せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空

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教会と村人2

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 ……ん?
 あれ?ちょっと待って。
 意味が分からなくなってきた。

 まず、分かったことは、身代わりには何の意味もないってこと。
 でも、流石に、全員助けろ、と言ったところで、教会が聞く耳を持つとは思えない。じゃあ、農民の子供一人を助けろ、と言ったとして、果たして助けるだろうか?……いや、助けなさそうだなあ。一人見逃したら、二人三人、と増えていきそうだもんな。と言うか、俺なら増やす。
 多分あれだな。
 貴族の子供以外、何があっても見逃さないようにしてるわ。

 だってそんな、貴族の全員が全員、自分たちのことしか考えてない、なんて、考えられないでしょ。
 あの姫様もいるんだし、せめて、あの姫様だけでも、子供たちを救おうとした、と。
 ……そう思いたいよね。

 この話だけじゃ、なーんにも、分かんないけど。

「しかしの、全く救いがない訳じゃない……と言うかその逆での。光属性を授かった子供は、『神の遣い』として、それこそ、小さな村なら、村総出で祝福されるのじゃ」
「え?どういうことですか?」
「教会に我が子が連れ去られることは、『不幸な事』ではなく、『名誉的な事』だ、と思っとるんじゃろうの……」

 ……は?なんだそれ。意味わからない。子供が奪われることの何が、名誉だというのだろう。

「それに、教会からは膨大な報酬をもらえるし、引き取られた子供も、裕福な暮らしが出来るんじゃから、その認識も、あながち間違いではない。と思うけどのう」

 ラルゴさんは、難しそうな顔をする。
 彼は彼で、恩があるらしいから、教会のことを悪く言えないのかもしれない。俺たちは腐っても勇者なわけだし。勇者が、教会を嫌ってるなんて笑えないでしょ。じゃあ、奴隷にされた勇者と、女神を嫌う勇者は何なんだ、と言う話だけども。

「因みに、村人が拒否ったらどうなるんですか?」

 あくどい笑みを浮かべる八束。碌な答えが返ってこないと、思い込んでいるのだろう。その期待?に応えるように、ラルゴさんは、黙り込んでしまった。そんなに言いにくいことを、したのだろうか?
 だとしても、やったのはラルゴさんじゃないんだから、サクッと言ってしまえばいいのに。

 ……あ、恩があるんだっけ?
 教会の人が聞いているわけでも無かろうに、あんな最低な組織、手のひらクルクルしちゃえばいいだろうに。義理堅いなあ。

 ずっと眉を寄せていた、ラルゴさんだったが、何かに踏ん切りがついたのか、大きなため息をついた。

「……村ごと滅ぼされた、と言う話は聞いたことがあるの」

 む、村ごと?それはヤバい。その家族を、見せしめに殺すなら、まだしも……。村ごととは……。流石、勇者を奴隷にしようとしただけはある。

「そんな話を知ってたら、そりゃ、子供をほいほい渡す訳ですよ」

 いや、ホイホイて。ゴキブリみたいに言うなよ……。

 でも、死ぬか、金がもらえるか、の二択なら、後者を選ばざるを得ない気が……、いや、それでも、我が子のために戦った親がいても、おかしくないのでは?村人からしたら、そりゃ、迷惑だろうけど、親からしたら、他の村人の命よりも、我が子の命が重くても、仕方がないでしょ。

「それでも、少なくない村が滅んだんじゃないでしょうか?」
「いや、そんなことはないのう」

 そうなのか……。まあ、今の日本と違って、と言うか、昔の日本と同じように、横のつながりを大切にしなければ、生きていけないのかも。農民とか、一人で生活できなさそうだしなあ。そうなると、我が子が死ぬわけでもないのに、村人全員を道連れにする、と言うのも、可笑しな選択ではあるのか。

「貴族の場合、生む人数も少なく、少ない我が子に愛情がすべて注がれることは、珍しくないからの。子供と引き換えに、村を滅ぼしても、何ら不思議はないのじゃが……。村人と言うのは、人手不足から、多く子供を作ることも多い。じゃから、まあ、言い方悪くなるが、一人や二人、いなくなったところで、そう変わりない……のかもしれぬの」

 あー。なるほど。確かに先進国では少子化が進んでるらしいし、発展途上国では、人口が爆発的に増えてる……みたいな話を、授業で聞いたことがある、気がする。それと、似たようなものなんじゃないだろうか?豊かな人たちと、貧しい人たちの違い、って事ね。

「貴族の方が子供って多いんじゃないんすか?一夫多妻制?とかで」
「王族や、位の高い貴族ならまだしも、普通の貴族は、基本的に一人の夫に、一人の妻じゃ。王族や高位の貴族ですら、側室を設けても、子供は二、三人が普通じゃ」

 へえ。意外と少ないんだ。金持ちの王族とかって、やたらと妻を娶り、子供がわんさかいるイメージだったのに。妻と子供の人数で、男の甲斐性が試される。みたいに。

 まあ、確かにその通りかもしれないけど、俺はその制度、好きじゃないなあ。人を物として見てるようで、ちょっとね……。

 ……とかなんとか言って、只のモテない男の僻みなんじゃない?と言われても、否定はしないけど。確実に俺なんかよりも、八束の方がモテるだろうし、それだけで、甲斐性がどうのこうの、言われても困る。モテない男は、スタートラインにすら、立てないのか!!と声を大にして訴えたい。

 我ながら、結構必死で、どんだけモテないことに、コンプレックス感じてるんだよ。と思った。いや、理由としては半々くらいだからね。本当に。
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