せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空

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火の魔法への対抗策1

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「じゃあ、火属性で一番大きな魔法ってなんなんすか?」

 あ、それ、俺も気になるわ。大きいのの規模が分かれば、火属性がどの程度の強さなのか、見当がつくからね。火属性の敵に、出会ったときに、役に立ちそう。

「一番大きい、と言われても……大きいのじゃと、際限がないからのう」

 返答に困ったらしく、むむむ……と数秒唸った。が、すぐに、ポンと手を叩く。

「そうそう。聞いた話じゃが、この世界、全てを焼き尽くす魔法が、あるとかないとか」
「え゛っ。何それ危なすぎだろ」

 危ないとか、危なくないとか、それ以前の話な気がするけど。だって、全部を焼き尽くしたら、あとには何も残らないじゃんね?術者すらも、生きてるかどうか怪しいよ。

「まあ、あくまで言い伝え……神話の中の話じゃ」
「実際に発動されてたら、この世界は存在しませんしね」

 俺が言うと、八束は、「おお、確かに」と頷いて見せた。

「少なくとも、この世界では使われてないって事か」
「その通りじゃな。まあ、他の世界では使われたのかもしれぬが……それはわしらには、分からん事じゃからのう」

 うーん。他の世界で使われた、とは、考えたくもないなあ。そんな、破壊神みたいな奴がいたとして、いつこの世界にきて、お出かけついでに、とか言って、滅ぼされでもしたら、最悪じゃん。いや、これは前の世界にも言えることだけどね。折角、帰ってこれたのに、世界半壊、とか、ちょっと酷すぎる。

 あー。これも俺自身が世界を横断して、魔法、なんてのを知ってしまったから、過ってしまうのだ。今まで通り、何も知らずに、のうのうと暮らしてた方が、幸せだったに違いない。
 だからと言って、今更記憶がなくなるのも嫌だから、もうどうしようもないんだけどね。

「では問題じゃ。火の魔法に対抗するにはどうすればいいと思う?」

 俺たちを見定めるように、目を細めるラルゴさん。
 そんなものはお構いなし!と言うかのように、「はいはいはい!」と手と声を上げる八束。然し、待ちきれなかったのか、名前を呼ばれる前に、話し始める。いや、だったら、手を上げるなよ。

「水をかける」
「正解じゃ」

 何だこの、当たり前の会話は……。しかも、二人ともなんか満足げだし。

「お主は、他にはあるかの?」

 そういって、俺の方を見られる。
 他……。他、と言われてもなあ。

「燃焼の三反応、と言えば、燃料、酸素、熱。しかしそうなると、魔法の火って、何が燃料で燃えてるんだ?魔力で、燃料の代わりになるものを生成している?それを火元から分離させるのは、難しいかもな……。となると、酸素を断ち切るのが早いかなあ」

「と言うことで、酸素を断ち切る、ですね」
「ちょっと、何を言っとるのか、わからんのじゃが」

 頑張って捻り出したのに、すぐに否定された。
 そっか、ここ中世ヨーロッパレベルなんだったっけ。いや、知らんけど。じゃあ、酸素も分からんか。まあ、前の世界の化学が、この世界に通用するかは、不明だけどね。魔法なんてものがある時点で、全く同じ、とは言い難い訳だし。

「えーつまり、空間魔法かなんかで、その空間を切り出せば、火も消えるんじゃないですか?」

 正確に言うと、なんか違う……感が強いけども、俺の語彙力ではこれが精いっぱいだった。もう、やけくそである。

「ふむ……それは実際にやってみないと分からぬのう」
「じゃあ、やってみればいいんじゃね?」

 八束は、嬉しそうに握りこぶしを作っている。そんなことを言うが、やるのは、俺とラルゴさんなんだよなあ。

「しかし、空間を切断するのは危険なのでは?」

 正確には切断じゃなくて、酸素の除去だけど、そもそも俺の属性で出来るか分からないし、そんな魔法が存在するとは思えないからなあ。
 そうなると、俺の勘だけで、魔法を開発する……感じになるよね?それって凄く危なくね?最悪、俺死にそう。

「そうじゃの、今はまだやめておいた方がいいのう」

 ラルゴさんの言葉に、安堵し、こくこくと何度も頷く。

「ですよね」
「……となると、正解かどうかは分かず仕舞いじゃが、まあ仕方ないの」

 ラルゴさんは、すっと、肩をくすめる。
 そんなこと言われてもなあ。じゃあ、他の正解は何だったんだよ……。

「まあ、基本は水をかければよい。それが一番簡単じゃしの」

 ん?あれ?もしかして、答え教えてくれない感じ?敗者に知る権利はなし。一生涯、その無知を背負うがいい。みたいな?いや……流石に聞いたら教えてくれるよね?

「結局、正解は何だったんですか?」
「む?正解?正解なんぞないぞ」
「……え?」

 ど、どういう事だ?さっぱり意味が分からない。なんで正解がないのに、聞いてきたんだ?俺がそれらしいことを言っても正解が分からないじゃないか。
 ……あ。もしかして、答えないのが正解だったのか?ハンター×ハンター的な。それは……分かんなかったなあ。例え、答えが分からなくても、無理矢理、何かを答えたくなっちゃうからね。

「いや、の。おぬしの知識を聞きたくてのう……」

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