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メイドさんと仲良くなりました2
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「ですが、私は出来る限りお二人のお役に立ちたいと思っております。何か困ったことがあれば、ぜひ言ってください」
「じゃあさ、こいつが職業のことは誰にも言わないでって言ったら、本当に誰にも言わないわけ?」
「言いません」
アンジェラさんは顔色ひとつ変えずに答えた。
「あれ、王様には言わなくていいんですか?」
「私が仕えているのは国王陛下ではなく、カシオカ様ですので」
「でも柏岡のメイドになれって言ったのは王様だろ?」
「いえ、違います」
八束はん?と顰め面をし、アンジェラさんは視線を落とした。
「私は元々、ルイーザ様の侍女でした。身寄りのなかった私は彼女に拾われたのです。彼女のおかげでそれまでの厳しい暮らしは一変しました。
今までろくに取れなかった食事はお腹いっぱい食べられるようになり、ボロボロな布切れ同然の服は、綺麗で可愛い服に、何も知らなかった私は、色々なことを教えてもらいました。
それに何より、ルイーザ様は私のようなものにも優しくしてくれました。それがとても嬉しかった。
だから私は彼女に恩返しがしたかったのです。ですが彼女は、『恩返し……ですか?そんな大層なことはしてないと思いますが……ですが、そうですね、私に感謝をしているなら、その分他の人に優しくしてあげてください』と仰いました。
それではルイーザ様に対する恩返しにはならないのではないでしょうか?と尋ねると、
『アンジェラが優しくした人もアンジェラに優しくされた分、ほかの人に優しくする。そうやって優しさの輪が広がっていくと世界は平和になると思いませんか?』
ちょっと夢物語かもしれないけれど、と言ってはにかみました。
確かに、そう上手くは行くとは到底思えません。ですが、私もルイーザ様と共に平和な世界を目指してみたい、とも思ったのです。
その後、ルイーザ様が、無理矢理召喚される勇者様について心を痛めている、と知って……気付いた時には専属メイドに立候補していました。
そして、突然召喚され戸惑う勇者様方を見ていると、何故か昔の私と重なって見えたのです。
ならば、私は勇者様方にとってのルイーザ様になれるかもしれない、そう思いました。だから出来る限りのことは協力はしたいんです」
嘘は言ってないようだ。
うーん、なるほど。姫様に助けられた人だったのか……。
確かにあの姫様なら孤児とか拾ってそうだし、拾われたアンジェラさんがそういう思考になるのは理解出来る。
これはアンジェラさんなりの歩み寄りなのだろう。これから俺達と信頼関係を結ぶ為の。
ならば俺だってそれに応えたい。アンジェラさんはきっと信用できる人だ。大丈夫だろう。
「私の本当の職業は観察者、と言うんです」
俺の言葉にアンジェラさんは目を見開き、考え込んだ。
「観察者……?聞いたことの無い職業ですね……」
やはり、この世界でも珍しい職業のようだ。とりあえず、ミューさんから聞いた説明をそのまま伝える。
「なんでも見えるかわりに、世界に干渉できない、と……なかなか大変な能力ですね」
「だから、できるだけ隠したかったんです」
「人間疚しいことの一つや二つはありますからね。それを知られるかもしれない、と皆様がカシオカ様を避ける可能性は確かにあります」
「アンジェラさんは気持ち悪いと思わないのか?」
真実を言ったからか、少し嬉しそうな顔のアンジェラさんを八束はじっと見た。
「何故でしょう?」
心底不思議そうに八束を見返す。その様子に八束は少し言いにくそうに口ごもった。
「いや、ほら、覗きとか……?」
「覗き……?ああ、なるほど。特には」
俺が覗きをしないと信用していると言うよりは、覗かれてもなんとも思わない、と言うような口ぶりで言う。これはどういうことだろう……?と思ったが、心は読まない。
八束は拍子抜けしたように、あ、そう。ならいいんだけど……と呟いた。
「っていうか、八束はいつ帰るの?」
ふと思い浮かんだ疑問。
フォルちゃんがあちこち探し回ってるのが容易に想像出来る。可哀想に……。
「あー、それなんだけど、俺今日からここにお邪魔するわ」
「なにゆえ」
衝撃の事実を述べられ、謎に昔の言葉になる。
「メイドから逃げる為だ」
「いや、それは分かるけど……どうやって説明するんだよ」
「アンジェラさんの弟子入りしたってことにしておこう」
いいよな?とアンジェラさんに聞く八束。
「ええと、イマイチ状況が飲み込めないのですが……」
戸惑ったように、視線を移動させるアンジェラさん。
「俺のメイドが求婚してくるんだけど、それから逃げたいから、アンジェラさんに弟子入りしたってことにしてくれない?丁度、俺の職業執事だし……」
「なるほど。分かりました」
「いや、ちょっと待ってよ、え?そんなことって許されるの?」
「大丈夫だと思いますよ。もっといい扱いをしろ、と言っている訳ではありませんから」
えー……?まあ、王国側からしたら、使える部屋がひとつ増えるし、メイドも1人浮くからむしろいい事なのか……。
「いや、でもそうなると、フォルちゃんはどうなるんですか?」
「彼女は今まで通り、この城で働いてもらうことになりますね」
あ、別に解雇される訳では無いのか。ならいいのか?同じ城にいる訳だから、アタックするのも簡単だろうし。うん、分からん。まあ、いいだろ。
「じゃあよろしくお願いします。アンジェラさん。いや、師匠!」
「無理して敬語を使わなくてもいいんですよ……。あと師匠はやめてください」
