せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空

文字の大きさ
上 下
15 / 115

メイドさんとの会話。若しくは俺が気を失った後について1

しおりを挟む
「カシオカ様が倒れたことで、場は騒然となりました。
 慌てて治療師を呼び、診断された結果〝魔力欠乏症〟だということがわかります」

 あれ、この話長くなるのかな。長くなるならアンジェラさんに座ってくださいっていえば良かったかな……。その辺どうなんだろう?メイドさんは座っちゃいけない、とか決まりはあるのだろうか?……分からない。こういう疑問だとスキルはうんともすんとも言わないしなあ。
 本当はその話すら要らないんだが、俺はこのメイドさんのことよく分からないし、能力のことを全て話すわけにもいかない。
 とりあえず知らないふりをしよう。

「あの、魔力欠乏症……?ってなんですか?」

 アンジェラさんはキョトンとした後、あ、あぁ、と頷いた。

「失礼しました。異世界には魔力が存在しないんでしたね。魔力欠乏症というのは、魔力を限界まで消費してしまった時になる症状のことです。
 倦怠感から始まり、頭痛、立ちくらみ……様々な症状を引き起こし、最悪の場合は気絶してしまいます」

 うん。知ってる。

「異世界から来たばかりの貴方が何故、魔力を扱えるのか、不思議ではあるのですが……」

 アンジェラさんは不思議そうな顔をする。ええと、どう誤魔化そうか。消費魔力がそこそこ多くて、俺の能力と似たようなスキルはないだろうか……。
 とか思ってたら文字が出てきた。便利すぎかよ。

 スキル〝鑑定〟か。
 消費魔力は……才能による?なんじゃそれ。
 あーでもこのスキル凄く良い。対人には使えないってところが特に。
 鑑定魔法よりも魔力量は少なくて済むらしい。鑑定魔法なんてものがあるのか。
 まあ、これでいいだろう。……多分。
 クラスメイトに職業聞かれた時の対策はそのうち考えるとして……。

「鑑定というスキルを使ったんです」
「なるほど。鑑定なら、この世界に召喚されてばかりで不安だったカシオカ様が何度も使用してしまうのも理解できます。けれど、今度からはくれぐれも無理はなさらないでくださいね」

 心配そうにこちらを見るアンジェラさん。
 心の底から心配してくれているようだ。まだ信用は出来ないけど、悪い人ではないのかもしれない。

「然し、異世界に来たばかりだと言うのに、スキルを使いこなせるとは……。流石、勇者様ですね。」
 感心したように頷く。
 てっきりスキルって生まれつき持っている物だと思っていたけど、違うのか……?いや、そもそもスキルってなんなんだ?わりと重要なことを聞くのを忘れていた気がする。まあ、後で読んでおこう。

「その後、カシオカ様はここのベッドに運ばれました。魔力欠乏症を治す一番の方法は、安静にすること、ですからね」
「他の皆はどうしたんですか?」
「他の勇者の皆様は引き続き能力検査を行うこととなりました。その結果、カミヤ様は勇者、シライ様は聖女であると推測されました」

 ああ、その結果には納得できる。神谷は見るからに主人公という感じだし、白井さんは控えめな性格の美少女だ。優しい性格らしくよく笑顔を男どもに向けては虜にしているんだとかなんとか。男人気があるからと言って女から嫌われているという訳でもないらしい。誰からも愛されるキャラってことだな。
 ただ……。

「何故その二人だけ、名指しで説明を……?」
「……それはこのお二人の能力がずば抜けていたからです。それだけではなく、勇者や聖女という職業はとても珍しく強力なものだと伝承に残されています」
「なるほど。そういうことでしたか」

 アンジェラさんは俺の淡白な反応に不満を持ったらしく、眉をピクリと動かした。そんな顔をされても、興味がないから、大きなリアクションは出来ない。寧ろ自分よりも恵まれた者の話を聞くと何とも言えない気持ちになる。人間皆平等なんて言葉、嘘だよな……。
 まあ、一つ、ついでに聞いておく。

「他に強力な能力を持ってる人はいませんでしたか」
「ミヨシ様、チュウゼンジ様の力が強かったようです」
「なるほど……。ありがとうございます」

 過ぎた力は身を滅ぼすという。
 自分の身を滅ぼす分には別に構わない。いや構わなくはないけど、どうにもできないし、巻き込まれてポックリ逝きましたなんてシャレにならない。だから極力拘わらないほうがいいだろう。
 まあ、力の強い人に限らず、クラスメイト全員に言えることかもしれないが。

