25 / 51
邂逅(病葉)4
しおりを挟む
「何分くらい?」
「早くて120分くらいですね」
「は?」
「因みに、遅いと240分くらい掛かりますね」
ヤツカはそっと目を閉じ、そして覚悟を決めたかのように、目を開いた。
「よし、捨てよう」
「は?」
「いや、うん嘘。ごめん。冗談」
冗談でも言っていいことと悪いことがある。
目を伏せ、態とらしく、ため息をついて見せた。
「まあ、私も出来る限り早く飲むように努力しますから、その間だけでも、お話に付き合ってもらえると、嬉しいなー。と」
んんー。すっごい睨まれてるなあ。
まー、あんだけはっちゃけられりゃ、そりゃ誰だって嫌になるわな。
まず狙いは何だ、ってとこだろう。
「私としては、貴方の珈琲が飲みたい訳ですよね。でもそれだけじゃ味気ないでしょ?ほら、私友達いませんし。話し相手が居ないので寂しいんです」
「そんなのどうとでもなるだろ。珈琲入れに来るくらい、いくらでもするから」
口調とは裏腹に、表情には関わりたくない、とだけ書かれていた。
あー。厳しいかね。
「そんな、私だけ何かされるなんて嫌ですよ。ちゃんとお返ししたいです」
「あんたと話すことが、俺のメリットになると?」
訝し気な表情で、此方を見てくる。
うーん。成程。
仕方ない。適当ぶっこくか。
駄目でも、精いっぱい頑張りました。って、いい訳は出来るだろう。
「ええ、ほら、だって、貴方、女の人苦手でしょ?」
そういった瞬間。
それを聞いた瞬間の、ヤツカの表情を見て、勝利を確信した。
驚き、固まり。声も出ないようだった。
ちょっと、オーバーリアクションすぎやしないか?と思ってしまったほどである。……この場面で演技するのは、流石にないか。
「……は?心でも読んだのか?」
「その一言が、スッと出るって事は、そんな感じの能力を持っている方が、近くにいるんですかね?」
「待て待て待て。とりあえずお前は話すな。俺の質問にだけ答えろ」
おや、適当言ったんだが、案外当たってたのか?
今日は絶好調だな。明日、槍でも降るんだろうか?
「この話、断ったら、どうなるんだ?」
「私ががっかりしますね」
「……じゃあ、受け入れたら、お前が敵になることは無くなるか?」
敵……?何だか物騒な話になったな。
つまり、このイケメン君は何らかの事態に巻き込まれてるって事か?そうじゃないと、つい最近までのほほーんと暮らしてた日本人、然も非戦闘職業持ちが、『敵』なんて、とっさに出てこないよなあ。
「ん-。どうでしょう?状況にもよりますが、まあ私も人間なので、情に絆されることは有るでしょうね」
人間、情に絆される、の所で、物凄い顔を向けられた。
いや、こいつは私のことを一体何だと思っているんだ。どこから、どう見たって、かわ、いらしい、女子高校生だろうに。
「分かった。話に乗ろう」
お、成功した。これでこそ、適当ぶっこいた甲斐があるというものだ。後々の自分の首を、がっつり絞めた気がしたが、気の所為だろう。
「一つ、聞きたいのだが、何故女嫌いだとバレた?」
「話してたら、誰でも分かりますよ」
むすっと黙り込んでしまった。
「つまり説明する気はないと?」
「いえいえ、そう言う訳では。ただ、全てを説明するのは流石に面倒ですし……、かと言って、私と話すことにメリットを見出してくれた貴方に、何も応えない訳にはいきませんし」
どうした物か、と、ふと、ヤツカの方を見ていると、また妙な顔をしていた。
「あの、私が何か言う度に、その顔するのやめてもらえます?」
「……ああ、いや、すまん。でも本気で思ってるのか?それ」
何と失礼な奴だ。
疑い深すぎるだろう。って、ああそうか、これが、こいつの素ね。
ま、あのにやにやした奴よりは、マシか。
「んー。本気度を説得するのは、難しいですね……。今はまだ優しい方なんですよ。と言ったら伝わりますか?」
「いや、全く」
「ん-。人格の演じ分けと言いますか、ほら、貴方も猫被ってたじゃないですか。あんな感じです」
「……いや、俺のは、別に優しさは変わらんぞ?両方俺なんだからな。優しく見えてるとしたら、そのように動いてるだけだ」
あー。成程。
