せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空

文字の大きさ
上 下
105 / 115

作戦会議1

しおりを挟む
 あれから、十日程が過ぎた。
 俺の空間魔法はそこそこ物になったと思う。鑑定石の、才能があるって診断は嘘じゃなかったんだな、と思えるような上達ぶりだ。

 武術の方は、まあ、まあ、まあ?
 いや、正直なところは、良く分からない。と言うものの、あれから、ネーロさんは、影井に付きっきりだったのだ。
 影井の大器晩成とかいうスキル、なかなかに厄介で、十日間、魔力が全く覚えられなかったのである。

 影井曰く、
『あんなに痛いの、よく十日間も耐えてるな……』
 との事だ。
 痛みには個人差があるらしいが、攻撃されている影井はものすごく痛そうだった。
 それを十日間も耐えた彼に、相当な根性があることは間違いない。然し、まだその地獄は、続くのだから、救いがない。まだ、先が見えれば、少しマシなんだろうけど……。

 少し気になって、影井が、後、どれくらいで、魔力を覚えられるか、見たことがある。それはもう果てしない回数が表示された。なんかもうちょっと、分かりやすい表示の仕方(例えば、あと何か月~とか)はなかったのか、と思ったのは一瞬。その回数のあまりの果てしなさに、無責任に、影井に『頑張れ』なんて言葉をかける事は、出来なかった。出来るわけがない。
 今までで、魔力を浴びてきた回数を平均化して、日数に換算すると、約一か月。
 一か月である。
 あの、訓練を、一か月も。

 俺だって、鬼じゃない。流石の日数に、何度も、影井に伝えようとした。やめるかどうかはともかく、続けるにしても、終わりが見えれば、まだ、少しは楽になるだろう……と。
 でも、駄目だった。どうやったって、影井には伝わらない。

 これが、この世界の強制力なのだろう。
 だから、俺は、抗い続ける影井を、見ていることしか出来なかった。
 せめて、彼が、折れることがないように……と、ただそれだけを願って。


 で、放置された俺たちは、他の団員と一緒に、体力訓練。
 八束に至っては、余裕さが顔から溢れ出すぎて、『こいつ、訓練してる意味あるのか……?』と思ったが。まあ、八束の場合は、体力なんて、これ以上増やさなくてもいいのかもしれない。執事とか、体力、無尽蔵にありそうだし。

 と言う訳で、俺が成長しているのかどうか、なんて実感はない。まあ、ステータス見たら、体力はついてるみたいだけど。実際、日を追うごとに、ハードな訓練を、楽にこなせるようにはなった。
 ……なったけども。
 こう……もっと、他の子たちみたいに、分かりやすい成長が欲しかったなあ。

 他に変わったことと言えば、八束の訓練かな?あ、アンジェラさんから受けてる方のね。その訓練の間、俺はいないから、なにをしてるか、分からないけど、成長している事は分かる。
 何と言うか、執事服が様になっているのだ。入れるお茶も、各段に美味しくなったし。いや、今までが不味かった訳でも、ないんだよ?普通だったのが、プロ並みになっただけで……。

 こうなると、元の世界に戻って、八束がいつも通り、先輩たちにお茶を入れた時、どんな反応をすのか?は楽しみだ。この世界で学んだことが、無くならなければ。だけど。

 最後に影井について。彼との親睦は……まあ、深められたと思う。
 問題はそこではなくて、ツィアさんと、影井の仲なのだ。悪い……と言ってしまうと簡単だが、それだけではなく、どうも拗れてしまっている気がするのだ。
 自意識過剰っぽくて、あんまり言いたくないのだけども、こう……俺を奪い合う仲と言うか……。
 いや、ほんと、なぜこうなった?という感じなんだけども。

 正確に言うと、少し違うかも。影井が、ツィアさんを俺を奪おうとしている、と敵視しているのは間違いなさそうだが、ツィアさんは少し違う。嫌悪は嫌悪なのだが『何子の勘違い男、キモ』みたいな感じなのである。と言うか、彼女に至っては、影井の動作、一つ一つが気に食わないらしく、冷たい目を向けている……という現状である。



