約束の沖縄

神楽堂

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第1話 由紀子との約束

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「必ず沖縄に帰ってくる」
宮里拓真みやざと たくまは、由紀子に約束した。

「必ず帰ってきてね。約束だよ」
由紀子ゆきこは、大好きな宮里の身を案じていた。

時は大東亜戦争、真っ只中。
宮里は陸軍少尉であった。
剣道の有段者でもあり、たくましい体つきに鋭い眼光、まさに軍人の中の軍人であった。

「もし、俺が戻らなかったら……」

「そんなことは言わないで」

「戻らなかったら、俺は靖國やすくに神社の桜の花になっていると思ってくれ」

「何それ、拓真、お花になるの?」

「ふふふ。まあ、そういうことだ」


宮里は故郷である沖縄でのしばらくの休養を終え、
家族、そして大好きな由紀子に別れを告げ、内地に戻った。

宮里の任務は「空挺くうてい」だ。
飛んでいる飛行機からパラシュートで降りて敵地に潜り込むのだ。
誰にでもできる任務ではない。
選ばれし者がなれる、精鋭部隊であった。

宮里は、隊長から今回の任務を聞かされた。

「我が空挺部隊は、米軍に占領されているサイパン島飛行場に降下し、地上のB-29を破壊することを任務とする」

日本を焼け野原にしようと、アメリカ軍のたくさんの大型爆撃機B-29がやってきている。
上空1万メートルの高度を飛ぶB-29を撃墜するのは、なかなか難しかった。
そこで、空挺部隊が敵の飛行場に侵入し、地上にいるB-29を破壊するという作戦が立案されたのだ。
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