これは中々伝えるのが面倒かもしれないなあ。
「ん、ん、ん。分かりました。一旦そう言った、前提は捨てましょう。私の中には、もう一人住んでるんです」
「やっぱ多重人格か?」
「そんなわけないでしょう。変なところで茶化さないでください」
「あっ。はい」
全く。こっちは説明するのに、全神経を集中させているというのに。
「私は、私が意識的に作り上げたもので、無意識からできたものではありません」
「……そんなこと出来るのか?」
「小説家、という仕事があるじゃないですか。彼らだって、一から人間を作り上げているでしょう?」
「……確かに」
ヤツカは、ふう、と息を吐いて、椅子の奥深く迄、腰かけた。
「じゃあ、人が変わると、抱いている感情が変わるのは、どういう仕組みなんだ?」
「ん-。それはそういう物だ、としか言えないんですけどね。ほら、役者の方が良く言ってるじゃないですか。『役が抜けない』って。あんな感じです」
「はあ、成程」
「伝わりました?」
何せ自分の訳分らん持論を、人に説明したのはこれが初めてだ。いくら口が回ると自称していても、こんな感覚的な話、理解させる方が難しいだろう。
「あー。まあ、何となくは。とは言え、納得は出来ないから、そういうもんだと思っておくことにする」
「それがいいでしょうね」
ヤツカは、少しは疑問が解決して、すっきりしたのか、机の上のお菓子に手を伸ばし、袋をベリッと破いた。
「ん?って事はあれか?お前の素はもっとヤバい奴って事か?」
うーーーーーーーん。いや、まあ、合っているのだが、ヤバイ、の持つ意味合いが、確実に違うんだろうな……。
「まあ、確かにヤバイ、ですけど、想像しているのとは、多分違いますよ?精神年齢的にも人格的にも私の方が上でしょうから」
「でもヤバいんだろ?」
「ヤバいはヤバいでも、頭おかしい、の意のヤバい、ですからね?」
どーかね、と、疑わしい目線を投げかけてくるヤツカ。
いやいや、嘘は全くついてないんだが……。
「で、その中身さんはちっとでも話してくんねーの?俺はやってんだけど」
「うーん、相性が良くないので、やめた方が良いかと」
「良くないのか?」
「そもそも、貴方が私と話してる目的としては、二点。私から有益な情報が得たいのと、あわよくば味方になってほしい、と」
「……ああ、うん。まあそうだな」
ちらり、と目を僅かに泳がせた。
「何です?」
「いや、合ってるんだけども、そうも開けっ広げに言われるとだな……」
「じゃあ、先程のような遠回しな会話に戻りますか?私はいいですが」
「いや、あれは流石に勘弁」
おや、それは残念だ。
ま、流石に私も面倒くさいな、と思ったことは否定しない。が、普段思いついていても、様々な観点から、やるのを憚れる事が出来る、要は、はっちゃけられる点は楽しかった。
……やられた側は、嫌だろうが。
「まあ、私が話したところで、有益な情報、が提供できるかは不明ですが、一応、聞かれたことには誠意を持って答えますし。まあ、あちらですと、途中で面倒くさくなって適当なことを言いかねませんから」
「めんど……いや、まあ、俺もやるか」
やるのかよ。人の事、言えねえじゃねえか。まあ、薄々そんな気はしてたが。
「それに、ちょっと話したところで、心動かされる人間ではありませんから」
「どういうことだ?」
「自分の胸に手を当てて考えてみては?」
そう言うと黙り込んでしまった。
自覚はあるのだろう。本当に大事なもの以外は、簡単に切り捨てられる人間だ、と言う事に。
別に攻めている訳ではない。
人間誰しも、守れるものに限界はある。それを自覚し、取捨選択が出来ることは、寧ろ、賢いと言えるだろう。全部背負い込むような阿保も、嫌いじゃないがな。
「と言うか、さらっと核心つくの、やめてくれないか」
「そんなに大事なら、もっと綺麗に隠してください」
「ぐ……」
「いや、まあ、分かりやすく話せって言ったのは俺だしな……」等とブツブツ呟いている。話す度に、そんな反応されると、話が中々進まないのだが……。
「納得してもらえました?まだなら、もう少し話しますけど」
「ん、そう言われると、何言われるか気になるな……」
お、聞くか?
