せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空

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影井のメイド2

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 影井のメイドの意見ががこの世界の世論、というのは無理があると思うけど、なんとなくの印象の感じ、メイドは一般人に近い感覚を持っていそう。特に、影井のメイドに関しては。
 対して、ネーロさんは騎士だから、今まで、多くの修羅場を乗り越えてきことだろう。そんな彼が、ごく普通の村人と同じ感覚を持っている……とは考えにくい。
 騎士特有の感覚……と言うべきなのか、そんなものがあるんだと思う。

 因みに、俺の印象だけで話すと、同じメイドでもフォルちゃんは村人より。アンジェラさんはネーロさん寄り。根拠は全くないので外れてても知りません。


 とまあ、それはともかく、そんな彼にとっては気絶なんて大したことがなかったのだろう。
 危うく騙されるとこだった。

「とりあえず、早くベッドにカゲイ様を寝かせないと」

 ずいっとネーロさんに向けて両手を突き出す、メイド。ネーロさんの動きが固まった。何がしたいのか分からないのだろう。大丈夫だ。俺も分からない。
 そんなネーロさんにいら立ちが募ったのか、声を荒げるメイド。

「カゲイ様をこちらに引き渡してください」

 なんですと。
 いくら影井がこの年頃の男の中では小さな方だからと言って、無理があるだろう。どう見たって、影井のほうが重たそうだし、こんなか弱い女の子が運べるとは思えない。

 ……もしかして、アンジェラさんみたいなパターンなのだろうか?見た目に反して、力持ち……という。それがメイドの必須スキルだったりする?

 だとすると、世の男の夢が壊れかねないのだが……。
 嫌でしょ。自分より力持ちな女の子なんて。
 ……勿論、そういうのが好きな人もいるだろうけど。俺からしたら、少数な気が……って、なんの話だよ。

 どう対応するつもりだろう?とネーロさんのほうを見てみると、彼は彼でアンジェラさんのほうを見ていた。了承するか否か、ネーロさんも判断しかねているのだろう。だから、アンジェラさんに助けを求めた、と。
 うん。俺もそれがいいと思う。アンジェラさんに任せておけば悪いことにはならないからね。

 アンジェラさんも視線に気が付いたようで、やれやれ、と肩を竦めると、メイドのほうを向いた。

「あなたの力では、カゲイ様を移動させることはできないわ。彼に任せておきなさい」

 あ、やっぱ無理なんだ……。
 正直、彼女まで力持ちじゃなくて少しほっとしている自分がいる。いや、彼女が力持ちだとしても、彼女が悪い訳じゃなくて、むしろ非力な俺が悪いんだけど……。その癖に中途半端なプライドはあるっていうね。
 ……今後の訓練で、筋肉が付くといいなあ。


「で、ですが……」

 悔しそうに顔を歪ませ、唇を噛みしめるメイド。

 というか、なんでそんなに影井を運びたいんだろう?
 メイドの矜持みたいなものなのだろうか?『私のご主人様の世話をするのは、私の仕事だ!ほかの誰にも渡さない!』みたいな。


 〝あの、男は信用ならない……。騎士団だか、何だか知らないけれど、気絶するまで訓練するなんて……ここまで連れてきてくれたのは、感謝してるけど、それとこれとは別。さっさとカゲイ様を悪の手からお救いしなければ……!〟

 ん。ん、ん?
 矜持なんて全く関係なかった。
 なるほど、ネーロさんを警戒してたのね。
 それにしても、警戒しすぎな気がするけど……。親でも殺されたのだろうか?ってくらいの敵意だ。

 向けられた本人は対して気にする様子もなく、のほほーん、としているけれど。……気づいてないのだろうか?
 いや、気付いてはいるみたいだ。
 これだけ警戒されていても、気にも留めないその図太さ。是非、見習いたい。

 これどう始末付けるんだ、とアンジェラさんを伺うと、彼女は二人を交互に見て、深いため息をついた。
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