82 / 115
召喚魔法1
しおりを挟む
ラルゴさんは柔らかに微笑んだ。
まあ、どれだけ説得したところで、ラルゴさんの罪悪感が、なくなることは、ないのだろう。もしも、俺がラルゴさんの立場だったら、罪の意識でどうにかなっていただろうし、誰かに何かを言われたところで、その罪悪感は、無くならなかったに違いない。
これが当事者と第三者の感じ方の違い、と言うものなのかも。絶対に、ラルゴさんは悪くないと思うんだけどなあ。……ああ、でも、他の奴らも同じように思うか?と聞かれると何とも言えない。八束とか、影井とか、先生なんかは、大丈夫だと思うけど。
それ以外の奴が、ラルゴさんを責めないとも、言いきれない。だから他の奴には、なるべく、このことは話さない方がいいかも。一番初めの授業の時に、眠りの呪文を唱えていた件も併せると、かなり印象は悪くなるだろうからね。まだバレてないから、今のところ何もないけど。
まあ、そんな話を大して親しくもない同級生ともしないだろうし、そもそも、話すきっかけがない。いきなり、名前知ってるくらいの仲の奴が、「俺たちを召喚した原因は、あのじじいが作ったんだってよ」なーんていったって、怪しさしかないでしょ。
まあそりゃ、同級生の好で、多少は信じてもらえる……かもしれないけれど。俺はそんな不審者には、なるつもりがないし。そう考えると、人に話す……と言うか、聞かれるような状況が思い浮かばない。だから大丈夫だろう。
「あ、そういえば」
「ん?何かの?」
俺の声色から、慰めの色が消えたことを、感じ取ったのだろう。ラルゴさんも、さっきまでの、落ち込んでいたことなんて、初めから無かったかのような、態度を見せる。
本当は罪悪感で胸がいっぱいだろうに、それを俺に見せると、心配するだろうから、と、わざわざ、平静を装ってくれているのだろう。
流石おじいちゃんである。
俺はその気持ちを、ありがたく受け取った上で、知らない風を装う。
「異世界から、の召喚って、他には何が召喚できるんですか?」
「む?」
何故そんなことを質問したのか?と不思議そうな顔をするも、すぐに納得するように頷く。好奇心によるものだ、と判断したのかもしれない。
「そうじゃのう……悪魔や、天使が代表的じゃの。ただ、天使は呼び出しても滅多に出てこぬらしい。悪魔は……出ては来るものの、願いを叶える代償に、何かを奪われるとか……。まあ、余程のことがない限り、悪魔とは契約せんのう。教会からも悪魔召喚は、異端とされているしの」
天使の方はさておき、悪魔の方は予想通り、と言うか、イメージ通りだったな。
まあ、悪魔を召喚したい人なんていないだろうし、まあ、教会からしたら、論外な手段だろう。天使も……天使はそもそも来ないならなあ。……いや、待てよ。
「教会が天使を呼び出した事例ってあるんですか?」
「もちろん存在するのう」
「……結果は?」
「……」
ラルゴさんは俺から、あからさまに、目を逸らした。
あ、これは駄目だった奴だ……。
「かなりの回数、呼び出したらしいのじゃが、それに天使が応答した回数は、数えるほどしか、なかったらしいのう」
うん。まあ、一回失敗しただけじゃ引き下がらないよね。教会の中で、天使がどれくらいの立ち位置にいるか、知らないけど、神の次くらいに神聖なものだとしたら、成功するまで呼び出してもおかしくはない。
その所為で、成功率が低いことが、分かってしまったのは、災難だけど。教会の信用度にも、悪影響を及ぼす案件なんじゃないだろうか?