「では話しましょうか。この話は、あてずっぽうと言うか、適当に近い物なんですが、貴方、女性嫌いでしょう?」
「それが?」
「いえ、でもただ、嫌いと言うだけではなくて、何と言うか、怖れ……みたいな物を感じましてね」
「はあ、」
「で、その恐れも嫌悪も、意図して出るものではなく、無意識に、反射的に思ってる、物だと思うんですね」
先程から、ずっと、眉を顰めていたヤツカが、痺れを切らしたように口を開いた。
「イマイチ話が見えないのだが……お前は俺に嫌われたい、とそういう事か?」
せっかちか。今順を追って説明しているのだから、大人しく聞いてろ。
「まあ、当たらずとも、遠からず、ですね。自覚有りませんか?いつもより話しにくいと思いません?」
「そりゃ、まあ、お前相手だからだろ」
「私だから、という理由の中に、私が『女だから』と言う理由も含まれていると思いますよ」
「……ん?」
「無意識的に……なのだとは思いますが、その恐れ、が、私に対して矛先が鈍っている要因の一つなのでは?と言う事です」
私は、カップに口をつける。こんなにも時間がたっている、と言うのに中身は熱々だ。素晴らしい。美味い。
「えーと、つまりなんだ?俺を弱らせた状態で、会話がしたい、と?」
「そういう事ですね」
難しい顔をして、クッキーっぽい、いや、多分クッキーなのだろう、物を頬張っている。
「いや、それ、お前にとっちゃ、相性良いかもだが、俺にとっては相性最悪なんじゃねえの?」
じとーっとした目で見られる。
うん。まあ、そうとも言うかもしれないな。
「早くて120分くらいですね」
「は?」
「因みに、遅いと240分くらい掛かりますね」
ヤツカはそっと目を閉じ、そして覚悟を決めたかのように、目を開いた。
「よし、捨てよう」
「は?」
「いや、うん嘘。ごめん。冗談」
冗談でも言っていいことと悪いことがある。
目を伏せ、態とらしく、ため息をついて見せた。
「まあ、私も出来る限り早く飲むように努力しますから、その間だけでも、お話に付き合ってもらえると、嬉しいなー。と」
んんー。すっごい睨まれてるなあ。
まー、あんだけはっちゃけられりゃ、そりゃ誰だって嫌になるわな。
まず狙いは何だ、ってとこだろう。
「私としては、貴方の珈琲が飲みたい訳ですよね。でもそれだけじゃ味気ないでしょ?ほら、私友達いませんし。話し相手が居ないので寂しいんです」
「そんなのどうとでもなるだろ。珈琲入れに来るくらい、いくらでもするから」
口調とは裏腹に、表情には関わりたくない、とだけ書かれていた。
あー。厳しいかね。
「そんな、私だけ何かされるなんて嫌ですよ。ちゃんとお返ししたいです」
「あんたと話すことが、俺のメリットになると?」
訝し気な表情で、此方を見てくる。
うーん。成程。
仕方ない。適当ぶっこくか。
駄目でも、精いっぱい頑張りました。って、いい訳は出来るだろう。
「ええ、ほら、だって、貴方、女の人苦手でしょ?」
そういった瞬間。
それを聞いた瞬間の、ヤツカの表情を見て、勝利を確信した。
驚き、固まり。声も出ないようだった。
ちょっと、オーバーリアクションすぎやしないか?と思ってしまったほどである。……この場面で演技するのは、流石にないか。
「……は?心でも読んだのか?」
「その一言が、スッと出るって事は、そんな感じの能力を持っている方が、近くにいるんですかね?」
「待て待て待て。とりあえずお前は話すな。俺の質問にだけ答えろ」
おや、適当言ったんだが、案外当たってたのか?
今日は絶好調だな。明日、槍でも降るんだろうか?
