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マッチ売りの少女編

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編集者は、俺の原稿を読み終わるとこう言った。

「『マッチ売りの少女』だね。かわいそうな少女を出したのは、読者受けするのでよいと思うよ」

「はい」

「ただ、最後が死んで終わりじゃ報われない。こう、なんというか、カタルシスがないんだよ」

「カタルシス」

「売っているものがマッチだからね。それを使わないと」

「と、言いますと?」

「鬼のような親に、マッチ売ってこいって雪の中、放り出されるんだから、少女は親への憎しみを抱いていたはず」

「憎しみ」

「例えばさ、少女は見つけるんだよ、死の直前に……爆弾とか」

「爆弾」

「で、最後のマッチを擦って爆弾に点火、憎い親を吹っ飛ばす。そういう、ざまぁ系の要素があるとよかったと思うよ」

「ざまぁ系」

「せっかく、マッチを使っているんだから、そのくらいしないと」

「はぁ」

ここの編集さんとは、考え方が合わないな……
俺は次の出版社へと向かった。

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