メイドから逃げられて、ご機嫌な八束と、苦笑いをするアンジェラさんは固い握手を交わした。
「じゃあさ、こいつが職業のことは誰にも言わないでって言ったら、本当に誰にも言わないわけ?」
「言いません」
アンジェラさんは顔色ひとつ変えずに答えた。
「あれ、王様には言わなくていいんですか?」
「私が仕えているのは国王陛下ではなく、カシオカ様ですので」
「でも柏岡のメイドになれって言ったのは王様だろ?」
「いえ、違います」
八束はん?と顰め面をし、アンジェラさんは視線を落とした。
「私は元々、ルイーザ様の侍女でした。身寄りのなかった私は彼女に拾われたのです。彼女のおかげでそれまでの厳しい暮らしは一変しました。
今までろくに取れなかった食事はお腹いっぱい食べられるようになり、ボロボロな布切れ同然の服は、綺麗で可愛い服に、何も知らなかった私は、色々なことを教えてもらいました。
それに何より、ルイーザ様は私のようなものにも優しくしてくれました。それがとても嬉しかった。
だから私は彼女に恩返しがしたかったのです。ですが彼女は、『恩返し……ですか?そんな大層なことはしてないと思いますが……ですが、そうですね、私に感謝をしているなら、その分他の人に優しくしてあげてください』と仰いました。
それではルイーザ様に対する恩返しにはならないのではないでしょうか?と尋ねると、
『アンジェラが優しくした人もアンジェラに優しくされた分、ほかの人に優しくする。そうやって優しさの輪が広がっていくと世界は平和になると思いませんか?』
ちょっと夢物語かもしれないけれど、と言ってはにかみました。
確かに、そう上手くは行くとは到底思えません。ですが、私もルイーザ様と共に平和な世界を目指してみたい、とも思ったのです。
その後、ルイーザ様が、無理矢理召喚される勇者様について心を痛めている、と知って……気付いた時には専属メイドに立候補していました。
そして、突然召喚され戸惑う勇者様方を見ていると、何故か昔の私と重なって見えたのです。
ならば、私は勇者様方にとってのルイーザ様になれるかもしれない、そう思いました。だから出来る限りのことは協力はしたいんです」
嘘は言ってないようだ。
うーん、なるほど。姫様に助けられた人だったのか……。
確かにあの姫様なら孤児とか拾ってそうだし、拾われたアンジェラさんがそういう思考になるのは理解出来る。
これはアンジェラさんなりの歩み寄りなのだろう。これから俺達と信頼関係を結ぶ為の。
ならば俺だってそれに応えたい。アンジェラさんはきっと信用できる人だ。大丈夫だろう。
「私の本当の職業は観察者、と言うんです」
俺の言葉にアンジェラさんは目を見開き、考え込んだ。
「観察者……?聞いたことの無い職業ですね……」
やはり、この世界でも珍しい職業のようだ。とりあえず、ミューさんから聞いた説明をそのまま伝える。
「なんでも見えるかわりに、世界に干渉できない、と……なかなか大変な能力ですね」
「だから、できるだけ隠したかったんです」
「人間疚しいことの一つや二つはありますからね。それを知られるかもしれない、と皆様がカシオカ様を避ける可能性は確かにあります」
「アンジェラさんは気持ち悪いと思わないのか?」
真実を言ったからか、少し嬉しそうな顔のアンジェラさんを八束はじっと見た。
「何故でしょう?」
心底不思議そうに八束を見返す。その様子に八束は少し言いにくそうに口ごもった。
「いや、ほら、覗きとか……?」
「覗き……?ああ、なるほど。特には」
俺が覗きをしないと信用していると言うよりは、覗かれてもなんとも思わない、と言うような口ぶりで言う。これはどういうことだろう……?と思ったが、心は読まない。
八束は拍子抜けしたように、あ、そう。ならいいんだけど……と呟いた。
「っていうか、八束はいつ帰るの?」
ふと思い浮かんだ疑問。
フォルちゃんがあちこち探し回ってるのが容易に想像出来る。可哀想に……。
「あー、それなんだけど、俺今日からここにお邪魔するわ」
「なにゆえ」
衝撃の事実を述べられ、謎に昔の言葉になる。
「メイドから逃げる為だ」
「いや、それは分かるけど……どうやって説明するんだよ」
「アンジェラさんの弟子入りしたってことにしておこう」
いいよな?とアンジェラさんに聞く八束。
「ええと、イマイチ状況が飲み込めないのですが……」
戸惑ったように、視線を移動させるアンジェラさん。
「俺のメイドが求婚してくるんだけど、それから逃げたいから、アンジェラさんに弟子入りしたってことにしてくれない?丁度、俺の職業執事だし……」
「なるほど。分かりました」
「いや、ちょっと待ってよ、え?そんなことって許されるの?」
「大丈夫だと思いますよ。もっといい扱いをしろ、と言っている訳ではありませんから」
えー……?まあ、王国側からしたら、使える部屋がひとつ増えるし、メイドも1人浮くからむしろいい事なのか……。
「いや、でもそうなると、フォルちゃんはどうなるんですか?」
「彼女は今まで通り、この城で働いてもらうことになりますね」
あ、別に解雇される訳では無いのか。ならいいのか?同じ城にいる訳だから、アタックするのも簡単だろうし。うん、分からん。まあ、いいだろ。
「じゃあよろしくお願いします。アンジェラさん。いや、師匠!」
「無理して敬語を使わなくてもいいんですよ……。あと師匠はやめてください」
メイドから逃げられて、ご機嫌な八束と、苦笑いをするアンジェラさんは固い握手を交わした。
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