というか天使も天使である。折角、自分たちを信仰してくれているのに、出てこないって……。教会が見放さないのが、不思議なくらいだ。
天使って言うと、凄い優しくて、可愛らしい。みたいなイメージだけど、この世界では、そうじゃないのかも。あー。そうか、あの女神の部下、みたいなもんだからなあ。性格が腐ってそうな感じがするわ。
つまり天使もダメ、と。
「他に呼び出せるような人?物?はいないんですか?」
「精霊……やら、妖精やらの世界もあるらしいが、呪文自体、見つかっとらんからのう……伝説の域を出ぬのじゃ」
……そっか。
じゃあ、俺たちを呼び出すしか、手がなかった、ってことなんだろう。がっかりしたような、安心したような、複雑な気持ちだ。
うん。でもまあ、これですっきりした。
今回のことは、仕方なく起きた事故だったってことで。だからって、教会を許したわけじゃないけど、少しは情状酌量の余地があるかなって。
人を憎むのは何も考えなくていいから、楽かもしれない。けれど、それはやっぱり、つらい。俺の心の奥の方で、ずっと尋ねてくるんだ。『本当にそれでいいのか?』って。
多分、俺は人を憎んだり、嫌ったりするのに向いてないんだろうなあ。まあ、それでも、嫌なものは嫌なんだけど。
「ありがとうございました」
「ふ、ふむ?まあ、何かの助けになったなら、良かったのじゃ」
ラルゴさんは、いまいち、しっくり来ないような、表情をしていたが、何も聞かなかった。もし、聞かれていても、はぐらかしていただろうけど。
まあ、どれだけ説得したところで、ラルゴさんの罪悪感が、なくなることは、ないのだろう。もしも、俺がラルゴさんの立場だったら、罪の意識でどうにかなっていただろうし、誰かに何かを言われたところで、その罪悪感は、無くならなかったに違いない。
これが当事者と第三者の感じ方の違い、と言うものなのかも。絶対に、ラルゴさんは悪くないと思うんだけどなあ。……ああ、でも、他の奴らも同じように思うか?と聞かれると何とも言えない。八束とか、影井とか、先生なんかは、大丈夫だと思うけど。
それ以外の奴が、ラルゴさんを責めないとも、言いきれない。だから他の奴には、なるべく、このことは話さない方がいいかも。一番初めの授業の時に、眠りの呪文を唱えていた件も併せると、かなり印象は悪くなるだろうからね。まだバレてないから、今のところ何もないけど。
まあ、そんな話を大して親しくもない同級生ともしないだろうし、そもそも、話すきっかけがない。いきなり、名前知ってるくらいの仲の奴が、「俺たちを召喚した原因は、あのじじいが作ったんだってよ」なーんていったって、怪しさしかないでしょ。
まあそりゃ、同級生の好で、多少は信じてもらえる……かもしれないけれど。俺はそんな不審者には、なるつもりがないし。そう考えると、人に話す……と言うか、聞かれるような状況が思い浮かばない。だから大丈夫だろう。
「あ、そういえば」
「ん?何かの?」
俺の声色から、慰めの色が消えたことを、感じ取ったのだろう。ラルゴさんも、さっきまでの、落ち込んでいたことなんて、初めから無かったかのような、態度を見せる。
本当は罪悪感で胸がいっぱいだろうに、それを俺に見せると、心配するだろうから、と、わざわざ、平静を装ってくれているのだろう。
流石おじいちゃんである。
俺はその気持ちを、ありがたく受け取った上で、知らない風を装う。
「異世界から、の召喚って、他には何が召喚できるんですか?」
「む?」
何故そんなことを質問したのか?と不思議そうな顔をするも、すぐに納得するように頷く。好奇心によるものだ、と判断したのかもしれない。
「そうじゃのう……悪魔や、天使が代表的じゃの。ただ、天使は呼び出しても滅多に出てこぬらしい。悪魔は……出ては来るものの、願いを叶える代償に、何かを奪われるとか……。まあ、余程のことがない限り、悪魔とは契約せんのう。教会からも悪魔召喚は、異端とされているしの」
天使の方はさておき、悪魔の方は予想通り、と言うか、イメージ通りだったな。
まあ、悪魔を召喚したい人なんていないだろうし、まあ、教会からしたら、論外な手段だろう。天使も……天使はそもそも来ないならなあ。……いや、待てよ。
「教会が天使を呼び出した事例ってあるんですか?」
「もちろん存在するのう」
「……結果は?」
「……」
ラルゴさんは俺から、あからさまに、目を逸らした。
あ、これは駄目だった奴だ……。
「かなりの回数、呼び出したらしいのじゃが、それに天使が応答した回数は、数えるほどしか、なかったらしいのう」
うん。まあ、一回失敗しただけじゃ引き下がらないよね。教会の中で、天使がどれくらいの立ち位置にいるか、知らないけど、神の次くらいに神聖なものだとしたら、成功するまで呼び出してもおかしくはない。
その所為で、成功率が低いことが、分かってしまったのは、災難だけど。教会の信用度にも、悪影響を及ぼす案件なんじゃないだろうか?
