せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空

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 ゲームセンターの後、一行は行き先が無くなってしまった。
 ファミレスも、百貨店も、クェーサーを見るなり退店するよう言われてしまったのだ。仕方なくコンビニで軽食を買い、4人は肩を落とした。

「人もあやかしも同じ反応かよ、いいじゃねぇかロボットが店に入ったって」
「まぁ店側の対応も分からなくはないよ、クェーサーは良くも悪くも目立つし、トラブルに繋がりかねないしね」
「すみません、私のせいでご迷惑を」
「クェーサーは何も悪くないじゃろう。謝る必要はないぞ」

 サヨリヒメはクェーサーを撫で、おにぎりの封を開けた。
 御堂と救も同様に、軽食に手を付けた。クェーサーはそれを眺めるしか出来ない。

「見慣れたもんだけど、本当に人とあやかしって共存してるんだな。街を見渡す限り、あやかしと人が半々くらいで歩いてら。なんだって急にあやかしが見えるようになったんだか」
「羽山の者達は、わらわ達を認知したからの。わらわ達の擬態は、あやかしの存在を認知している者には通じぬのじゃ」
「じゃあ今、私と先輩の親を見たら、本当の姿が分かるって事か」

 御堂と救は人とあやかしのハーフだ。それを教えられた時、多少は驚いたものの、2人ともすんなりと受け入れてしまった。

「親があやかしと知っても、落ち着いているのですね」
「んーまぁ、親は親だしな。ガキの頃ならともかく、30手前になって聞いても動じやしないさ」
「むしろ自分のルーツを知るいいきっかけになったよ。この天才的な頭脳があやかし由来ならば納得だ」
「強いのですね」
「まぁ、この程度なんて可愛い位の目に遭い続けたからね。それに比べれば軽いさ」

 羽山工業の社員たちも、2人がハーフだと知っても「あっそ」程度の反応しかなかった。羽山のおおらかな社風もあるのだろうが、懐の深い者達である。

「あの、ちょっといいですか?」

 子供連れの主婦が声をかけてきた。男の子はキラキラした目でクェーサーを見上げ、そわそわしている。
「この子と写真を撮ってもいいですか? あと、もしよければTwitterに上げたいんですけど」
「構いません。ボク、おいで」

 クェーサーは男の子を抱き上げた。ちょっとしたサービスでヒーローっぽいポーズを取ってあげると、彼は興奮した様子でお礼を言ってくれた。

「物凄く喜んでたな、よかったじゃねぇか」
「彼の服がヒーローシリーズでしたから、その着ぐるみと勘違いしたのでしょう。喜んでくれたのなら幸いです」
「行動はいいけど、発言は気を付けようね。着ぐるみは夢壊すよ」
「気を付けます。それで、どうでしょうか。私は彼の心に、寄り添えたでしょうか」
「出来たと思うぞ。わらわ達が保証する、自信を持て」

 サヨリヒメから太鼓判を押され、嬉しくはある。一部出禁はあったものの、人やあやかし達からもそれなりに受け入れられただろう。
 それなのに、疎外感がぬぐえない。
 むしろ時間が経つごとに、皆との距離が離れていくような気がした。
 なぜ自分はこんなにも孤独を感じている、機械の手を握りしめ、クェーサーはかぶりを振った。

「……体が、重いです。出力、大幅に低下」
「おっと、稼働限界か。そろそろ羽山に戻らないと」

 クェーサーのバッテリーは、羽山工業でなければ充電できない。一行は大急ぎでバスへ向かった。
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