「この話、断ったら、どうなるんだ?」
「私ががっかりしますね」
「……じゃあ、受け入れたら、お前が敵になることは無くなるか?」
敵……?何だか物騒な話になったな。
つまり、このイケメン君は何らかの事態に巻き込まれてるって事か?そうじゃないと、つい最近までのほほーんと暮らしてた日本人、然も非戦闘職業持ちが、『敵』なんて、とっさに出てこないよなあ。
「ん-。どうでしょう?状況にもよりますが、まあ私も人間なので、情に絆されることは有るでしょうね」
人間、情に絆される、の所で、物凄い顔を向けられた。
いや、こいつは私のことを一体何だと思っているんだ。どこから、どう見たって、かわ、いらしい、女子高校生だろうに。
「分かった。話に乗ろう」
お、成功した。これでこそ、適当ぶっこいた甲斐があるというものだ。後々の自分の首を、がっつり絞めた気がしたが、気の所為だろう。
「一つ、聞きたいのだが、何故女嫌いだとバレた?」
「話してたら、誰でも分かりますよ」
むすっと黙り込んでしまった。
「つまり説明する気はないと?」
「いえいえ、そう言う訳では。ただ、全てを説明するのは流石に面倒ですし……、かと言って、私と話すことにメリットを見出してくれた貴方に、何も応えない訳にはいきませんし」
どうした物か、と、ふと、ヤツカの方を見ていると、また妙な顔をしていた。
「あの、私が何か言う度に、その顔するのやめてもらえます?」
「……ああ、いや、すまん。でも本気で思ってるのか?それ」
何と失礼な奴だ。
疑い深すぎるだろう。って、ああそうか、これが、こいつの素ね。
ま、あのにやにやした奴よりは、マシか。
「んー。本気度を説得するのは、難しいですね……。今はまだ優しい方なんですよ。と言ったら伝わりますか?」
「いや、全く」
「ん-。人格の演じ分けと言いますか、ほら、貴方も猫被ってたじゃないですか。あんな感じです」
「……いや、俺のは、別に優しさは変わらんぞ?両方俺なんだからな。優しく見えてるとしたら、そのように動いてるだけだ」
あー。成程。
これは中々伝えるのが面倒かもしれないなあ。
「ん、ん、ん。分かりました。一旦そう言った、前提は捨てましょう。私の中には、もう一人住んでるんです」
「やっぱ多重人格か?」
「そんなわけないでしょう。変なところで茶化さないでください」
「あっ。はい」
全く。こっちは説明するのに、全神経を集中させているというのに。
「私は、私が意識的に作り上げたもので、無意識からできたものではありません」
「……そんなこと出来るのか?」
「小説家、という仕事があるじゃないですか。彼らだって、一から人間を作り上げているでしょう?」
「……確かに」
ヤツカは、ふう、と息を吐いて、椅子の奥深く迄、腰かけた。
「じゃあ、人が変わると、抱いている感情が変わるのは、どういう仕組みなんだ?」
「ん-。それはそういう物だ、としか言えないんですけどね。ほら、役者の方が良く言ってるじゃないですか。『役が抜けない』って。あんな感じです」
「はあ、成程」
「伝わりました?」
何せ自分の訳分らん持論を、人に説明したのはこれが初めてだ。いくら口が回ると自称していても、こんな感覚的な話、理解させる方が難しいだろう。
「あー。まあ、何となくは。とは言え、納得は出来ないから、そういうもんだと思っておくことにする」
「それがいいでしょうね」
ヤツカは、少しは疑問が解決して、すっきりしたのか、机の上のお菓子に手を伸ばし、袋をベリッと破いた。
「ん?って事はあれか?お前の素はもっとヤバい奴って事か?」
うーーーーーーーん。いや、まあ、合っているのだが、ヤバイ、の持つ意味合いが、確実に違うんだろうな……。
「まあ、確かにヤバイ、ですけど、想像しているのとは、多分違いますよ?精神年齢的にも人格的にも私の方が上でしょうから」
「でもヤバいんだろ?」
「ヤバいはヤバいでも、頭おかしい、の意のヤバい、ですからね?」
どーかね、と、疑わしい目線を投げかけてくるヤツカ。
いやいや、嘘は全くついてないんだが……。
「で、その中身さんはちっとでも話してくんねーの?俺はやってんだけど」
「うーん、相性が良くないので、やめた方が良いかと」
「良くないのか?」
「そもそも、貴方が私と話してる目的としては、二点。私から有益な情報が得たいのと、あわよくば味方になってほしい、と」
「……ああ、うん。まあそうだな」
ちらり、と目を僅かに泳がせた。
「何です?」
「いや、合ってるんだけども、そうも開けっ広げに言われるとだな……」
「じゃあ、先程のような遠回しな会話に戻りますか?私はいいですが」
「いや、あれは流石に勘弁」
おや、それは残念だ。
ま、流石に私も面倒くさいな、と思ったことは否定しない。が、普段思いついていても、様々な観点から、やるのを憚れる事が出来る、要は、はっちゃけられる点は楽しかった。
……やられた側は、嫌だろうが。
「まあ、私が話したところで、有益な情報、が提供できるかは不明ですが、一応、聞かれたことには誠意を持って答えますし。まあ、あちらですと、途中で面倒くさくなって適当なことを言いかねませんから」
「めんど……いや、まあ、俺もやるか」
やるのかよ。人の事、言えねえじゃねえか。まあ、薄々そんな気はしてたが。
「それに、ちょっと話したところで、心動かされる人間ではありませんから」
「どういうことだ?」
「自分の胸に手を当てて考えてみては?」
そう言うと黙り込んでしまった。
自覚はあるのだろう。本当に大事なもの以外は、簡単に切り捨てられる人間だ、と言う事に。
別に攻めている訳ではない。
人間誰しも、守れるものに限界はある。それを自覚し、取捨選択が出来ることは、寧ろ、賢いと言えるだろう。全部背負い込むような阿保も、嫌いじゃないがな。
「と言うか、さらっと核心つくの、やめてくれないか」