というか天使も天使である。折角、自分たちを信仰してくれているのに、出てこないって……。教会が見放さないのが、不思議なくらいだ。
天使って言うと、凄い優しくて、可愛らしい。みたいなイメージだけど、この世界では、そうじゃないのかも。あー。そうか、あの女神の部下、みたいなもんだからなあ。性格が腐ってそうな感じがするわ。
つまり天使もダメ、と。
「他に呼び出せるような人?物?はいないんですか?」
「精霊……やら、妖精やらの世界もあるらしいが、呪文自体、見つかっとらんからのう……伝説の域を出ぬのじゃ」
……そっか。
じゃあ、俺たちを呼び出すしか、手がなかった、ってことなんだろう。がっかりしたような、安心したような、複雑な気持ちだ。
うん。でもまあ、これですっきりした。
今回のことは、仕方なく起きた事故だったってことで。だからって、教会を許したわけじゃないけど、少しは情状酌量の余地があるかなって。
人を憎むのは何も考えなくていいから、楽かもしれない。けれど、それはやっぱり、つらい。俺の心の奥の方で、ずっと尋ねてくるんだ。『本当にそれでいいのか?』って。
多分、俺は人を憎んだり、嫌ったりするのに向いてないんだろうなあ。まあ、それでも、嫌なものは嫌なんだけど。
「ありがとうございました」
「ふ、ふむ?まあ、何かの助けになったなら、良かったのじゃ」
ラルゴさんは、いまいち、しっくり来ないような、表情をしていたが、何も聞かなかった。もし、聞かれていても、はぐらかしていただろうけど。
6
お気に入りに追加
734
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
スキル【アイテムコピー】を駆使して金貨のお風呂に入りたい
兎屋亀吉
ファンタジー
異世界転生にあたって、神様から提示されたスキルは4つ。1.【剣術】2.【火魔法】3.【アイテムボックス】4.【アイテムコピー】。これらのスキルの中から、選ぶことのできるスキルは一つだけ。さて、僕は何を選ぶべきか。タイトルで答え出てた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ゴミスキルでもたくさん集めればチートになるのかもしれない
兎屋亀吉
ファンタジー
底辺冒険者クロードは転生者である。しかしチートはなにひとつ持たない。だが救いがないわけじゃなかった。その世界にはスキルと呼ばれる力を後天的に手に入れる手段があったのだ。迷宮の宝箱から出るスキルオーブ。それがあればスキル無双できると知ったクロードはチートスキルを手に入れるために、今日も薬草を摘むのであった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
元公務員が異世界転生して辺境の勇者になったけど魔獣が13倍出現するブラック地区だから共生を目指すことにした
まどぎわ
ファンタジー
激務で倒れ、そのまま死んだ役所職員。
生まれ変わった世界は、魔獣に怯える国民を守るために勇者が活躍するファンタジーの世界だった。
前世の記憶を有したままチート状態で勇者になったが、担当する街は魔獣の出現が他よりも遥かに多いブラック地区。これは出現する魔獣が悪いのか、通報してくる街の住人が悪いのか……穏やかに寿命を真っ当するため、仕事はそんなに頑張らない。勇者は今日も、魔獣と、市民と、共生を目指す。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界無宿
ゆきねる
ファンタジー
運転席から見た景色は、異世界だった。
アクション映画への憧れを捨て切れない男、和泉 俊介。
映画の影響で筋トレしてみたり、休日にエアガンを弄りつつ映画を観るのが楽しみな男。
訳あって車を購入する事になった時、偶然通りかかったお店にて運命の出会いをする。
一目惚れで購入した車の納車日。
エンジンをかけて前方に目をやった時、そこは知らない景色(異世界)が広がっていた…
神様の道楽で異世界転移をさせられた男は、愛車の持つ特別な能力を頼りに異世界を駆け抜ける。
アクション有り!
ロマンス控えめ!
ご都合主義展開あり!
ノリと勢いで物語を書いてますので、B級映画を観るような感覚で楽しんでいただければ幸いです。
不定期投稿になります。
投稿する際の時間は11:30(24h表記)となります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる