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生活魔法2
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……えーと?生活魔法……はその通りだろ、その隣には、身体強化、とある。
んん?
これも魔法の適正なんだよな?
だとすると鑑定石が検知しなかったのはおかしい。あれが偽物ではないことは俺の目で分かってるから、鑑定石の不備でないことは明らかである。
となると、……その後に適性が変わったのだろうか?
だとするといつ?
八束は、俺が倒れた後、何をしていたんだろう?
鑑定石で鑑定を行った後、フォルちゃんと出会って、追いかけごっこをした後、俺の部屋に来た、ってとこかな。その間に適性が変質したとは考えにくい。
となると、その後か……?
その後は、俺と能力について話して……、
あ。
ああ、もしかして、あれか?
俺の執事になったやつ。
そのお陰で、前衛系のスキルを会得したなら、魔法の適正が変化していても不思議はない。
で、八束はそれが俺に聞きたかった、と。
あー。なるほどね。それなら納得だ。
……自分のことじゃないから、すっかり忘れてた。
「そういえば、八束、身体強化の適正もあるって言ってなかったっけ?」
俺が言うと、八束は数秒間こちらを真顔で見つめた。その後、ふっと笑顔になると、俺の背中をバンバン叩く。
いったい。あまりの痛さに、げほげほとせき込んだ。
「そー言えばそうだった。すっかり忘れてたわ」
な、なぜそんなに力いっぱい叩くんだ……。非難するように、八束をにらむが、こちらを見ようともしない。そのうち、目が疲れるだけで無意味だと悟ったのでやめた。
「ふむ」
おじいちゃんは俺たちを眺めた後、
「そうか、身体強化か……」
と難しい顔をしてしまった。
「どうかしましたか?」
「いや、身体強化はわしの専門ではないからのう。知識はあるが、実践的なこととなると、騎士団に教えてもらった方がいいじゃろう」
あー。なるほど。
確かに、身体強化魔法って、魔法ならざる魔法、みたいなイメージはある。おじいちゃんみたいな人が、身体強化魔法使えてもなあ……って感じもするし。
「となると、教えることがのう……」
ない、という事か。
んー。それは俺ではどうしようもないなあ。八束が悪いってわけでもないし、まあ、俺の適正を言ったら、落ち込みも軽減されるといいなあ。空間魔法だから、おじいちゃんの専門外ってこともないだろう。俺が魔法に適性があるからこそ、八束に魔法の適正が現れなかったんだろうしね。
俺がおじいちゃんに声をかける前に、八束が切り出す。
「そもそも、生活魔法ってどんなのか教えてほしいんすけど」
「……と、言われてものう。そのままじゃしなあ」
「そのまま、って……」
八束はあきれたような声を出した。そりゃそうだ。その説明じゃ、何一つ分からないもんなあ。
でも、おじいちゃんの気持ちも分かるかもしれない。
数学が苦手な同級生に数学を教えるのと同じ感じなんじゃないかな?
基本的には分からないんだけど、たまに思わぬことを覚えていたり、知っていたりするから、何も知らない子供に教えるよりも却って、やりにくい、というケースね。
そう考えると、こちらから何が分からないか、示した方が、効率は良さそうだ。
「んー。じゃあ、火を起こせるんですか?」
お、ナイス対応。
俺みたいにごちゃごちゃ考えたわけではない。恐らく、今までいろんな人と話してきた感覚とか、経験から導き出した結論なのだろう。
うーん。羨ましい。こうやって頭の中でごちゃごちゃ考えるから、ワンテンポ遅れて人と会話しにくくなるんだよな。でも間違えるのが怖いから、考えてしまう。
羨ましいのは、何も考えずに話せること。ではなくて、直感的に答えが導き出せること。なんだよな。でも、それを会得するためには、いろんな人と話す必要があるわけで、今のやり方じゃ、うまく人と話せないから……と、このループである。
つまりどうしようもないんだよなあ……。
思わず、ため息を漏らすと、八束が何事か、というようにこちらを見てきたので、慌てて何でもない、という意味を込めて片手を振った。
「いや、火は起こせないのう。火の調節ならできるぞい」
「んー、その辺が良く分かんないんすけど、生活魔法って、色々できるんですよね?」
八束の言葉に、ぐっと詰まり、声を漏らすおじいちゃん。
「色々、とな。色々は出来ないかのぅ……」
おじいちゃんは、うーんと唸り、あごの髭を触り始めた。
「まず、物質を生み出すことは出来ぬ」
ふむ。なるほど?
八束は今の説明ではいまいち理解できなかったようで、眉にしわができている。
その様子を見たおじいちゃんは、さらに続けた。
んん?