「それから、各自部屋と専属のメイドが与えられました。その後は自由行動です」
「自由行動って……多分それ私の所為ですよね……なんかすいません」
 多分、他にやりたいことや説明したいこともあっただろう。然し俺が倒れてしまったせいで、出来なくなってしまったのだ。大変、申し訳ない……。

 俺が謝るとアンジェラさんは意外そうな顔をした後、クスリと笑った。
「いえ、すいません。
 自由行動はカシオカ様の所為ではないと思いますよ?この世界に来たばかりで取り乱している方も少なくなかったですから、落ち着く為にも勇者様全員に必要な時間だったかと。あまり急いでもいいことはありませんし」

 それは……。言われてみれば確かにそうだ。
 今まで感じていた罪悪感が嘘のようになくなっていく。
 うーん。このメイド、出来るメイドだ。手のひらで転がされてる気がしなくもないけど。
 なんとなくもやもやした気分の中、ふと気になったことを口に出してみる。

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

スキル【アイテムコピー】を駆使して金貨のお風呂に入りたい

兎屋亀吉
ファンタジー
異世界転生にあたって、神様から提示されたスキルは4つ。1.【剣術】2.【火魔法】3.【アイテムボックス】4.【アイテムコピー】。これらのスキルの中から、選ぶことのできるスキルは一つだけ。さて、僕は何を選ぶべきか。タイトルで答え出てた。

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

ゴミスキルでもたくさん集めればチートになるのかもしれない

兎屋亀吉
ファンタジー
底辺冒険者クロードは転生者である。しかしチートはなにひとつ持たない。だが救いがないわけじゃなかった。その世界にはスキルと呼ばれる力を後天的に手に入れる手段があったのだ。迷宮の宝箱から出るスキルオーブ。それがあればスキル無双できると知ったクロードはチートスキルを手に入れるために、今日も薬草を摘むのであった。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

異世界無宿

ゆきねる
ファンタジー
運転席から見た景色は、異世界だった。 アクション映画への憧れを捨て切れない男、和泉 俊介。 映画の影響で筋トレしてみたり、休日にエアガンを弄りつつ映画を観るのが楽しみな男。 訳あって車を購入する事になった時、偶然通りかかったお店にて運命の出会いをする。 一目惚れで購入した車の納車日。 エンジンをかけて前方に目をやった時、そこは知らない景色(異世界)が広がっていた… 神様の道楽で異世界転移をさせられた男は、愛車の持つ特別な能力を頼りに異世界を駆け抜ける。 アクション有り! ロマンス控えめ! ご都合主義展開あり! ノリと勢いで物語を書いてますので、B級映画を観るような感覚で楽しんでいただければ幸いです。 不定期投稿になります。 投稿する際の時間は11:30(24h表記)となります。

不登校が久しぶりに登校したらクラス転移に巻き込まれました。

ちょす氏
ファンタジー
あ~めんどくせぇ〜⋯⋯⋯⋯。 不登校生徒である神門創一17歳。高校生である彼だが、ずっと学校へ行くことは決してなかった。 しかし今日、彼は鞄を肩に引っ掛けて今──長い廊下の一つの扉である教室の扉の前に立っている。 「はぁ⋯⋯ん?」 溜息を吐きながら扉を開けたその先は、何やら黄金色に輝いていた。 「どういう事なんだ?」 すると気付けば真っ白な謎の空間へと移動していた。 「神門創一さん──私は神様のアルテミスと申します」 'え?神様?マジで?' 「本来呼ばれるはずでは無かったですが、貴方は教室の半分近く体を入れていて巻き込まれてしまいました」 ⋯⋯え? つまり──てことは俺、そんなくだらない事で死んだのか?流石にキツくないか? 「そんな貴方に──私の星であるレイアースに転移させますね!」 ⋯⋯まじかよ。 これは巻き込まれてしまった高校17歳の男がのんびり(嘘)と過ごす話です。 語彙力や文章力が足りていない人が書いている作品の為優しい目で読んでいただけると有り難いです。 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

処理中です...