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影井の夢……?2
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「私よりも、貴方を雑に扱うことを反対していた人にお礼をすべきじゃないんですか?」
「神谷君とか、白井さんとかはなんていうか、話しかけにくいんだよね……」
影井はぎゅっと身を縮こませる。
まあその気持ちは分からなくもない。彼らはなんというか、キラキラしてるんだ。青春してると言うか、爽やかすぎると言うか……。
八束もパッと見はそんな感じだけど、中身は別物だからね。気兼ねなく話すことが出来る。
「あ、ちゃんとお礼は言ったけどね。
柏岡君は食堂に来なくて、どうしようかと思ってたら、ここで会えてすごく助かった」
「そんなに礼がしたかったなら、私の部屋にこればよかったんじゃないですか?」
部屋ならほぼ確実に会えるし。
「寝てるかもしれないし、部屋に行ったら迷惑になるかな、と思って……」
なるほど。それはいい心がけだ。部屋に訪問してきた先生以外のヤツらにも聞かせてやりたい。いや、心配してくれたのは嬉しいんだけどね?勧誘とか隠れんぼとかはまた別の機会にして欲しかった。
「それに、他の人の部屋に行くのはなんだか緊張するしね」
恥ずかしそうにする影井に激しく同意した。分かる。例え仲のいい八束の部屋だとしても、行くのには勇気がいる。だからまあ、全く来てくれないよりは、来てくれる方が楽ではあるんだけどね。まあ。
やはり、影井とは気が合う。口には出さないけど。
話も一段落したのでシャワーで泡を落とす。丁度いいぐらいのお湯の温度だけど、これも魔法の力なのだろう。凄い。
桶にお湯を貯め、体を洗ったタオルを洗っていると、隣の影井が体を洗う時に使う(らしい)金属を見つめ固まっていた。
そのまま放置しておくのも薄情だと声をかける。
「どうしたんですか?」
いや、どうしたのかはだいたい想像がつくけど、一応聞いてみる。
「これどう使うのかな?」
「……タオル使います?」
洗い終わったタオルを手渡すと、嬉しそうにぎゅっと握った。
「ありがとう。凄い助かる……お礼に……あ、そうだ。頭を洗ってあげようか?」
タオルも金属も置いて、俺の背後に立つ。
俺はばっと振り返った。
頭だけは勘弁して欲しい。人に頭触られるとゾワゾワする。頭をマッサージしてもらうと気持ちがいいとか言っている連中の気持ちがさっぱり分からない。
床屋や美容院にも行けないから、髪は自分で適当に切っているぐらいだと言うのに……。
「そんなに心配そうに見なくても大丈夫だよ。僕、こう見えて頭を洗うの上手だから。プロ並みって言われたことあるし……」
誰から言われたんだよ。っていうかこう見えてってなんだ。頭を洗うのに下手そうな見た目とか、上手そうな見た目とかあるのか?それに上手下手の問題ではなく、触られたくないんだよ。と怒鳴りたい気持ちをぐっと堪え、笑顔を作る。引きつった笑いになってないといいんだけれど。
「それぐらい自分で洗いますから……」
「えー。じゃあ、そうだ!背中を洗うよ」
お前はさっき何を見ていたんだ。俺は体を洗ったばかりだぞ?
「い、いや、さっき洗ったし……」
「じゃあ頭」
「いや、それだけは勘弁してください……」
「じゃあ背中」
どんだけ俺を洗いたいんだ。いや、いいことをされたら、お礼をしたいという気持ちは分かるけど……いや、やっぱりわからない。ここまで俺が嫌がっているのだから、それ以上ゴリ押しはしないんじゃないだろうか?お礼どころか嫌がらせになりかねないし。
このまま押し問答をしている訳にもいかないので、背中を洗ってもらうことにする。無限ループって怖いよね。
「じゃあ、背中を洗うね」
影井は嬉しそうにタオルを泡立てている。
背中をごしごしと擦られるが、痛くはない。背中を洗うのに上手か下手かはよく分からないけど、まあ下手くそではないんんじゃないかな。
背中を洗ってもらいながら、ふと我に返る。何故俺は二回も背中を洗っているのだろうか……。いや、洗ってるのは俺じゃないんだけど。
「加減はどうかな?」
心なしか声が弾んでいるように思う。
「うん。良いと思いますよ」
「それは良かった。風呂で背中の流しあいってしてみたかったんだ」
それはあれか?俺に洗えって事か?
