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交友関係2
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もう、何を言っているのか、自分でも良く分からなかった。
でもそれでもいい。だって、こういう時に大事なのは、中身じゃなくて、勢いなのだから。
多少、意味の分からないことを言っていても、勢いで流してしまえば、押し切れることは多々ある。
八束が血迷っているなら、尚更だ。
自分の言ったことを、よくよく考えてみると、物凄く、自分を貶めているような気がする……が、気にしたら負けだ。余計なことは後から考えればいいのだから……。
俺はじっと、八束を見つめた。ダメ押しだ。
すると、奴は見るからに、たじろぐ。
「ま、まあ確かにな……?」
全てに納得していない……何か引っかかる事でもあるのだろう。煮え切らない表情と返事である。
きっと今が引き時だ。これ以上、深く考えさせてはならない。
「だろ?じゃあ、今回の件は八束が悪かったってことで、お前には反省してもらいたい。これからは、大人しい友人も作るように」
「お、おう……?」
何かを言いたげな八束。彼が口を開いた、まさにその時を狙って、俺は話しかけた。
「しかし、そうなると、現状維持するしかないのかなあ」
この一言に、開きかけていた口を閉じ、うむ。と考え込む。
「まあ、この状況を劇的に打破できる案は、特にないな」
「そりゃそっか。何事も、問題をガラッと解決してくれる案なんて、そうそうないよね。地道に少しずつ変えてくしかないかー」
「そゆことだな」
どうやら、思惑通り、注意を逸らせたようだ。八束に気が付かれないように、そっと息を吐く。後は、ミスさえしなければ、上手くいくだろう。だからと言って気を抜くことは出来ない。最後こそ慎重に、だ。
「じゃあ、基本は現状維持。その内、八束が、影井と気の合いそうな、大人しい友達を連れてきてくれるってことで」
「それだけじゃなくて、お前はお前で、影井が友達を作れるように、何らかのアクションは起こしといてくれよ」
む。
流石に、全責任を八束に、擦り付けることは出来ないか。
「へーい」
自分が思ったよりも、叱られた子供のような、不貞腐れた声が出た。
八束に呆れたような目を向けられ、少し恥ずかしくなる。その恥ずかしさを打ち消すように、そして八束に言い訳するように、言う。
「いや、うん。分かってるよ。俺がどうにかしなきゃいけない、って事くらい」
「いや、そう言う訳でもないんだが……」
少しばつが悪くなったのか、もごもごと呟く。
確かに、俺が解決しなきゃいけない、って訳でもないんだろう。でも、解決したいのは、八束じゃなくて、俺なのだから、八束だけが頑張るのは、どう考えても、おかしい。
俺が精いっぱい頑張って、その上で、八束に助けてもらう。そうあるべきだろう。
今までのは、別に本気で言ってた訳じゃない。
だから、何と言うか、うん。ふざけ過ぎたな、って事。
「協力してくれて、ありがと。俺は俺なりに頑張ってみる」
目を瞑り、うむうむ。と頷いていた八束が、ピタリ、と固まる。
「ん?ちょっと聞こえなかった。もう一回言ってくれないか?」
声色は真剣だ。声色は。
ただ、表情はにやにやしていて、からかっているのが、一目瞭然だった。
どうせなら、完璧に騙してくれればいいのに……。いや、これ、態と分かるようにしてるな?
