せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空

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『あら、もしかして、意味も分からずに、言葉を使ってたの?』
『そ、そんなわけないだろ。差別ってのは、理不尽に相手を下に見る行為のこと……なん、じゃないか?』

 勢いで言ったは良いものの、話すうちに、自信がなくなってきたのか、段々と語気が弱くなっている。そんな三芳を見て、ほほ笑んだ。
 こんな場面で微笑まれたら、怖くて仕方ない。流石の三芳も、冷や汗くらいは掻いていることだろう。

『そう認識してるなら、話が早いわ。なら聞くけど、テストの結果で、合格不合格が分けられることは、どう思う?』
『どう……って。普通の事だろ?』
『その結果で、高校がいけない子が出たとしても?』
『それって普通の高校受験の事だろ?』
『つまり、おかしいとは思ってないのね?』
『ああ』

 胸を張ってこたえる三芳。なんだか、誘導尋問的な流れだなあ……。
 そして、彼女の言いたいことも、大体分かった。……流石、中禅寺さん。と思わざるを得ない。

『それって、戦闘スキルを持たない人を戦わせないのと、何が違うのかしら?』
『……あ』
『つまり、戦闘力のない人たちを、戦わせないことは、差別じゃない。って事よ』

 中禅寺さんは、満足そうに目を細める。三芳はそんな彼女に、何故か。満面の笑みを向けた。まさか、皮肉のつもりか?さっきのコテンパンにされ度からして、そこまで余裕があるように見えなかったけど……。

『やっぱ中禅寺さんは、すげーな!』

 かっと見開いた眼は、キラキラ輝いている。
 え?どういう事?と一瞬戸惑ったが、分かった。こいつ、大型犬だ。

 中禅寺さんは、こういう態度取られるの嫌そうだなあ……。なんて思いながら、彼女の様子を見てみる。

『そんなことないわよ』

 冷たい声色で一蹴。しているかのように聞こえるが、表情は硬くない。いや、と言うか、照れているようにも見える。もしかして、満更でもないっぽい?

 なんか意外だ。褒められるなんてこと、中禅寺さんは、飽きるほどされてきただろうに……。それとも、もっと他のところが、心に来たのだろうか?うーん。分からん。

『いや、すげーって!!俺ほんとに差別なんじゃないか、って不安になってたもん。寧ろ否定してくれて、嬉しかったわ!』

 あ。嘘だ。
 え?いやあ、まじか……。
 取り敢えず、八束と話そうと、彼を見ると、すげえ、目を細めて、画面を睨みつけていた。

「嘘。吐いてるらしいけど」
「まあ、そうだろうな」

 分かってたのかよ。俺の能力要らずじゃん。

「なんで分かったの」
「なんとなく」

 あっ。さいですか。

「それよりも、三芳の心を読んでみろ」

 ん。まあ、嘘ついてる理由くらいは、知っといた方がいいよな。今の場面で、嘘つく理由が、分からないし。
 んー?『俺の邪魔しやがって……このクソアマが。こいつさえいなければ……』

「なんかこれ、本格的にやばくない?」
「ヤバすぎて、寧ろ面白い」

 いやいや。まあ、確かに、知ってしまった以上、どうしようも出来ないし、そこまで仲がいい訳じゃないから、他人事感は凄いけど……。

「え?ていうか、なんで、三芳は、嘘吐いてるの」
「知らんよ。お前の能力で分からないのか?」
「んー。都合よく、三芳が脳内で、自分の状況を語ってくれない限りは」
「じゃあ、無理なんだな。使い勝手がいいんだか、悪いんだか、良く分からない能力だな……」
「欲しいなら、あげるけど」
「その為には、能力を交換できる奴を、探さないとな」

 互いに一歩も譲らず。である。俺も八束も、自分の能力が嫌なのは確かだから、交換できれば、良いのにね。

「時に、神谷のことどう思った?」
「どうって言われてもな……現状維持だが?」

 何を言い出したんだ?と言いたげな顔で見られる。

「いや、見直したとか、ないのかなあ……と」
「ん……?」

 少し考えこんだ。恐らく今までの神谷たちの会話を、振り返っているのだろう。暫くすると、「あ、ああ……」と声を上げる。それから、グイッと、俺の方へ顔を寄せた。
 俺が女で、こんなことされたら、きゅんと来てしまったかもしれない。そう思うほどに、綺麗な顔立ちだった。

 ま、俺が女だったら、八束にこんなことされないと思うけど。

「言っとくが、俺の神谷が、嫌いな理由と、お前が神谷を、いまいち好きになれない理由は、全然違うと思うぜ?」

 ……なるほど。その可能性は失念していた。と言うか、似たようなものだと思ってた。いや、今でも思ってる。
 でも、うん。そう決めつけるは良くないか。本人が言ってるなら、尚更だ。
 そういうとこから、八束を不快にさせてしまうかもしれないしね。八束ならいいけど、他の人にやっちまうのは、絶対嫌だし。
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