せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空

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魔力を会得するための方法1

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「この世界の人間なら生活する中で、少しずつ魔力に触れていって、自然と魔力を感じられるようになる。
 それを神への祈りやら、修行やらでより魔力を精密にコントロール出来るようにしていく……んだが、お前らは魔力がない世界からやってきた。
 だからこそ、まずは魔力の存在そのものを体に認知させなきゃならねえ。

 一番いいのはこの世界の住民と同じように、自然と魔力を感知できるまで待つ事だ。……が、」

 そう言って、ネーロさんはこちらを見た。
 慌てて俺は、そんなの待ってらんねーよみたいな感じの不満顔をしてみる。なってるかどうかは知らないけど。

 俺の顔を見て、ネーロさんは、はぁ。とため息をついた。どうやら企みは成功したらしい。
 ネーロさんに気付かれないように、小さくホッと息を吐いて気付く。
 普段、ため息なんてつかれたら、何か相手に不快な気持ちになるようなこと言ったっけ……?と不安になるけれど、今はその真逆で、かなり安心した。
 ……何とも不思議な状況だ。

「さっさと覚えたそうな奴がいるから、今回はこの方法はとらない。次に女神様に祈るって方法もあるにはあるが……これは俺が気に食わないから、パスな」
「女神……様?に祈ったら、魔力が感知できるようになるんですか?」

 おずおずと影井が尋ねる。確かに、自然に魔力を感知できるようになるまで待つよりも、祈るだけでいいなら、そっちの方がいい。
 楽そうだし、時間短縮にも繋がる。

 まあ、いくら効率が良くても、俺はやらないけど。
 そりゃ効率的なのは魅力的だ。しかし、女神ってところがなあ……。女神への印象が悪くてあまり気が進まない。八束も同じ気持ちだと思う。
 そんな偏見のない影井の目は、期待に満ちている……ようにも見えなくはない。

「そうだな。と言うか女神に頼めば基本的に何でも出来る……可能性がある」
「え、じゃあ、女神様に頼めば僕も強くなれるって事ですか?」
「女神様の気が向けばな」
「……え?気が向いたら?気が向いたらってどういう事なんですか?」

 影井は訳が分からなかったのか、目を大きく瞬かせる。

「どういうこともなにも、そのままの意味だ。信仰深い神父が死にかけの子供を思い、どれだけ必死に願っても、子供は回復しなかった。しかしその隣で祈った、悪人の下種な願いはかなった。……どう考えても可笑しいだろう?」

 ネーロさんは鼻で笑う。それは、何処にいるともしれない女神に向けられているように思えた。

「それって、どこかで聞いた話なんですか?」
「あー。まあ、そんなところだ」

 あれ?なんだか、歯切れが悪い。何かあるのだろうか……?
 口ぶりからしても、誰かに聞いた話、にしては感情が篭りすぎていた……気がしなくもない。

 ……もしかして、彼が経験した話だった、のかな……?
 だとするなら、辻褄が合う。
 彼は嘘をつくのが苦手そうだし、だからこそ歯切れが悪くなった……と。まったく同じ内容だとは限らないけど、似たようなことを経験した可能性は高い。うん。
 彼自身が、ただ言い伝えを聞いただけで、女神をここまで嫌うように思えないってのも含めて。

 まあ、間違ってるかもしれないけど、答えあわせをしようって気にはなれないかな。確かに気にはなるけど、それだけだ。
 ただの好奇心で、人の過去を探る……なんてことはしたくない。それが嫌な過去で、本人が隠そうとしてるなら尚更。
 そこまで知りたいことでもないしね。
 と言うか、仲良くなれば、そのうち教えてくれるだろうし。

「それじゃあ、他の方法はどんなものなんですか?」

 何かを思い出すように、黙り込んでしまったネーロさんをこちらを引き戻すように、八束が遠慮がちに手を上げながら、言う。

「最後の方法が、気合いだ」
「え?(は?)」

 俺たちは、いきなり出てきた精神論に、思わず、揃って声を上げた。

「気合いと言っても、気合いだけで魔力を得る訳では無い。ただ、他の方法よりも、気合いが必要な方法だ、ということだな」

 ネーロさんは不敵にニヤリ、と笑う。
 え、なにそれ。そんなにやばい方法なのか……。
 思わず、ひくり、と眉を動かしてしまう。隣を見てみると、影井なんかは、今から自らを襲いかかるであろう出来事を想像して、両手で自分の体を抱きしめていた。
 対する八束は通常運転だったけれど、それでも少し、顔が引き攣っているのが分かる。俺じゃなきゃ気が付かなかったね。

 二人の様子を見て、少し落ち着いた気がした。まあ、大丈夫だろう。二人もいることだし。
 そもそもここでやめる、という選択肢がない以上はやるしかないのだ。

「それで、その方法というのは……?」

 俺が尋ねると、誰かが、ゴクリ、と唾を飲み込む音が聞こえた気がした。影井か、八束か……いや、もしかしたら、自覚がなかっただけで、俺だったのかもしれない。

 よく聞いてくれた、と言いたげな表情で頷くネーロさん。

「方法は簡単だ。純粋な魔力を体に浴び続ければいい」

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