せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空

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魔力を会得するための方法2

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「魔力を浴びる……なんだか嫌な予感がしてきた。影井なんかは、あからさまにほっとした顔をしているが、そこで気を抜いていいとは到底思えない、俺の方が間違っているのだろうか?

「因みに、純粋な魔力……というのは?」

 影井と違い、未だ顔を引き締めたまま、とりあえず、と言うように、ジャブのような質問をする八束。

 三人中、二人が警戒を解いていないのだから、多分警戒を解かないのが普通なのだろう。
 検証するのが、たったの三人だと、断定するには証拠不足だが、ここには三人しかいないし。
 今すぐ結論が出したい、となると、今回の結果を信じるしかない。
 つまり、俺の感覚はおかしくない、という事だ。

 そもそも、影井と八束だと、ちょっと天然で、変なところがある影井よりも、しっかりしている八束のほうが、常識人枠だし。

 そうなると心配なのが、影井だ。警戒心が弱すぎて、誰かになにかされそうで怖い。
 ここは友人として、しっかりと彼のことを見守る必要がありそうだ。

「魔力というのは大概、体外に出る際、他の物に変換していることが多い。
 例えば、火の玉ならそのまま、火に。回復魔法なら、癒しの力に。……と、言うようにな。
 しかしそれらを幾ら受けても、魔力を感じることは出来ない。まあ、当然だわな。火の玉を当てられても火傷して、回復魔法を受けたら傷がなくなるだけだ。しかし、純粋な、ただの魔力を受ける。そうすれば、魔力のまの字も知らないお前らも、ちっとは、なにか感じられるだろう。ってこった」

「それって、上手くいった前例は、勿論あるんですよね?」

 八束が胡散臭げな目をネーロさんに向ける。
 教えてもらう立場なのに、その態度は、なかなか失礼な気がするが、確かに、確認の必要があることではある。ネーロさんの言っていた〝気合が必要〟の意味が、成功するかも分からない方法で訓練を行うこと。だとしたら目も当てられないからね……。実験台になる気はさらさらない。

「勿論、前例はある。どれだけ時間が掛かるかは、個人差だが、いつかは必ず、魔力を得ることが出来るようになる。それだけは断言しよう」

 俺が、ほっと息を吐くと、じろり、と、ネーロさんに見られた。まだ話は終わっていないぞ、と言うかのように。なんとなく、八束のほうを見ると、飽きれた顔をされた。
 あれ、これってもしかして、さっき、俺が影井に思ったこと、そのまま、八束が俺に対して思われてない?

 少し力を込めて、八束を見る。

 〝コイツのことは俺が面倒見てやらないとな……〟

 うわ。やっぱ思われてた。てか、聞くんじゃなかった。凄い恥ずかしい。五歳児の少年が、生まれたばかりの弟に対してお兄さんぶってる……みたいな感じになってるじゃん。俺。あー、恥ずかしい。

 思わず顔を覆ってしまったけれど、傍から見たら可笑しな奴に見えるな……。そっと、手を外すと、ネーロさんが見えた。どうも、不審には思われていないようだ。
 そのまま、さも、目がかゆくて擦っていたかのように、手をもぞもぞと動かす。

 ……ふう。今後は軽率な行動をしないようにしよう。無闇矢鱈と人の心を覗かない。これ、本当大事。気を抜いて、ふと疑問を覚えると、すぐに能力が出しゃばってくるからなあ。気を抜いてなければ、そんなことはないのだけれど。

 まだ、この能力になれていない所為か、すぐ気を抜いてしまうからなあ……。
 小さい頃からこの能力があり、慣れていたらいたで、能力の性質的に、人間不信になってそうだけど。それに比べたら、今の方がいいか。

「しかし、魔力と言うのは人それぞれ……いや、それこそ、この世に存在する、ありとあらゆる魔力を持つもの、それぞれが違う、と言われているんだ。魔力の形に何一つとして同じ物はない……というのは有名な言葉だな。無論それに対する反論もあるが、俺は、この説を信じている」
「それは何故でしょう?」

 間髪を入れずに質問をすると、ネーロさんは一瞬驚いた顔を見せたが、すぐに、満足そうに頷いた。

「そうじゃないと説明がつかないからだ。結論から言わせてもらうと、他人から純粋な魔力を与えられた者は、激痛を伴う。これは、合わない魔力を無理矢理、体内に取り込んだからだ、と俺は思っている。……とまあこの辺はどうでもいいか。何が言いたいかというと、魔力を流し込まれるのは、とんでもなく痛いって事だな」
「え?どれくらい痛いんですか?」
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