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そんな八束に、話しかけに行くのも、なんだか、申し訳ないので、暫く放置しておくことにする。
手持ち無沙汰になった俺は、アンジェラさんの方を見た。彼女はやはり、飽きもせずに、画面を見つめている。まあ、俺が、八束から目離したせいで、強制的にこちらを見ざるを得なかったようだが。
こうなってくると、何も話さないままの俺は、アンジェラさん目線、何故こいつは急にこちらを向いたのだ……と、変な目で見られてしまう。
それは避けたい。
避ける為には、怪しまれないように、話しかける必要がある訳で……。
然し、何を話せばいいのか、上手い具合に思いつかない。いや、一つだけ、話すことが、あるっちゃあるのだが、あんまり気が乗らない……。
それから数秒、最後の悪あがき的に、悩んでいたのだが、やはり、最適な内容は思い浮かばず……。
仕方なしに、最後の手段として取っておいた、内容について話しかけてみる。
「あの……、どう、でしたかね?映像は……」
俺はリモコンから手を離し、トントン、とテレビを優しく叩く。
どうも、俺の能力すごいだろ!と暗に言ってる気がして、なんだか恥ずかしい。
だから嫌だったんだよなあ……。
まあ、それ以外何も思いつかなかったから、どうしようもないんだけど。
「凄かったですよ。神父様達はこんな光景を見ているのかもしれない……と、そう思いました」
「ん?神父様?」
俺は何故、ここで神父が出てくるのか、と疑問に思い、首を傾げる。
「ええ。教会に行くと、自分の能力が如何程なのか、教えて貰えるんです。それを教えてくれるのが、神父様なのですが……」
「なるほど。だから、神父様も私と同じような、映像を見ている、と」
というか、教会でも、自分の能力を見ることが出来るのか……。
俺は、ふと、新たな疑問が生まれたため、尋ねる。
「教会って能力をタダで見せて貰えるんですか?」
「ええ、そうですね。タダで公開することによって、教会への印象を良くすることが目的なのでしょう」
ふーん。なるほどね。確かに、ステータスをタダで見せてもらえるとなると、そりゃ、感謝もするよな。
そして、その感謝の気持ちを利用して、信者を増やす、って寸法か?
まあ、悪い事……では無いよな。むしろ、いい事をしてる訳だから、絶賛して然るべきなのだろうけど……、組織が、組織だからなあ。
あの教皇と言い、女神と言い、どうも信用できない。いい事をしていても、実は、なにか裏があるのでは?と疑ってしまう。
まあ、それはそれとして。
そうなると、やはり、分からないことが出てくる。
「無料で、能力を見せて貰えるなら、この間の鑑定石って不要なのでは?」
「いえ、そんなことはありませんよ」
即答だ。
これは、嘘をついているように、思えないなあ……。いや、勿論、嘘をついている時だって、即答することはあるだろう。むしろ、吃るか、相手の質問に被せるように、答えるかの二択になる気はしている。
然し、いや、今回のアンジェラさんの場合、そこまで答えるのが早かった訳ではない。だからこそ、いや、だからだろうか?彼女が強がりを言っているようには見えなかった。
「教会で教えて貰えるのは、現時点でのステータス。然し、この国の鑑定石では、 自分が何に向いているか、が分かるのです。言うなれば、隠された才能も分かるんですよ」
「それって凄いんですか?」
イマイチ、凄さが分からなかった俺は、首を傾げる。そりゃそうだ。女神様に、サラッと教えて貰えたもんなあ……。それももっと精度の良い奴。
「凄いも何も……、恐らく、ですが、他にそんなことをできるのは、我が国の鑑定石以外には無いと思いますよ」
呆れたような表情を見せた後、こちらを諭すように、目を細めている。まるで、我が子を見る、母親のような目で、嫌……と言うほどではないにしろ、何だろうな……恥ずかしい、のもそうなんだけど、それだけじゃないって言うか……うーん……。
まあ、とにかく、いい気分ではなかった。
……しかし、それだけ俺の聞いていることが、おかしい、と言う事なのだろう。
そりゃ、国宝だもんなあ。『それ、本当に凄いの?』なんて聞く奴はいないだろう。思ってても言わない。
……。
普通、言わない。
よなあ……。普通は言わないのなら、言わずに波風立てず、受け流すことも出来た筈だ。
そこは。俺の推測違い……かな。あんまり、何も考えずに話していた。とも言う。アンジェラさんなら、この国の人が聞けば怒るようなことを言っても、動じないと。そう思ったから油断してた。
とはいえ、そこまで過剰反応されたわけでも、俺が凄い不快に思ったわけでもない。
これからも、暫くは、王国に世話になるつもりだ。その上で、不信感なんてあったら、何か失礼なことをしてしまうかもしれないし。無理に信頼をするのも違うと思うけど、世話になるなら、相手のことを少しでも知るのは悪い事じゃないだろう。
そして、知るうえでは、分からないことを聞くのは、必須であって。
少しのこの、こう……言葉で言い表せない不快感と引き換えに、情報を得られたのは良かったんじゃないか?
聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥ってね。
そう思うと、さっきまで感じていた、わずかな不快感も、なくなってしまった気がした。
手持ち無沙汰になった俺は、アンジェラさんの方を見た。彼女はやはり、飽きもせずに、画面を見つめている。まあ、俺が、八束から目離したせいで、強制的にこちらを見ざるを得なかったようだが。
こうなってくると、何も話さないままの俺は、アンジェラさん目線、何故こいつは急にこちらを向いたのだ……と、変な目で見られてしまう。
それは避けたい。
避ける為には、怪しまれないように、話しかける必要がある訳で……。
然し、何を話せばいいのか、上手い具合に思いつかない。いや、一つだけ、話すことが、あるっちゃあるのだが、あんまり気が乗らない……。
それから数秒、最後の悪あがき的に、悩んでいたのだが、やはり、最適な内容は思い浮かばず……。
仕方なしに、最後の手段として取っておいた、内容について話しかけてみる。
「あの……、どう、でしたかね?映像は……」
俺はリモコンから手を離し、トントン、とテレビを優しく叩く。
どうも、俺の能力すごいだろ!と暗に言ってる気がして、なんだか恥ずかしい。
だから嫌だったんだよなあ……。
まあ、それ以外何も思いつかなかったから、どうしようもないんだけど。
「凄かったですよ。神父様達はこんな光景を見ているのかもしれない……と、そう思いました」
「ん?神父様?」
俺は何故、ここで神父が出てくるのか、と疑問に思い、首を傾げる。
「ええ。教会に行くと、自分の能力が如何程なのか、教えて貰えるんです。それを教えてくれるのが、神父様なのですが……」
「なるほど。だから、神父様も私と同じような、映像を見ている、と」
というか、教会でも、自分の能力を見ることが出来るのか……。
俺は、ふと、新たな疑問が生まれたため、尋ねる。
「教会って能力をタダで見せて貰えるんですか?」
「ええ、そうですね。タダで公開することによって、教会への印象を良くすることが目的なのでしょう」
ふーん。なるほどね。確かに、ステータスをタダで見せてもらえるとなると、そりゃ、感謝もするよな。
そして、その感謝の気持ちを利用して、信者を増やす、って寸法か?
まあ、悪い事……では無いよな。むしろ、いい事をしてる訳だから、絶賛して然るべきなのだろうけど……、組織が、組織だからなあ。
あの教皇と言い、女神と言い、どうも信用できない。いい事をしていても、実は、なにか裏があるのでは?と疑ってしまう。
まあ、それはそれとして。
そうなると、やはり、分からないことが出てくる。
「無料で、能力を見せて貰えるなら、この間の鑑定石って不要なのでは?」
「いえ、そんなことはありませんよ」
即答だ。
これは、嘘をついているように、思えないなあ……。いや、勿論、嘘をついている時だって、即答することはあるだろう。むしろ、吃るか、相手の質問に被せるように、答えるかの二択になる気はしている。
然し、いや、今回のアンジェラさんの場合、そこまで答えるのが早かった訳ではない。だからこそ、いや、だからだろうか?彼女が強がりを言っているようには見えなかった。
「教会で教えて貰えるのは、現時点でのステータス。然し、この国の鑑定石では、 自分が何に向いているか、が分かるのです。言うなれば、隠された才能も分かるんですよ」
「それって凄いんですか?」
イマイチ、凄さが分からなかった俺は、首を傾げる。そりゃそうだ。女神様に、サラッと教えて貰えたもんなあ……。それももっと精度の良い奴。
「凄いも何も……、恐らく、ですが、他にそんなことをできるのは、我が国の鑑定石以外には無いと思いますよ」
呆れたような表情を見せた後、こちらを諭すように、目を細めている。まるで、我が子を見る、母親のような目で、嫌……と言うほどではないにしろ、何だろうな……恥ずかしい、のもそうなんだけど、それだけじゃないって言うか……うーん……。
まあ、とにかく、いい気分ではなかった。
……しかし、それだけ俺の聞いていることが、おかしい、と言う事なのだろう。
そりゃ、国宝だもんなあ。『それ、本当に凄いの?』なんて聞く奴はいないだろう。思ってても言わない。
……。
普通、言わない。
よなあ……。普通は言わないのなら、言わずに波風立てず、受け流すことも出来た筈だ。
そこは。俺の推測違い……かな。あんまり、何も考えずに話していた。とも言う。アンジェラさんなら、この国の人が聞けば怒るようなことを言っても、動じないと。そう思ったから油断してた。
とはいえ、そこまで過剰反応されたわけでも、俺が凄い不快に思ったわけでもない。
これからも、暫くは、王国に世話になるつもりだ。その上で、不信感なんてあったら、何か失礼なことをしてしまうかもしれないし。無理に信頼をするのも違うと思うけど、世話になるなら、相手のことを少しでも知るのは悪い事じゃないだろう。
そして、知るうえでは、分からないことを聞くのは、必須であって。
少しのこの、こう……言葉で言い表せない不快感と引き換えに、情報を得られたのは良かったんじゃないか?
聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥ってね。
そう思うと、さっきまで感じていた、わずかな不快感も、なくなってしまった気がした。
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