これも魔法の適正なんだよな?
だとすると鑑定石が検知しなかったのはおかしい。あれが偽物ではないことは俺の目で分かってるから、鑑定石の不備でないことは明らかである。
となると、……その後に適性が変わったのだろうか?
だとするといつ?
八束は、俺が倒れた後、何をしていたんだろう?
鑑定石で鑑定を行った後、フォルちゃんと出会って、追いかけごっこをした後、俺の部屋に来た、ってとこかな。その間に適性が変質したとは考えにくい。
となると、その後か……?
その後は、俺と能力について話して……、
あ。
ああ、もしかして、あれか?
俺の執事になったやつ。
そのお陰で、前衛系のスキルを会得したなら、魔法の適正が変化していても不思議はない。
で、八束はそれが俺に聞きたかった、と。
あー。なるほどね。それなら納得だ。
……自分のことじゃないから、すっかり忘れてた。
「そういえば、八束、身体強化の適正もあるって言ってなかったっけ?」
俺が言うと、八束は数秒間こちらを真顔で見つめた。その後、ふっと笑顔になると、俺の背中をバンバン叩く。
いったい。あまりの痛さに、げほげほとせき込んだ。
「そー言えばそうだった。すっかり忘れてたわ」
な、なぜそんなに力いっぱい叩くんだ……。非難するように、八束をにらむが、こちらを見ようともしない。そのうち、目が疲れるだけで無意味だと悟ったのでやめた。
「ふむ」
おじいちゃんは俺たちを眺めた後、
「そうか、身体強化か……」
と難しい顔をしてしまった。
「どうかしましたか?」
「いや、身体強化はわしの専門ではないからのう。知識はあるが、実践的なこととなると、騎士団に教えてもらった方がいいじゃろう」
あー。なるほど。
確かに、身体強化魔法って、魔法ならざる魔法、みたいなイメージはある。おじいちゃんみたいな人が、身体強化魔法使えてもなあ……って感じもするし。
「となると、教えることがのう……」
ない、という事か。
んー。それは俺ではどうしようもないなあ。八束が悪いってわけでもないし、まあ、俺の適正を言ったら、落ち込みも軽減されるといいなあ。空間魔法だから、おじいちゃんの専門外ってこともないだろう。俺が魔法に適性があるからこそ、八束に魔法の適正が現れなかったんだろうしね。
俺がおじいちゃんに声をかける前に、八束が切り出す。
「そもそも、生活魔法ってどんなのか教えてほしいんすけど」
「……と、言われてものう。そのままじゃしなあ」
「そのまま、って……」
八束はあきれたような声を出した。そりゃそうだ。その説明じゃ、何一つ分からないもんなあ。
でも、おじいちゃんの気持ちも分かるかもしれない。
数学が苦手な同級生に数学を教えるのと同じ感じなんじゃないかな?
基本的には分からないんだけど、たまに思わぬことを覚えていたり、知っていたりするから、何も知らない子供に教えるよりも却って、やりにくい、というケースね。
そう考えると、こちらから何が分からないか、示した方が、効率は良さそうだ。
「んー。じゃあ、火を起こせるんですか?」
お、ナイス対応。
俺みたいにごちゃごちゃ考えたわけではない。恐らく、今までいろんな人と話してきた感覚とか、経験から導き出した結論なのだろう。
うーん。羨ましい。こうやって頭の中でごちゃごちゃ考えるから、ワンテンポ遅れて人と会話しにくくなるんだよな。でも間違えるのが怖いから、考えてしまう。
羨ましいのは、何も考えずに話せること。ではなくて、直感的に答えが導き出せること。なんだよな。でも、それを会得するためには、いろんな人と話す必要があるわけで、今のやり方じゃ、うまく人と話せないから……と、このループである。
つまりどうしようもないんだよなあ……。
思わず、ため息を漏らすと、八束が何事か、というようにこちらを見てきたので、慌てて何でもない、という意味を込めて片手を振った。
「いや、火は起こせないのう。火の調節ならできるぞい」
「んー、その辺が良く分かんないんすけど、生活魔法って、色々できるんですよね?」
八束の言葉に、ぐっと詰まり、声を漏らすおじいちゃん。
「色々、とな。色々は出来ないかのぅ……」
おじいちゃんは、うーんと唸り、あごの髭を触り始めた。
「まず、物質を生み出すことは出来ぬ」
ふむ。なるほど?
八束は今の説明ではいまいち理解できなかったようで、眉にしわができている。
その様子を見たおじいちゃんは、さらに続けた。
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