俺は、大きく、大きく息を吐いた。これ見よがしに。
そんなことしても堪えないだろうけど、せめてもの抵抗だ。
「残念でした。大事な事は一度しかいいません」
「ってことは大事なことを言ったんだな?」
さらににやにやした顔を、こちらにグッと、近づけてくる。ああ、ああ言えば、こう言う奴だな。
「いいや、大事じゃなくても、一回しか言いません」
「でも文法……」
「はいはい、作戦会議終了ですー!アンジェラさん、訓練お願いしますー」
八束の言葉を遮り、アンジェラさんの方を向くと、彼女は、了承した、と言うようにお辞儀をした。
八束はきっと悔しそうな表情をしていることだろう。
今日くらいは、部屋で八束が扱かれている所を、優雅にお茶でも飲んで、鑑賞するのも悪くはないな。そんなことを考えながら、ソファに座りなおした。
……アンジェラさんの方から、微笑ましいものを見るような視線を感じたが、きっと気のせいだろう。うん。
でもそれでもいい。だって、こういう時に大事なのは、中身じゃなくて、勢いなのだから。
多少、意味の分からないことを言っていても、勢いで流してしまえば、押し切れることは多々ある。
八束が血迷っているなら、尚更だ。
自分の言ったことを、よくよく考えてみると、物凄く、自分を貶めているような気がする……が、気にしたら負けだ。余計なことは後から考えればいいのだから……。
俺はじっと、八束を見つめた。ダメ押しだ。
すると、奴は見るからに、たじろぐ。
「ま、まあ確かにな……?」
全てに納得していない……何か引っかかる事でもあるのだろう。煮え切らない表情と返事である。
きっと今が引き時だ。これ以上、深く考えさせてはならない。
「だろ?じゃあ、今回の件は八束が悪かったってことで、お前には反省してもらいたい。これからは、大人しい友人も作るように」
「お、おう……?」
何かを言いたげな八束。彼が口を開いた、まさにその時を狙って、俺は話しかけた。
「しかし、そうなると、現状維持するしかないのかなあ」
この一言に、開きかけていた口を閉じ、うむ。と考え込む。
「まあ、この状況を劇的に打破できる案は、特にないな」
「そりゃそっか。何事も、問題をガラッと解決してくれる案なんて、そうそうないよね。地道に少しずつ変えてくしかないかー」
「そゆことだな」
どうやら、思惑通り、注意を逸らせたようだ。八束に気が付かれないように、そっと息を吐く。後は、ミスさえしなければ、上手くいくだろう。だからと言って気を抜くことは出来ない。最後こそ慎重に、だ。
「じゃあ、基本は現状維持。その内、八束が、影井と気の合いそうな、大人しい友達を連れてきてくれるってことで」
「それだけじゃなくて、お前はお前で、影井が友達を作れるように、何らかのアクションは起こしといてくれよ」
む。
流石に、全責任を八束に、擦り付けることは出来ないか。
「へーい」
自分が思ったよりも、叱られた子供のような、不貞腐れた声が出た。
八束に呆れたような目を向けられ、少し恥ずかしくなる。その恥ずかしさを打ち消すように、そして八束に言い訳するように、言う。
「いや、うん。分かってるよ。俺がどうにかしなきゃいけない、って事くらい」
「いや、そう言う訳でもないんだが……」
少しばつが悪くなったのか、もごもごと呟く。
確かに、俺が解決しなきゃいけない、って訳でもないんだろう。でも、解決したいのは、八束じゃなくて、俺なのだから、八束だけが頑張るのは、どう考えても、おかしい。
俺が精いっぱい頑張って、その上で、八束に助けてもらう。そうあるべきだろう。
今までのは、別に本気で言ってた訳じゃない。
だから、何と言うか、うん。ふざけ過ぎたな、って事。
「協力してくれて、ありがと。俺は俺なりに頑張ってみる」
目を瞑り、うむうむ。と頷いていた八束が、ピタリ、と固まる。
「ん?ちょっと聞こえなかった。もう一回言ってくれないか?」
声色は真剣だ。声色は。
ただ、表情はにやにやしていて、からかっているのが、一目瞭然だった。
どうせなら、完璧に騙してくれればいいのに……。いや、これ、態と分かるようにしてるな?
俺は、大きく、大きく息を吐いた。これ見よがしに。
そんなことしても堪えないだろうけど、せめてもの抵抗だ。
「残念でした。大事な事は一度しかいいません」
「ってことは大事なことを言ったんだな?」
さらににやにやした顔を、こちらにグッと、近づけてくる。ああ、ああ言えば、こう言う奴だな。
「いいや、大事じゃなくても、一回しか言いません」
「でも文法……」
「はいはい、作戦会議終了ですー!アンジェラさん、訓練お願いしますー」
八束の言葉を遮り、アンジェラさんの方を向くと、彼女は、了承した、と言うようにお辞儀をした。
八束はきっと悔しそうな表情をしていることだろう。
今日くらいは、部屋で八束が扱かれている所を、優雅にお茶でも飲んで、鑑賞するのも悪くはないな。そんなことを考えながら、ソファに座りなおした。
……アンジェラさんの方から、微笑ましいものを見るような視線を感じたが、きっと気のせいだろう。うん。
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