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好意2
しおりを挟む「まじかー。気付いてなかったの俺だけかよー」
そう悔しそうな声を上げる。そこまで、落ち込まなくても……と思わなくはないが、女性が恐怖の対象であり、恋愛なんてもっての外!な、彼からしてみれば、女性の恋心に気づけないのは、死活問題なのかもしれない。
「に、しても意外だなー。まさか、あの中禅寺さんが。俺とおんなじタイプだと思ってたのに……」
「と、言っても、まだ確定で、好きって訳じゃないからね。なんかちょっと、好意抱いてそう。程度だから」
と、フォローを入れてもなお、不服そうだった八束だが、突如、ピン、と背筋を伸ばし、腕を組む。
「しっかし、そうなると、中禅寺さんが、使い物にならなくなる、可能性が出てくるわけだな」
「中禅寺さんに限って、それはないと思うけど」
「わっかんないぜ?恋は人を狂わせるって言うしなあ……」
そう、ぶるり、と身を震わせた。
……流石、餌食になった人間の言う言葉には、重みがある。
それに、先程、中禅寺さんへの信頼感?偏見?の所為で、彼女の心情が分からなかったことも、関係しているのだろう。今度は同じ轍を踏まないように、と。
「裏三芳がどの程度、頭回るか分かんないけど、確かに、中禅寺さんいなかったら、厳しそうではある」
白井さんは勿論、謀なんて向いてないし、神谷も論外。姫様は多少は分かりそうだけど、あの人の好さだと、ちょっと、心もとない。……となると、頼みの綱は、中禅寺さんしか、いない訳で。
表の三芳が、あの中で一番謀が向いていない、と考えると、今までの中禅寺さんの苦労が、知れる気がする。無意味に目立つ集団なだけに、色々と大変そうだ。なぜ彼女が、あの輪の中にいるのかも、不明だが。
「だろ?」
「どーすんのかなー」と背中が地面につく、すれすれの姿勢のまま、ぼやく。腹筋を酷使してそうだけど、辛くないのだろうか?……辛くないのだろうなあ……。
「……そういえば、やけに親身だね?八束のことだから、笑ってみてると思ってたけど」
「そうしたいのは、山々なんだが……、影響力を考えると、そうもいかんだろ」
影響力、とな?神谷たちって、そんな影響力があるもんなのだろうか?だって俺達もう、高校生なんだよ?自分のことは、自分で考えられるだろうし、仮に、皆が、神谷の言うことを聞いても、それでどうこう、ならないんでは……?
「そもそもが、今まで、神谷がしてきた不可解な行動が、全部、三芳の所為だった。なんてことも考えられる。そして今回の件で、奴らは更に力をつけた。オマケに、姫さんまで、ついてきてるんだ。何でもし放題なんじゃないか?」
「姫様は、民衆からも人気ですしね」
アンジェラさんも、うんうんと頷いている。マジか……。ただの高校生たちの、いざこざが、国家レベルの争いになり兼ねん……ってこと?
「って言うか、俺たち一人一人が、国を揺るがせられるレベルには、脅威なんじゃないか?なあ、アンジェラさん」
「その通りでございます。流石、八束様」
「つまり、俺たち一人一人が、気を付けていかなきゃなんねーって事。それとは別に、神谷らの影響力は、我らがクラスでは、半端ねーし、ぶっちゃけると、三芳が神谷洗脳したら、やりたい放題なんでは?」
うえっ。そんなに神谷って人気なのか。知らんかった。
「えっ。なんで皆、そんなに神谷のこと好きなの?」
思わず。口に出てしまう。
「カリスマ性……じゃないでしょうか?」
アンジェラさんが一言。
なんだそのカリスマ性ってのは……。俺には全く見えないんだけど。
しかし、八束が否定しない所を見るに、間違っていないのだろう。
「イケメンが、優しいってだけで、男女問わずから、モテモテだもんな」
と、イケメンが宣う。
「それは経験談か?」
「そうそう」
嫌味を含んで、言ってやったのに、満面の笑みで返された。これだから、イケメンは……。
「なーんて、うじうじ、なんか言ってても、俺達にはどーしようもないんだがな」
ついに、床にねっ転がる八束。あーあ。いや、アンジェラさんが、掃除してるから、汚くはないんだろうけど。あ、でも、アンジェラさんは、汚そうな目で見てるから、やっぱ汚いのか?
「って言うか、それを動かないことの免罪符にしてない?」
俺が、八束に、胡散臭い物を見る目を向けると、ニカッと、さわやかな笑みを向けられる。
「お前の能力って、ほんと便利だよなー」
……やはりそうか。あくまでも高みの見物を、押し通すらしい、このあくどい友人に、呆れる反面。こいつがいるから、俺もこんなに気楽でいられるんだろーな。と思った。
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