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作戦会議1
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あれから、十日程が過ぎた。
俺の空間魔法はそこそこ物になったと思う。鑑定石の、才能があるって診断は嘘じゃなかったんだな、と思えるような上達ぶりだ。
武術の方は、まあ、まあ、まあ?
いや、正直なところは、良く分からない。と言うものの、あれから、ネーロさんは、影井に付きっきりだったのだ。
影井の大器晩成とかいうスキル、なかなかに厄介で、十日間、魔力が全く覚えられなかったのである。
影井曰く、
『あんなに痛いの、よく十日間も耐えてるな……』
との事だ。
痛みには個人差があるらしいが、攻撃されている影井はものすごく痛そうだった。
それを十日間も耐えた彼に、相当な根性があることは間違いない。然し、まだその地獄は、続くのだから、救いがない。まだ、先が見えれば、少しマシなんだろうけど……。
少し気になって、影井が、後、どれくらいで、魔力を覚えられるか、見たことがある。それはもう果てしない回数が表示された。なんかもうちょっと、分かりやすい表示の仕方(例えば、あと何か月~とか)はなかったのか、と思ったのは一瞬。その回数のあまりの果てしなさに、無責任に、影井に『頑張れ』なんて言葉をかける事は、出来なかった。出来るわけがない。
今までで、魔力を浴びてきた回数を平均化して、日数に換算すると、約一か月。
一か月である。
あの、訓練を、一か月も。
俺だって、鬼じゃない。流石の日数に、何度も、影井に伝えようとした。やめるかどうかはともかく、続けるにしても、終わりが見えれば、まだ、少しは楽になるだろう……と。
でも、駄目だった。どうやったって、影井には伝わらない。
これが、この世界の強制力なのだろう。
だから、俺は、抗い続ける影井を、見ていることしか出来なかった。
せめて、彼が、折れることがないように……と、ただそれだけを願って。
で、放置された俺たちは、他の団員と一緒に、体力訓練。
八束に至っては、余裕さが顔から溢れ出すぎて、『こいつ、訓練してる意味あるのか……?』と思ったが。まあ、八束の場合は、体力なんて、これ以上増やさなくてもいいのかもしれない。執事とか、体力、無尽蔵にありそうだし。
と言う訳で、俺が成長しているのかどうか、なんて実感はない。まあ、ステータス見たら、体力はついてるみたいだけど。実際、日を追うごとに、ハードな訓練を、楽にこなせるようにはなった。
……なったけども。
こう……もっと、他の子たちみたいに、分かりやすい成長が欲しかったなあ。
他に変わったことと言えば、八束の訓練かな?あ、アンジェラさんから受けてる方のね。その訓練の間、俺はいないから、なにをしてるか、分からないけど、成長している事は分かる。
何と言うか、執事服が様になっているのだ。入れるお茶も、各段に美味しくなったし。いや、今までが不味かった訳でも、ないんだよ?普通だったのが、プロ並みになっただけで……。
こうなると、元の世界に戻って、八束がいつも通り、先輩たちにお茶を入れた時、どんな反応をすのか?は楽しみだ。この世界で学んだことが、無くならなければ。だけど。
最後に影井について。彼との親睦は……まあ、深められたと思う。
問題はそこではなくて、ツィアさんと、影井の仲なのだ。悪い……と言ってしまうと簡単だが、それだけではなく、どうも拗れてしまっている気がするのだ。
自意識過剰っぽくて、あんまり言いたくないのだけども、こう……俺を奪い合う仲と言うか……。
いや、ほんと、なぜこうなった?という感じなんだけども。
正確に言うと、少し違うかも。影井が、ツィアさんを俺を奪おうとしている、と敵視しているのは間違いなさそうだが、ツィアさんは少し違う。嫌悪は嫌悪なのだが『何子の勘違い男、キモ』みたいな感じなのである。と言うか、彼女に至っては、影井の動作、一つ一つが気に食わないらしく、冷たい目を向けている……という現状である。
「と言うことで、久々に作戦会議を開きたいと思います」
「何が『と言うことで』だよ」
八束が呆れたような目を向けてくる。
「ちゃんと、俺の脳内では繋がってるんだよ」
我ながら、何を言っているか、分からなかったが、胸を張ってみる。こういうのは、堂々としたもの勝ちなのだ。
「あ、そう」
『心底興味ないわー』とでも言いたげな、絶対零度の視線が、向けられる。
なんか、負けた気がするのだけど。
「つか、何を会議するんだ。これから俺は、アンジェラさんの特訓を、受けなきゃならんのだが?」
「その点は、問題ないよ。今日はお休みって事にして貰ったから」
訝しんだ八束が、アンジェラさんを見ると、アンジェラさんは、小さく頷いた。
「他でもない、カシオカ様の願いですからね」
その言葉に
「そういえば、アンジェラさんって、柏岡のメイドだったっけ」
と、小さくぼやいた。
俺の空間魔法はそこそこ物になったと思う。鑑定石の、才能があるって診断は嘘じゃなかったんだな、と思えるような上達ぶりだ。
武術の方は、まあ、まあ、まあ?
