せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空

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基本属性1

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「では基本属性の話でもするかの」

 おぬしらが特殊な属性で、いまいち説明できんかったからのう。とぼやく。
 何だか申し訳なくて、つい肩を縮こまらせたが、隣を見ると、何故かどや顔をしているやつがいた。
 なんだか、あほらしくなって、肩の力を抜く。

「基本属性は、火、水、土、風、の四属性からなっておる」
「なんでその四つが基本属性なんすか?」
「その四種類の人間が多いからじゃ。だから、この属性についてしか学ばないことも多くての」

 ラルゴさんは苦々し気な表情を見せる。

「え?そうなると、四属性以外の人はどうなるんですか?」
「……一生適正属性が見つからぬ、と言うことも少なくないのじゃ」

 え。何それ……。勿体な。
 けれども、それはよくよく考えれば、前の世界にだって存在していた気がする。流石に日本ではないけれど、貧しい国では、勉強もできず、せっかく頭が良くても、それが分からないまま、一生を終える……みたいな話じゃないだろうか?
 ここが中世ヨーロッパの世界と似ている、と仮定すると、文化水準は低そうだし、合点がいく。

 だから余計に、希少である空間魔法の使い手が少なくなっているのだろう。

「貧しいものは、まず生活魔法を練習するんじゃ。少し余裕のある者は、それにプラス、四属性も教えてもらえるかの。逆に高位の貴族は生活魔法を覚えないことが多いのう」

 んー?貧しい方はなんとなく想像してたけど、貴族が勉強しない魔法があるのは想定外だったなあ。でも、考えてみれば、その理由もわかるかも。

「もしかして、生活魔法は、下々の魔法、とでも思われているんでしょうか?」
「まあ、概ねそんな感じじゃ。生活魔法、と言えば農民なんかが使うイメージが強くての。まあ実際、高位貴族なんかになると使う事は滅多にないから……余計に……じゃな。下位の貴族じゃと、高位貴族の使用人になることも珍しくなく、そんなに忌諱はされとらんのじゃがのう」

 なるほどねえ。確かに高位貴族の跡取りが、生活魔法しか使えない、ことが判明したら、ちょっと体裁悪いかもしんない。
 俺からしたら、生活魔法でもなんでも、適性が判明して、それが何かに生かせたらいいのに……。とは思うけど。なんて言うか、もったいないよね。貧困層の人たちからしたら、それこそ、信じられないでしょ。
「パンがなければ、ケーキを食べればいいじゃない」と言う言葉と似てる、この感じ。やっぱり、中世ヨーロッパに似てる。

「じゃあ、フォルちゃんに八束の適正魔法のことを話したら、幻滅してくれるかもしれないね」

 俺が半分くらい冗談交じりで言うと、ものすごい馬鹿にされたような目で見られた。

「いや、あいつメイドだし。仮に貴族だとしても、上位じゃないことは明白だろ」
「それはそうだけど……ほら、この世界の女の子って強い男のほうが好きそうだし」
「それはそうだな」
「じゃあ、」
「いや」

 八束は、大きく首を横に振る。

「そもそも、奴は俺の適正を知っている」
「え?そうなの?」

 俺が、驚くと、八束は、やれやれと、またもや首を振った。首を振りすぎて、目が回ったりしないのだろうか。

「専属メイドだからな……。お前のところのメイドもそうだったはずだろ?」

 俺の時……?ああ、倒れてたからなあ……。

「俺の時はそもそも、一緒に適性確認してる」

 八束は、腕を組んで、難しい顔をした。

「ああ、そういえば、お前倒れてて、検査受けられてなかったっけ。部屋でやったのか」
「そういう事」

 八束は合点がいった、と言うように頷くと、はあ、とため息をついた。

「どうしたんだ?」
「……メイドがよ、俺の適正を聞いた時の反応。どんなんだったと思う?」
「え?うーん……。
 そういうところも好きです!一緒に家事しましょう!みたいな?」
「ふん」

 鼻で笑われた。
 つまり違う、と。じゃあ何なんだろうなあ……。
 八束の表情から、何か読み取れまいか、と、能力が発動しないように、じっと見つめる。すると彼は、さっきの馬鹿にした表情を一変。眉をしかめて、ものすごい表情を作り上げた。まるで、大量の青汁を限界まで煮詰め、それをメロンソーダーだ、と言われて飲んだかのような顔だ。
 ……そんなに嫌だったのか。

「生活魔法しか使えなくても好きです!!元気出してください!私がついていますから」

 裏声で甲高い声を出し、足は内股気味に、両手をあごの下で握って、ぶりっ子のポーズを決める八束。……う、うん。いや、笑ったら駄目なのは分かるんだけど、笑うしかないでしょ、これ。なんで真剣な話してるときに、真似挟んでくるんだよ。こっちが困るだろ。
 ……とは言えずに、

「そうか、災難だったな……」

 と、同情するような目線を向ける。口角が震えてなければいいけど……。

「なんか、すまんのう。どうやら若いもんが迷惑をかけとるようで……」

 ラルゴさんは、眉尻を下げた。その、しょんぼりとした表情は、見ているこちらまで悲しくなってくる。

「ラルゴさんが謝ることじゃないですよ!!」

 頭を下げかけた彼を、慌てて止める。

「いや、なんでお前が止めるんだよ」
「じゃあ、ラルゴさんが悪いっていうのか?」
「い、いや、そういうわけでは全くないけれど……」
「じゃあ、お前は黙ってろ」
「は、はい」

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