き止めた。

「デイル……?」
「1回、ですよね。僕、まだです」

かすれた声が、耳元で囁く。
は、と息が止まった。

「……だが、しかし……」
「約束、守ってください、よ」

くすりと笑われて、自分も自然と口元が緩む。

「……分かった」

愛している、と囁けば、返事のつもりか、彼の頭が首に擦り付けられた。
本当は性器に取り付けた皮……腸詰め用を加工したものを換えたほうがいいのだが、もたもたする気になれなかった。
ゆっくりと、腰を動かす。
デイルの下肢は、さっきのこわばりはほとんど解けたものの、やはり狭くて。
グレオルは萎えた自分のものを擦りつける。慎重に、焦らないように。

「……っ、……ぅ」

デイルは抱きついたまま、時折喉を鳴らしてぴくりと震える。
我慢しているのは、痛みでなければいいが。
グレオルの男が十分な硬さになるのは時間がかからなかった。愛した者の触感に匂いに味に、興奮しないわけがない。

「デイル、ほんとうに、いやなら言うんだぞ……」
「……はい」

震えた声が、それでも健気に言ってくれるのに、何度目かの幸福と罪悪感が胸を締め付ける。
ず、と押し付けると、デイルはびくん、と開かされた脚を跳ね上げた。

「あ、……っ」
「く、」

狭い。
無理ではないが、傷つけそうだ。
前は、そうじゃなかったなと、ちらりと思い出す。柔らかくて、どこを触ってもいい反応をした。
嫌がっていないと勘違いした理由だ。薬で力が入らず、さらに執拗なグレオルの詰問に発露したデイルの想いが、自身に暗示をかけた状態になったのでは、とレイリーが言っていた。

(ふざけるな……)

こんないたいけだった彼を、むちゃくちゃにしたのか。
自分への怒りで力が入ったのか、少し強引になってしまった。びくりとデイルは震えてぐっとグレオルの頭を掻き抱く。

「悪かった……」

今度は慎重に、探るように動かす。
これ以上は、というところまで来るのに、どれくらい時間がかかったか。
ふたりとも汗でびっしょりで、グレオルは上がった息すら熱い。

「……っ、大丈夫か?」
「……――ん、」

かくかくと頷くデイルは、途中力が入らなくなって、シーツに落ちた。涙を溜めた明るい色の瞳がうろうろとあちこちを見ている。

「すぐには、しないから」
「え、」
「馴染むまで待つ」
「……はい」

両手で顔を隠してしまった。その指の隙間から見える頬が赤くなっていて、どうやら苦痛ばかりではないらしいとほっとする。
シーツに散った、麦わら色の髪に目が行く。以前湯殿で触って、感動したものだった。柔らかくてすぐに指に絡んでくるので楽しかった。
それをそっと根元から撫でて、現れた首に口づける。

「殿下……」
「……レオ、と呼んでほしい」
「え」

驚いたように手を外して見上げてくるデイルに、そっと微笑む。

「愛称だ。レオ、レイと音が似ているせいか、誰も呼ばん。あれも、成人したらたまにしか使ってくれなくてな」
「え……それは、」
「ふたりきりのときは、レオと、呼んでくれ」

むっと、睨まれた。彼にはやはりちゃんと伝わったらしい。
意味は、またふたりきりになってくれ。これはベッドの上の口約束だから、破られようとどうでもいい、ただのささやかな願いだ。
デイルの手に口づけ、じっと見つめるとじわじわと彼の顔がまた赤くなった。

「……ずるいですよ」
「これくらいはいいだろう?」
「……分かり、ました」

はあ、と小さくため息をついて、

「レオ、様……」
「……っ」

思ったより、効果があった。
びく、と中で震えたのが分かったのだろう。ひっ、と呼吸を引きつらせたデイルに、何もしないと首を振りながらそっと頭を撫でた。

「もう一度」
「……レオ様」
「うん、もう一回」
「レオ様」

ちょっと呆れたように笑うデイルの頬に指先で触れて、鼻先に口づけた。

「デイル……いいか」
「……はい」

そっと、デイルの腕がグレオルの肩にかかったのが、合図だった。
それでも慎重に、ゆっくりと腰を引いた。
締め付けが少なくなり、もったりと絡むデイルの温かな腹の中に、我慢を重ねるのは苦しいくらいだった。
けれど、それ以上に、再び彼を抱けた喜びを噛み締めていた。
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