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召喚魔法2
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「ところで、お主、彼は放置でいいのかの?」
ラルゴさんの視線の先には、体操座りで下を向いている八束がいた。
うわ。すっかり忘れていた。……と言うか、そんな律義に、ずっと座ってなくてもいいだろうに。
ん?よく見てみると、ちらちらと目だけで、こちらを見ている。さては、やめるタイミングを見失ったな……?その縋るような視線を受け、俺は大きなため息をついて、立ち上がった。
「そろそろ、席に着いたら?」
「なんか冷たくね?」
不満げな八束の顔が、なんだかむかついたので、無視して、体を持ち上げる。
やっぱり、不満そうな八束だったが、抵抗を見せることはなく、すんなりと立ち上がった。
ここで立ち上がろうとしなかったら、このまま放置してただろうなあ。つまり彼は、自分でも、知らず知らずのうちに、窮地を避けていた訳で……。今回は、運が良かったな。
「そもそもお前が言い出したんだろ……」とかなんとか、ぶつくさ言っているが、すべて無視をする。元はと言えば、悪いのは八束であって、俺はなーんにも、悪くないからね。
八束が椅子に座ると、ラルゴさんが、
パン
と手を鳴らした。仕切り直し、と言う事だろう。
俺たちは、顔を見合わせ、各々聞く姿勢をとった。
「まず火の魔法じゃが、代表的なのはファイヤーボールじゃな」
あーよく聞く奴だ。それを使える魔法使いが、イキってる場面とか、多い気がする。「俺はファイヤーボールが使えるんだぞ」「「おぉ……(どよめき)」」みたいな。
「ファイヤーボールってどんな魔法なんすか?」
字面から、大まかな予想は出来るだろうに……。まあ、念には念を入れて、聞いておくに越したことはないか。もしかしたら、想像してるのとは、全然違う魔法かもしれないし。
「文字通り、火の玉を出す魔法じゃな。火を生み出す操作と、火を操る操作が必要じゃと言われておる」
あれ、いざ説明を聞いてみると、思ったよりは難しそう。代表的、ではあっても、初歩的な魔法、ではない。と言う事か。じゃあ、冒険者ギルドに行ったら、本当にファイヤーボールが出来るから、と、イキってる奴がいるかもしれない。そもそも、冒険者ギルドがあるかどうかすら、分からないけどね。
「そのファイヤーボールっての。発動させるのは難しいんですか?」
お。
丁度、俺も、そのことについて考えていたところだった。
そんなに簡単な魔法ではない、と予測はしてみたものの、合っているかは分からないからね。聞いてくれるのは助かる。別に、自分で聞くのもいいんだけど、どうしても、無駄に考えてしまうからなあ。だから聞いてくれるのが一番だ。
「まあ、簡単ではない、かのう?ただ、この魔法が発動できないと、魔法使いとして生きていくのは難しい、と言われとるんじゃ」
なるほど?初歩的、と言うよりは基本的な魔法らしい。自慢してたら、そいつの底が知れるから、冒険者ギルドには、いないかもしれない。逆に、魔法学校とかには、そういう輩がいそうだ。貴族の息子、とかな。
「まあ、操って、敵に命中させる、って大変そうだもんなあ。魔力使いすぎて、遠くの敵には使えなさそ」
「む?そんなことはないぞい。魔力を使うのは、火を発生させ、発射させる、初めの一瞬だけで、あとは何も必要ないからのう」
「え?そうなんすか」
え?そうなのか。と言うか、あんま、その辺、深く考えてなかったけど、言ってることは分かる。
俺の中でのファイヤーボールは、相手を追尾するような物ではなく、発射!被弾!みたいな感じの物だから、ラルゴさんが言っているものに、近いんだろう。
「では、八束が言ったみたいな、魔法はあるんでしょうか?」
ふむ、と思考を整理するためか、斜め上を見るラルゴさん。
「そう言う魔法の呪文は存在しない、が、発動は出来ないこともないのう……」
「え?もしかして、新種の魔法、発見しちゃった系?」
八束は、少し興奮気味に、身を乗り出す。しかし、ラルゴさんは非情にも、大きく首を横に振ったのだった。
「いや、他の者も同じような魔法は、考案しているだろう。ただ、使い勝手が悪いから、流行らなかったのじゃろうな……」
その言葉を聞いて、八束は大袈裟すぎるほどに、大きく肩を落とした。がっくり、と言う効果音がぴったりだ。どうも、消費魔力量が多い、と言うのがネックなのだろう。例え、魔力量が多い人でも、魔力の無駄遣いはしたくないだろうし。他の強い魔法が、同じ魔力量で打てるなら、そっちを使うのが普通だろう。
「ただ、不意を打つ、と言う意味では有効かもしれぬな。場面によっては有効活用できるじゃろうし、悪くない発想じゃと思うぞい」
褒められたのが、嬉しかったのか、ドヤ顔をこちらに見せてきた。鬱陶しいことこの上ない。そもそも、八束の考えた魔法、ではなく、ただの勘違い、なので、そんなに自慢げなのは、おかしいだろう。
……とは思うが、言っても、ラルゴさんには、「勘違いでも、立派な発想じゃ」とか言われそうだからなあ。すると、八束がさらに調子に乗ることは、目に見えているので、言えない。言いたくない。