いや、正直なところは、良く分からない。と言うものの、あれから、ネーロさんは、影井に付きっきりだったのだ。
影井の大器晩成とかいうスキル、なかなかに厄介で、十日間、魔力が全く覚えられなかったのである。
影井曰く、
『あんなに痛いの、よく十日間も耐えてるな……』
との事だ。
痛みには個人差があるらしいが、攻撃されている影井はものすごく痛そうだった。
それを十日間も耐えた彼に、相当な根性があることは間違いない。然し、まだその地獄は、続くのだから、救いがない。まだ、先が見えれば、少しマシなんだろうけど……。
少し気になって、影井が、後、どれくらいで、魔力を覚えられるか、見たことがある。それはもう果てしない回数が表示された。なんかもうちょっと、分かりやすい表示の仕方(例えば、あと何か月~とか)はなかったのか、と思ったのは一瞬。その回数のあまりの果てしなさに、無責任に、影井に『頑張れ』なんて言葉をかける事は、出来なかった。出来るわけがない。
今までで、魔力を浴びてきた回数を平均化して、日数に換算すると、約一か月。
一か月である。
あの、訓練を、一か月も。
俺だって、鬼じゃない。流石の日数に、何度も、影井に伝えようとした。やめるかどうかはともかく、続けるにしても、終わりが見えれば、まだ、少しは楽になるだろう……と。
でも、駄目だった。どうやったって、影井には伝わらない。
これが、この世界の強制力なのだろう。
だから、俺は、抗い続ける影井を、見ていることしか出来なかった。
せめて、彼が、折れることがないように……と、ただそれだけを願って。
で、放置された俺たちは、他の団員と一緒に、体力訓練。
八束に至っては、余裕さが顔から溢れ出すぎて、『こいつ、訓練してる意味あるのか……?』と思ったが。まあ、八束の場合は、体力なんて、これ以上増やさなくてもいいのかもしれない。執事とか、体力、無尽蔵にありそうだし。
と言う訳で、俺が成長しているのかどうか、なんて実感はない。まあ、ステータス見たら、体力はついてるみたいだけど。実際、日を追うごとに、ハードな訓練を、楽にこなせるようにはなった。
……なったけども。
こう……もっと、他の子たちみたいに、分かりやすい成長が欲しかったなあ。
他に変わったことと言えば、八束の訓練かな?あ、アンジェラさんから受けてる方のね。その訓練の間、俺はいないから、なにをしてるか、分からないけど、成長している事は分かる。
何と言うか、執事服が様になっているのだ。入れるお茶も、各段に美味しくなったし。いや、今までが不味かった訳でも、ないんだよ?普通だったのが、プロ並みになっただけで……。
こうなると、元の世界に戻って、八束がいつも通り、先輩たちにお茶を入れた時、どんな反応をすのか?は楽しみだ。この世界で学んだことが、無くならなければ。だけど。
最後に影井について。彼との親睦は……まあ、深められたと思う。
問題はそこではなくて、ツィアさんと、影井の仲なのだ。悪い……と言ってしまうと簡単だが、それだけではなく、どうも拗れてしまっている気がするのだ。
自意識過剰っぽくて、あんまり言いたくないのだけども、こう……俺を奪い合う仲と言うか……。
いや、ほんと、なぜこうなった?という感じなんだけども。
正確に言うと、少し違うかも。影井が、ツィアさんを俺を奪おうとしている、と敵視しているのは間違いなさそうだが、ツィアさんは少し違う。嫌悪は嫌悪なのだが『何子の勘違い男、キモ』みたいな感じなのである。と言うか、彼女に至っては、影井の動作、一つ一つが気に食わないらしく、冷たい目を向けている……という現状である。
「と言うことで、久々に作戦会議を開きたいと思います」
「何が『と言うことで』だよ」
八束が呆れたような目を向けてくる。
「ちゃんと、俺の脳内では繋がってるんだよ」
我ながら、何を言っているか、分からなかったが、胸を張ってみる。こういうのは、堂々としたもの勝ちなのだ。
「あ、そう」
『心底興味ないわー』とでも言いたげな、絶対零度の視線が、向けられる。
なんか、負けた気がするのだけど。
「つか、何を会議するんだ。これから俺は、アンジェラさんの特訓を、受けなきゃならんのだが?」
「その点は、問題ないよ。今日はお休みって事にして貰ったから」
訝しんだ八束が、アンジェラさんを見ると、アンジェラさんは、小さく頷いた。
「他でもない、カシオカ様の願いですからね」
その言葉に
「そういえば、アンジェラさんって、柏岡のメイドだったっけ」
と、小さくぼやいた。
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