せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空

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空間魔法2

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 怒っている、と言うよりは、不貞腐れているような舌打ちをした。
 でもふざけたその行動の合間に、不貞腐れている、と言うよりは、心の底から残念がっているような表情を、一瞬見せる。
 これは、真面目に残念がってるパターンだな。
 まあ、八束は魔法らしい魔法を使えないっぽいし、そういうの憧れる気持ちも分からなくもない。まあ、いつかは絶対にやるだろうし、あんまり落ち込まないで欲しいわ。

「では他に、どんな魔法があるんですか?」

 ……なんて聞かなくても、どんどん教えてほしい。おそらく多くの魔法があることだろうし、全部知りたいって言うか、そのたびに聞くのは面倒くさい。

「それなんじゃが……空間魔法は極端に魔法の数が少なくてのう……他にもあることはあるのじゃが、かなり難しい……と言うか誰も発動できないような、伝説級の代物が多くての……」

 えっ。まじか。もう魔法ないの?いくらなんでも少なすぎじゃない?空間魔法ってもしかして、あんまり役に立たないんでは?いや、確かに強力なものは多いけど、汎用性がないというか……。一撃必殺!みたいなのには向いてそうだけど、ちょっと敵を弱らせる……、みたいなのには使えなさそうだし。

「空間魔法は、他の属性の魔法と比べて、強力ではあるが、魔力量の消費が激しい、と言われておってのう……。せっかく適性があっても、魔力不足で魔法が発動できない、と言うことが多々あるのじゃ。だからこそ、研究が進んでなくてのう……。ようやく使い手が現れた、と思ったら、大技ばっかり編み出したりしおるんじゃ」

 へえ。
 やっぱり、人間て大きな力を持ちすぎると、調子に乗っちゃうんだろうか?
 調子には乗らないまでも、自分の限界を試したい、と思うのは仕方のないことかもしれない。その所為で、基本的なことが、御座なりになってしまった、と。
 凄い迷惑な話だけど、まあ、どうしようもないよね。気持ちは分かるし、別に先人たちも先人になりたくてなってるわけじゃないし。それに頼ろうとすること自体が、間違っているのかもしれない。
 ないなら、ないで、俺たちで時代を切り開いていくぜ!みたいな?そんな精神が必要なのかもしれない。

「そう思うと、お主は恵まれておる。運が良かった、と言うか、取り合わせが良かった、と言うか……のう?」

 選ぶ言葉に困ったのか、助けを求めるように、こちらを見つめてきた。勿論、言いたいことは伝わっているので、頷いておく。

「なるほど……」

 折角、魔力が多くても、生活魔法しか使えなかったら、宝の持ち腐れだし、逆に、せっかくの希少属性持ちでも、魔力が少ないと残念な結果になる、と。

 言われてみればそりゃそうか。
 その点、うまく噛み合ってる俺は、筋がいいのかもしれない。
 世界に干渉できないけどな!!!

 どんだけいいことがあっても、この言葉だけですべてを台無しにできる。そんな素晴らしい言葉、世界に干渉できない。

 ……はあ。
 まあ、別にいいや。俺tueeeしたい訳じゃないし。いざと言うときに、なんかの助けにさえ、なってくれればそれでいい。

「さて、それで話を戻すがの。おぬしらに宿題を与えたいと思う」

 その言葉を聞いた瞬間、八束の背筋がピンと伸びた。面白い。いやね。確かに俺も宿題は好きじゃないけども。過剰反応にみえて、笑えてくる。

「自分たちの属性の魔法に、どんなものがあるか、考えてきて欲しいんじゃ」

 まじか。
 そりゃ、さっき、『俺達で時代を切り開くぜ!』とか言ってたけど、あれは冗談、と言うか、もう少し先の話だと思っていた。基礎的なものを学んだ後に、考えるなら、こう……それはそれでありかな、と思っていたのに。思っていたのに。のに。

「マジすか。面白そうっすね」

 なんでお前は楽しそうなんだよ。さっきまでの緊張感はどこに行ったんだ。
 ていうか、全然楽しめる要素なんてなくない?『ああ、それは難しいのう』って言われてるイメージしか想像できないんだけど。

「まあ、そう気負わんでもいいぞい。ただ、話を聞くだけだと、詰まらんじゃろう?仮に風変わりなことを言っても、それが学びの糧となるのじゃ」

 そういって、俺の肩を優しく、ぽん、と叩いてくれた。
 なるほど。
 失敗したならしたで、俺たちの勉強になるからいいのか。むしろきっかけ作りとして、ありかもしれない。
 失敗は成功の基、なんて言うしね。

 そう思うと、間違えることへの恐怖が少し和らいだ気がする。
 俺は、大きく息を吸い込んだ。

「ありがとうございます。力を抜いて頑張ってみたいと思います」

 俺が笑顔を浮かべると、ラルゴさんは、優しい表情で、ほむほむ、と頷いてくれた。
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