んー。歯がゆい所だ。
何だか負けた気さえしてきた。なんか悔しい。
ラルゴさんの視線の先には、体操座りで下を向いている八束がいた。
うわ。すっかり忘れていた。……と言うか、そんな律義に、ずっと座ってなくてもいいだろうに。
ん?よく見てみると、ちらちらと目だけで、こちらを見ている。さては、やめるタイミングを見失ったな……?その縋るような視線を受け、俺は大きなため息をついて、立ち上がった。
「そろそろ、席に着いたら?」
「なんか冷たくね?」
不満げな八束の顔が、なんだかむかついたので、無視して、体を持ち上げる。
やっぱり、不満そうな八束だったが、抵抗を見せることはなく、すんなりと立ち上がった。
ここで立ち上がろうとしなかったら、このまま放置してただろうなあ。つまり彼は、自分でも、知らず知らずのうちに、窮地を避けていた訳で……。今回は、運が良かったな。
「そもそもお前が言い出したんだろ……」とかなんとか、ぶつくさ言っているが、すべて無視をする。元はと言えば、悪いのは八束であって、俺はなーんにも、悪くないからね。
八束が椅子に座ると、ラルゴさんが、
パン
と手を鳴らした。仕切り直し、と言う事だろう。
俺たちは、顔を見合わせ、各々聞く姿勢をとった。
「まず火の魔法じゃが、代表的なのはファイヤーボールじゃな」
あーよく聞く奴だ。それを使える魔法使いが、イキってる場面とか、多い気がする。「俺はファイヤーボールが使えるんだぞ」「「おぉ……(どよめき)」」みたいな。
「ファイヤーボールってどんな魔法なんすか?」
字面から、大まかな予想は出来るだろうに……。まあ、念には念を入れて、聞いておくに越したことはないか。もしかしたら、想像してるのとは、全然違う魔法かもしれないし。
「文字通り、火の玉を出す魔法じゃな。火を生み出す操作と、火を操る操作が必要じゃと言われておる」
あれ、いざ説明を聞いてみると、思ったよりは難しそう。代表的、ではあっても、初歩的な魔法、ではない。と言う事か。じゃあ、冒険者ギルドに行ったら、本当にファイヤーボールが出来るから、と、イキってる奴がいるかもしれない。そもそも、冒険者ギルドがあるかどうかすら、分からないけどね。
「そのファイヤーボールっての。発動させるのは難しいんですか?」
お。
丁度、俺も、そのことについて考えていたところだった。
そんなに簡単な魔法ではない、と予測はしてみたものの、合っているかは分からないからね。聞いてくれるのは助かる。別に、自分で聞くのもいいんだけど、どうしても、無駄に考えてしまうからなあ。だから聞いてくれるのが一番だ。
「まあ、簡単ではない、かのう?ただ、この魔法が発動できないと、魔法使いとして生きていくのは難しい、と言われとるんじゃ」
なるほど?初歩的、と言うよりは基本的な魔法らしい。自慢してたら、そいつの底が知れるから、冒険者ギルドには、いないかもしれない。逆に、魔法学校とかには、そういう輩がいそうだ。貴族の息子、とかな。
「まあ、操って、敵に命中させる、って大変そうだもんなあ。魔力使いすぎて、遠くの敵には使えなさそ」
「む?そんなことはないぞい。魔力を使うのは、火を発生させ、発射させる、初めの一瞬だけで、あとは何も必要ないからのう」
「え?そうなんすか」
え?そうなのか。と言うか、あんま、その辺、深く考えてなかったけど、言ってることは分かる。
俺の中でのファイヤーボールは、相手を追尾するような物ではなく、発射!被弾!みたいな感じの物だから、ラルゴさんが言っているものに、近いんだろう。
「では、八束が言ったみたいな、魔法はあるんでしょうか?」
ふむ、と思考を整理するためか、斜め上を見るラルゴさん。
「そう言う魔法の呪文は存在しない、が、発動は出来ないこともないのう……」
「え?もしかして、新種の魔法、発見しちゃった系?」
八束は、少し興奮気味に、身を乗り出す。しかし、ラルゴさんは非情にも、大きく首を横に振ったのだった。
「いや、他の者も同じような魔法は、考案しているだろう。ただ、使い勝手が悪いから、流行らなかったのじゃろうな……」
その言葉を聞いて、八束は大袈裟すぎるほどに、大きく肩を落とした。がっくり、と言う効果音がぴったりだ。どうも、消費魔力量が多い、と言うのがネックなのだろう。例え、魔力量が多い人でも、魔力の無駄遣いはしたくないだろうし。他の強い魔法が、同じ魔力量で打てるなら、そっちを使うのが普通だろう。
「ただ、不意を打つ、と言う意味では有効かもしれぬな。場面によっては有効活用できるじゃろうし、悪くない発想じゃと思うぞい」
褒められたのが、嬉しかったのか、ドヤ顔をこちらに見せてきた。鬱陶しいことこの上ない。そもそも、八束の考えた魔法、ではなく、ただの勘違い、なので、そんなに自慢げなのは、おかしいだろう。
……とは思うが、言っても、ラルゴさんには、「勘違いでも、立派な発想じゃ」とか言われそうだからなあ。すると、八束がさらに調子に乗ることは、目に見えているので、言えない。言いたくない。
んー。歯がゆい所だ。
何だか負けた気さえしてきた。なんか悔しい。
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