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第4話 外へ

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 私は〈あいつ〉に騙されて封印されてしまった…そんな私を助けてくれたのが黒髪の人間、康介。
 本人は否定したが、おそらく勇者だと思う…異世界から来たならそれしかあり得ないから。どうしてこんなところに召喚されたかは分からないけど………

 身体以外の服や装備が、クリスタルと同化して封印と一緒に消えてしまうなんて…あれから数年は経ってるよね……ユーカリアの町、どうなってるのかな………
 …魔族のみんな、無事なのかな……気になるけど…行くのが怖いな……康介が一緒に行こうとしてくれてるのが、本当に嬉しい…
 うん…嬉しい…康介は魔族の私でも、話も聞いてくれて…慰めてくれて…本当に嬉しかった…

 今度は私が康介に恩返しする番だよね!異世界から来たんだから分からないこと多いだろうし、私が助けてあげなきゃ!



    *****



「それじゃあ、魔法の訓練始めようか、…と言っても確か触れるだけで覚えちゃうんだよね?」

「そうだね、ただどれくらい接触すれば良いかは分かんないけどね」

「それなら一緒に、今から試してみよう?」




『水よ 我が前に集え その力を示せ すべての敵を撃ち抜け【水球ウォーターボール】』



 イリーナが詠唱を始めると同時に、何処からともなく水が彼女の周りに現れて、伸ばした右手の先に集まりだし、最終的に巨大な水の塊が出来た。


「スゲー!それにカッコいい!」

「そ、そう?ちなみにこれが、lv.1の水魔法ね、ただ私はlv.3だから大きさ、威力、飛距離が増えているわ。」

「なるほど…いや~魔法なんて存在しない世界だったから、これぞ魔法って感じで感動するね!」

「そうなんだ?後で良いんだけど、元の世界のこと聞いても良い?」

「良いよ~、じゃあそろそろ触って覚えてみるね?」

「うん。」


 俺は恐る恐る指を近づけて、一瞬触れてみる。変化はなく、徐々に触れる時間を伸ばしつつ、何度か試してみたところ、しばらくして



《スキル【水魔法】を覚えました》



「…うーん、習得するのに約2秒ってところかな…?」

「短いようで、長いね…普段なら問題ないだろうけど、戦闘中は厳しいね…」

「まぁそうなんだけど…実はそれに関しては考えがあるんだ~。」

「ホントに?聞かせてくれる?」

「後でね?先に他の魔法覚えたいな。」

「ん、了解。じゃあ次は………」


 こうして俺とイリーナはスキルの習得とその練習をこの部屋でしばらく過ごすのだった。
 ちなみにスキルは魔法全部と【二重詠唱デュエルスペル】が習得できた。他は無理でした…残念!
 まぁこれだけでも充分なんだけどね…一応、身体強化と魔力強化なんだけど、常時ステータス増加効果があるらしい…いつか習得できると良いな…
 ま、嘆いても仕方ないし、今は練習あるのみ…!



    *****



「…いや~やっと外に出れたねぇ~」


 回りは木々が立ち並び、背後には絶壁の岩山がそびえていた。どうやら今までいたところは岩山の洞窟の奥に作られた部屋だったみたいだ。



「そうだね、何だかんだで色々と試してたら、かなり時間がたってたし…いい加減行かなきゃね…」

「…大丈夫…?まだキツいなら休んで良いよ?」

「ううん…大丈夫だよ?それに…何かあっても、康介がいるから心配ないよ」

「そ、そっか……」

「うん………」


 …か、可愛い………頼りにされてめっちゃ嬉しいけど…て、照れるな…これは……こんちくしょー………

 しばらく互いに頬を染めて、相手の顔をなかなか見ることができずに、無言の時間が流れた。


「……そ、そろそろ行こうか!ユーカリアって、ど、どっちかな?」

「う、うん!えっと、こっちだよ」


 先程の甘酸っぱい空気をかき消すように、話を変えて先に進む二人…まずは町への街道を目指しつつ、資金を得るため森で探索しだした。
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