「と言うことで、久々に作戦会議を開きたいと思います」
「何が『と言うことで』だよ」

 八束が呆れたような目を向けてくる。

「ちゃんと、俺の脳内では繋がってるんだよ」

 我ながら、何を言っているか、分からなかったが、胸を張ってみる。こういうのは、堂々としたもの勝ちなのだ。

「あ、そう」

『心底興味ないわー』とでも言いたげな、絶対零度の視線が、向けられる。
 なんか、負けた気がするのだけど。

「つか、何を会議するんだ。これから俺は、アンジェラさんの特訓を、受けなきゃならんのだが?」
「その点は、問題ないよ。今日はお休みって事にして貰ったから」

 訝しんだ八束が、アンジェラさんを見ると、アンジェラさんは、小さく頷いた。

「他でもない、カシオカ様の願いですからね」

 その言葉に
「そういえば、アンジェラさんって、柏岡のメイドだったっけ」
 と、小さくぼやいた。

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

スキル【アイテムコピー】を駆使して金貨のお風呂に入りたい

兎屋亀吉
ファンタジー
異世界転生にあたって、神様から提示されたスキルは4つ。1.【剣術】2.【火魔法】3.【アイテムボックス】4.【アイテムコピー】。これらのスキルの中から、選ぶことのできるスキルは一つだけ。さて、僕は何を選ぶべきか。タイトルで答え出てた。

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

ゴミスキルでもたくさん集めればチートになるのかもしれない

兎屋亀吉
ファンタジー
底辺冒険者クロードは転生者である。しかしチートはなにひとつ持たない。だが救いがないわけじゃなかった。その世界にはスキルと呼ばれる力を後天的に手に入れる手段があったのだ。迷宮の宝箱から出るスキルオーブ。それがあればスキル無双できると知ったクロードはチートスキルを手に入れるために、今日も薬草を摘むのであった。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

異世界無宿

ゆきねる
ファンタジー
運転席から見た景色は、異世界だった。 アクション映画への憧れを捨て切れない男、和泉 俊介。 映画の影響で筋トレしてみたり、休日にエアガンを弄りつつ映画を観るのが楽しみな男。 訳あって車を購入する事になった時、偶然通りかかったお店にて運命の出会いをする。 一目惚れで購入した車の納車日。 エンジンをかけて前方に目をやった時、そこは知らない景色(異世界)が広がっていた… 神様の道楽で異世界転移をさせられた男は、愛車の持つ特別な能力を頼りに異世界を駆け抜ける。 アクション有り! ロマンス控えめ! ご都合主義展開あり! ノリと勢いで物語を書いてますので、B級映画を観るような感覚で楽しんでいただければ幸いです。 不定期投稿になります。 投稿する際の時間は11:30(24h表記)となります。

不登校が久しぶりに登校したらクラス転移に巻き込まれました。

ちょす氏
ファンタジー
あ~めんどくせぇ〜⋯⋯⋯⋯。 不登校生徒である神門創一17歳。高校生である彼だが、ずっと学校へ行くことは決してなかった。 しかし今日、彼は鞄を肩に引っ掛けて今──長い廊下の一つの扉である教室の扉の前に立っている。 「はぁ⋯⋯ん?」 溜息を吐きながら扉を開けたその先は、何やら黄金色に輝いていた。 「どういう事なんだ?」 すると気付けば真っ白な謎の空間へと移動していた。 「神門創一さん──私は神様のアルテミスと申します」 'え?神様?マジで?' 「本来呼ばれるはずでは無かったですが、貴方は教室の半分近く体を入れていて巻き込まれてしまいました」 ⋯⋯え? つまり──てことは俺、そんなくだらない事で死んだのか?流石にキツくないか? 「そんな貴方に──私の星であるレイアースに転移させますね!」 ⋯⋯まじかよ。 これは巻き込まれてしまった高校17歳の男がのんびり(嘘)と過ごす話です。 語彙力や文章力が足りていない人が書いている作品の為優しい目で読んでいただけると有り難いです。 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

処理中です...