せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空

文字の大きさ
上 下
95 / 115

バランス1

しおりを挟む
 そんな八束に、話しかけに行くのも、なんだか、申し訳ないので、暫く放置しておくことにする。
 手持ち無沙汰になった俺は、アンジェラさんの方を見た。彼女はやはり、飽きもせずに、画面を見つめている。まあ、俺が、八束から目離したせいで、強制的にこちらを見ざるを得なかったようだが。

 こうなってくると、何も話さないままの俺は、アンジェラさん目線、何故こいつは急にこちらを向いたのだ……と、変な目で見られてしまう。
 それは避けたい。
 避ける為には、怪しまれないように、話しかける必要がある訳で……。

 然し、何を話せばいいのか、上手い具合に思いつかない。いや、一つだけ、話すことが、あるっちゃあるのだが、あんまり気が乗らない……。

 それから数秒、最後の悪あがき的に、悩んでいたのだが、やはり、最適な内容は思い浮かばず……。
 仕方なしに、最後の手段として取っておいた、内容について話しかけてみる。

「あの……、どう、でしたかね?映像は……」

 俺はリモコンから手を離し、トントン、とテレビを優しく叩く。
 どうも、俺の能力すごいだろ!と暗に言ってる気がして、なんだか恥ずかしい。
 だから嫌だったんだよなあ……。

 まあ、それ以外何も思いつかなかったから、どうしようもないんだけど。

「凄かったですよ。神父様達はこんな光景を見ているのかもしれない……と、そう思いました」
「ん?神父様?」

 俺は何故、ここで神父が出てくるのか、と疑問に思い、首を傾げる。

「ええ。教会に行くと、自分の能力が如何程なのか、教えて貰えるんです。それを教えてくれるのが、神父様なのですが……」

「なるほど。だから、神父様も私と同じような、映像を見ている、と」

 というか、教会でも、自分の能力を見ることが出来るのか……。
 俺は、ふと、新たな疑問が生まれたため、尋ねる。

「教会って能力をタダで見せて貰えるんですか?」
「ええ、そうですね。タダで公開することによって、教会への印象を良くすることが目的なのでしょう」

 ふーん。なるほどね。確かに、ステータスをタダで見せてもらえるとなると、そりゃ、感謝もするよな。
 そして、その感謝の気持ちを利用して、信者を増やす、って寸法か?

 まあ、悪い事……では無いよな。むしろ、いい事をしてる訳だから、絶賛して然るべきなのだろうけど……、組織が、組織だからなあ。
 あの教皇と言い、女神と言い、どうも信用できない。いい事をしていても、実は、なにか裏があるのでは?と疑ってしまう。


 まあ、それはそれとして。
 そうなると、やはり、分からないことが出てくる。

「無料で、能力を見せて貰えるなら、この間の鑑定石って不要なのでは?」
「いえ、そんなことはありませんよ」

 即答だ。
 これは、嘘をついているように、思えないなあ……。いや、勿論、嘘をついている時だって、即答することはあるだろう。むしろ、吃るか、相手の質問に被せるように、答えるかの二択になる気はしている。

 然し、いや、今回のアンジェラさんの場合、そこまで答えるのが早かった訳ではない。だからこそ、いや、だからだろうか?彼女が強がりを言っているようには見えなかった。

「教会で教えて貰えるのは、現時点でのステータス。然し、この国の鑑定石では、 自分が何に向いているか、が分かるのです。言うなれば、隠された才能も分かるんですよ」

「それって凄いんですか?」

 イマイチ、凄さが分からなかった俺は、首を傾げる。そりゃそうだ。女神様に、サラッと教えて貰えたもんなあ……。それももっと精度の良い奴。

「凄いも何も……、恐らく、ですが、他にそんなことをできるのは、我が国の鑑定石以外には無いと思いますよ」

 呆れたような表情を見せた後、こちらを諭すように、目を細めている。まるで、我が子を見る、母親のような目で、嫌……と言うほどではないにしろ、何だろうな……恥ずかしい、のもそうなんだけど、それだけじゃないって言うか……うーん……。
 まあ、とにかく、いい気分ではなかった。