いや、そういうことではないと思うけど、何故あんなにゴリ押ししてきたのかは分かった気がする。影井って意外とわがままなのかもしれない。まあ、大したことではないし、影井が嬉しそうならそれでいいか。
「じゃあ、今度は私が洗ってあげましょうか?」
「え?本当に?」
影井は目をキラキラと輝かせてる。そんなにやりたかったのか。まあ、あんなにゴリ押ししてたぐらいだしな……。
「いいですよ」
そう言って、俺は背中の泡を流した。
「神谷君とか、白井さんとかはなんていうか、話しかけにくいんだよね……」
影井はぎゅっと身を縮こませる。
まあその気持ちは分からなくもない。彼らはなんというか、キラキラしてるんだ。青春してると言うか、爽やかすぎると言うか……。
八束もパッと見はそんな感じだけど、中身は別物だからね。気兼ねなく話すことが出来る。
「あ、ちゃんとお礼は言ったけどね。
柏岡君は食堂に来なくて、どうしようかと思ってたら、ここで会えてすごく助かった」
「そんなに礼がしたかったなら、私の部屋にこればよかったんじゃないですか?」
部屋ならほぼ確実に会えるし。
「寝てるかもしれないし、部屋に行ったら迷惑になるかな、と思って……」
なるほど。それはいい心がけだ。部屋に訪問してきた先生以外のヤツらにも聞かせてやりたい。いや、心配してくれたのは嬉しいんだけどね?勧誘とか隠れんぼとかはまた別の機会にして欲しかった。
「それに、他の人の部屋に行くのはなんだか緊張するしね」
恥ずかしそうにする影井に激しく同意した。分かる。例え仲のいい八束の部屋だとしても、行くのには勇気がいる。だからまあ、全く来てくれないよりは、来てくれる方が楽ではあるんだけどね。まあ。
やはり、影井とは気が合う。口には出さないけど。
話も一段落したのでシャワーで泡を落とす。丁度いいぐらいのお湯の温度だけど、これも魔法の力なのだろう。凄い。
桶にお湯を貯め、体を洗ったタオルを洗っていると、隣の影井が体を洗う時に使う(らしい)金属を見つめ固まっていた。
そのまま放置しておくのも薄情だと声をかける。
「どうしたんですか?」
いや、どうしたのかはだいたい想像がつくけど、一応聞いてみる。
「これどう使うのかな?」
「……タオル使います?」
洗い終わったタオルを手渡すと、嬉しそうにぎゅっと握った。
「ありがとう。凄い助かる……お礼に……あ、そうだ。頭を洗ってあげようか?」
タオルも金属も置いて、俺の背後に立つ。
俺はばっと振り返った。
頭だけは勘弁して欲しい。人に頭触られるとゾワゾワする。頭をマッサージしてもらうと気持ちがいいとか言っている連中の気持ちがさっぱり分からない。
床屋や美容院にも行けないから、髪は自分で適当に切っているぐらいだと言うのに……。
「そんなに心配そうに見なくても大丈夫だよ。僕、こう見えて頭を洗うの上手だから。プロ並みって言われたことあるし……」
誰から言われたんだよ。っていうかこう見えてってなんだ。頭を洗うのに下手そうな見た目とか、上手そうな見た目とかあるのか?それに上手下手の問題ではなく、触られたくないんだよ。と怒鳴りたい気持ちをぐっと堪え、笑顔を作る。引きつった笑いになってないといいんだけれど。
「それぐらい自分で洗いますから……」
「えー。じゃあ、そうだ!背中を洗うよ」
お前はさっき何を見ていたんだ。俺は体を洗ったばかりだぞ?
「い、いや、さっき洗ったし……」
「じゃあ頭」
「いや、それだけは勘弁してください……」
「じゃあ背中」
どんだけ俺を洗いたいんだ。いや、いいことをされたら、お礼をしたいという気持ちは分かるけど……いや、やっぱりわからない。ここまで俺が嫌がっているのだから、それ以上ゴリ押しはしないんじゃないだろうか?お礼どころか嫌がらせになりかねないし。
このまま押し問答をしている訳にもいかないので、背中を洗ってもらうことにする。無限ループって怖いよね。
「じゃあ、背中を洗うね」
影井は嬉しそうにタオルを泡立てている。
背中をごしごしと擦られるが、痛くはない。背中を洗うのに上手か下手かはよく分からないけど、まあ下手くそではないんんじゃないかな。
背中を洗ってもらいながら、ふと我に返る。何故俺は二回も背中を洗っているのだろうか……。いや、洗ってるのは俺じゃないんだけど。
「加減はどうかな?」
心なしか声が弾んでいるように思う。
「うん。良いと思いますよ」
「それは良かった。風呂で背中の流しあいってしてみたかったんだ」
それはあれか?俺に洗えって事か?
いや、そういうことではないと思うけど、何故あんなにゴリ押ししてきたのかは分かった気がする。影井って意外とわがままなのかもしれない。まあ、大したことではないし、影井が嬉しそうならそれでいいか。
「じゃあ、今度は私が洗ってあげましょうか?」
「え?本当に?」
影井は目をキラキラと輝かせてる。そんなにやりたかったのか。まあ、あんなにゴリ押ししてたぐらいだしな……。
「いいですよ」
そう言って、俺は背中の泡を流した。
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