「そんなに大事なら、もっと綺麗に隠してください」
「ぐ……」
「いや、まあ、分かりやすく話せって言ったのは俺だしな……」等とブツブツ呟いている。話す度に、そんな反応されると、話が中々進まないのだが……。
「納得してもらえました?まだなら、もう少し話しますけど」
「ん、そう言われると、何言われるか気になるな……」
お、聞くか?
「では話しましょうか。この話は、あてずっぽうと言うか、適当に近い物なんですが、貴方、女性嫌いでしょう?」
「それが?」
「いえ、でもただ、嫌いと言うだけではなくて、何と言うか、怖れ……みたいな物を感じましてね」
「はあ、」
「で、その恐れも嫌悪も、意図して出るものではなく、無意識に、反射的に思ってる、物だと思うんですね」
先程から、ずっと、眉を顰めていたヤツカが、痺れを切らしたように口を開いた。
「イマイチ話が見えないのだが……お前は俺に嫌われたい、とそういう事か?」
せっかちか。今順を追って説明しているのだから、大人しく聞いてろ。
「まあ、当たらずとも、遠からず、ですね。自覚有りませんか?いつもより話しにくいと思いません?」
「そりゃ、まあ、お前相手だからだろ」
「私だから、という理由の中に、私が『女だから』と言う理由も含まれていると思いますよ」
「……ん?」
「無意識的に……なのだとは思いますが、その恐れ、が、私に対して矛先が鈍っている要因の一つなのでは?と言う事です」
私は、カップに口をつける。こんなにも時間がたっている、と言うのに中身は熱々だ。素晴らしい。美味い。
「えーと、つまりなんだ?俺を弱らせた状態で、会話がしたい、と?」
「そういう事ですね」
難しい顔をして、クッキーっぽい、いや、多分クッキーなのだろう、物を頬張っている。
「いや、それ、お前にとっちゃ、相性良いかもだが、俺にとっては相性最悪なんじゃねえの?」
じとーっとした目で見られる。
うん。まあ、そうとも言うかもしれないな。
0
お気に入りに追加
144
あなたにおすすめの小説

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】
一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。
追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。
無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。
そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード!
異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。
【諸注意】
以前投稿した同名の短編の連載版になります。
連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。
なんでも大丈夫な方向けです。
小説の形をしていないので、読む人を選びます。
以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。
disりに見えてしまう表現があります。
以上の点から気分を害されても責任は負えません。
閲覧は自己責任でお願いします。
小説家になろう、pixivでも投稿しています。

超文明日本
点P
ファンタジー
2030年の日本は、憲法改正により国防軍を保有していた。海軍は艦名を漢字表記に変更し、正規空母、原子力潜水艦を保有した。空軍はステルス爆撃機を保有。さらにアメリカからの要求で核兵器も保有していた。世界で1、2を争うほどの軍事力を有する。
そんな日本はある日、列島全域が突如として謎の光に包まれる。光が消えると他国と連絡が取れなくなっていた。
異世界転移ネタなんて何番煎じかわかりませんがとりあえず書きます。この話はフィクションです。実在の人物、団体、地名等とは一切関係ありません。

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~
トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。
旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。
この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。
こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜
EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」
優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。
傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。
そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。
次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。
最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。
しかし、運命がそれを許さない。
一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか?
※他サイトにも掲載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる