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第5話 魔物

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 今、俺とイリーナは森の中を、換金できそうなものがないか探しつつ歩いていた。さいわい、そこそこ見通しもよく、木漏れ日が暖かかく辺りを照らしていた。


「そういえば、この世界って魔物がいるんだよね?どういった特徴があるの?」

「えっとね、基本は動物と見た目も変わらないんだ、違いは魔石があるかどうかだけだよ。そして…動物は人を滅多に襲わないけど、魔物は必ず襲ってくるの。
 人だけじゃないけど…魔物は魔力を持ったものを何でも食べて、魔石の力に変えてるって話だよ?だから強い魔物程、魔石も大きいし、姿も変わるんだ」


 ちなみにイリーナとはパーティーを組んでいる。ステータス画面から直接操作ができて、魔物等を倒したときにもらえる経験値を割り増しで貰った上で均等に分けられるらしい。
 基本魔力を持った存在を倒せば経験値が貰えるが、やはり魔石を持った魔物が一番経験値が多いらしい………魔石の値段も、小さいのでも町に入る額くらいは稼げるらしい


「なるほどね……それにしても…何もないねぇ~…見つけたのは変なキノコをいくつか…」

「そうだね、あ!キノコは食べられないからね?確かどれも毒があったはず…」

「マジかー…このままじゃ服を買うどころか、町にも入れないんだよね…?」

「うん…ごめんね…私のために……」

「いやいや、謝らなくて良いよ!流石に制服の上着一枚だけじゃ色々不味いと思うし……」


 余り見ないようにはしてきたけど…服の話しが出て、つい…ちらりと見ると……少し赤くなった頬に、手の先まで隠れるぶかぶかの上着…そしてそこから伸びるキレイな生足……しかも、履いていない…!こう、見えそうで見えないところがまた興奮すると言うか……………はっ!?
 い、いかんいかん!そんな目で見たら失礼だし!俺はイリーナを守るんだろ?そんな邪な目で見たらあかん!落ち着け~落ち着け~………


「…ねぇ?」

「はひ!?」


 い、いかん、声が裏返った…


「………恥ずかしいんだからね?」

「ごめんなさい…気を付けます…」


 ちょっとばかし変な空気になったけど、落ち着いてきたかな…?っというところで……



『グルアアアアァァァァァァ!!!!!』
「うわあああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!?」



「…っ!?今のは!?」

「あっちの方から!多分魔物に襲われてるんだと思うわ!」

「行こう!」

「はいっ!」


 叫び声の聞こえた方に少しいくと、森から抜けて街道にでた。そしてそこで見たものは……


「…マジかよ…ティラノサウルスじゃん……」

「嘘でしょ……森の王者がこんなところにいるなんて……」


 そこにいたのは大昔に生きていた恐竜そのものだった。そいつは今、馬を食べてる最中で、そして少し離れたところに線の細い男が、腰を抜かしたように座り込みつつ後ずさりしようとしていた。


「イリーナ!あの人助けるよ!例のあれで足止めするから、デカいのぶちかましてやって!」

「わ、わかったわ!」

「いよいよ実戦だ!最初にしては大物だが…やってやる!」



『土よ 封印よ 母なる大地の恩恵を 停止を 我が前にその力を示せ 【土・封印アース・シール】!』



 詠唱が終わるとティラノサウルスの足元の大地が盛り上がり、膝上までを完全に呑み込み固まって、動けないようにした。


「グギャアアアアアアアァァァァァァ!!!?」


 全く動かせないとかなり痛みを伴うようで、ティラノサウルスは悲鳴をあげた。
 これが、練習の成果!【二重詠唱デュエルスペル】による土魔法と封印魔法のコラボだ!

 封印魔法の弱点として、距離と対象全てを封印する事…つまり部分的に封印が出来ない点、そして封印しても倒してないから経験値が貰えない点だった………
 それが【二重詠唱】で他の魔法と組み合わせることで、距離が伸び、部分封印も可能で、何より攻撃判定が付くみたいで倒すことも出来るようになったのだ!しかも!封印魔法はlv.4だから威力も抜群!ヒャッホーイ!

 ちなみに土魔法以外でも、組み合わせることが出来るが…その場にないものはMP消費と威力が少し悪くなるので土魔法にしたのだ。


「イリーナ、今だよ!」



『水よ 氷よ 我が前に集え 全てを凍てつかさん その力を持って我が敵を滅ぼせ【水の逆襲アクアフリーズ】』



 詠唱が進むにつれティラノサウルスの頭上に、水が集まりだし徐々に凍っていく……そして詠唱が終わるとそれは全身を覆うほどの氷山となり、動けないティラノサウルスは氷山に押し潰されたのだった。
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