 ……しかし、それだけ俺の聞いていることが、おかしい、と言う事なのだろう。
 そりゃ、国宝だもんなあ。『それ、本当に凄いの?』なんて聞く奴はいないだろう。思ってても言わない。

 ……。

 普通、言わない。
 よなあ……。普通は言わないのなら、言わずに波風立てず、受け流すことも出来た筈だ。

 そこは。俺の推測違い……かな。あんまり、何も考えずに話していた。とも言う。アンジェラさんなら、この国の人が聞けば怒るようなことを言っても、動じないと。そう思ったから油断してた。

 とはいえ、そこまで過剰反応されたわけでも、俺が凄い不快に思ったわけでもない。

 これからも、暫くは、王国に世話になるつもりだ。その上で、不信感なんてあったら、何か失礼なことをしてしまうかもしれないし。無理に信頼をするのも違うと思うけど、世話になるなら、相手のことを少しでも知るのは悪い事じゃないだろう。
 そして、知るうえでは、分からないことを聞くのは、必須であって。

 少しのこの、こう……言葉で言い表せない不快感と引き換えに、情報を得られたのは良かったんじゃないか?
 聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥ってね。

 そう思うと、さっきまで感じていた、わずかな不快感も、なくなってしまった気がした。

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

スキル【アイテムコピー】を駆使して金貨のお風呂に入りたい

兎屋亀吉
ファンタジー
異世界転生にあたって、神様から提示されたスキルは4つ。1.【剣術】2.【火魔法】3.【アイテムボックス】4.【アイテムコピー】。これらのスキルの中から、選ぶことのできるスキルは一つだけ。さて、僕は何を選ぶべきか。タイトルで答え出てた。

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

ゴミスキルでもたくさん集めればチートになるのかもしれない

兎屋亀吉
ファンタジー
底辺冒険者クロードは転生者である。しかしチートはなにひとつ持たない。だが救いがないわけじゃなかった。その世界にはスキルと呼ばれる力を後天的に手に入れる手段があったのだ。迷宮の宝箱から出るスキルオーブ。それがあればスキル無双できると知ったクロードはチートスキルを手に入れるために、今日も薬草を摘むのであった。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

異世界無宿

ゆきねる
ファンタジー
運転席から見た景色は、異世界だった。 アクション映画への憧れを捨て切れない男、和泉 俊介。 映画の影響で筋トレしてみたり、休日にエアガンを弄りつつ映画を観るのが楽しみな男。 訳あって車を購入する事になった時、偶然通りかかったお店にて運命の出会いをする。 一目惚れで購入した車の納車日。 エンジンをかけて前方に目をやった時、そこは知らない景色(異世界)が広がっていた… 神様の道楽で異世界転移をさせられた男は、愛車の持つ特別な能力を頼りに異世界を駆け抜ける。 アクション有り! ロマンス控えめ! ご都合主義展開あり! ノリと勢いで物語を書いてますので、B級映画を観るような感覚で楽しんでいただければ幸いです。 不定期投稿になります。 投稿する際の時間は11:30(24h表記)となります。

不登校が久しぶりに登校したらクラス転移に巻き込まれました。

ちょす氏
ファンタジー
あ~めんどくせぇ〜⋯⋯⋯⋯。 不登校生徒である神門創一17歳。高校生である彼だが、ずっと学校へ行くことは決してなかった。 しかし今日、彼は鞄を肩に引っ掛けて今──長い廊下の一つの扉である教室の扉の前に立っている。 「はぁ⋯⋯ん?」 溜息を吐きながら扉を開けたその先は、何やら黄金色に輝いていた。 「どういう事なんだ?」 すると気付けば真っ白な謎の空間へと移動していた。 「神門創一さん──私は神様のアルテミスと申します」 'え?神様?マジで?' 「本来呼ばれるはずでは無かったですが、貴方は教室の半分近く体を入れていて巻き込まれてしまいました」 ⋯⋯え? つまり──てことは俺、そんなくだらない事で死んだのか?流石にキツくないか? 「そんな貴方に──私の星であるレイアースに転移させますね!」 ⋯⋯まじかよ。 これは巻き込まれてしまった高校17歳の男がのんびり(嘘)と過ごす話です。 語彙力や文章力が足りていない人が書いている作品の為優しい目で読んでいただけると有り難いです。 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

処理中です...