3 / 115
説明
しおりを挟む
「職業、というのはこの世界と同じ意味で捉えて貰って構いません。
その種類はもちろん違いますがね。
これから向かってもらう世界には、その人の資質に適した職業。そしてそれに応じたスキルが魂に刻み込まれています。
皆さんにはただの職業ではなく、その更に上。職業の中でも能力の高い天職という物。
これと身体強化、魔力、さらには異世界で役に立つだろう能力を皆さんの魂に刻み込みこみます。いいえ、正確には刻み込ませていただきました。
天職の種類はランダムですが、その方の性格に合ったものになっているはずです」
「その天職というのはどんな物なんですか?」
ショートカットに黒縁メガネの霧島麗華学級委員長が質問する。学級委員長だからこそ自分が率先して皆を引っ張っていかなければならない、とでも思ったのかもしれない。責任感の強い人だからな。
「そうですね。では各自、説明していきたいと思います」
ミューは、パチンと指を鳴らした。
「今、前のドアだけロックを解除しました。順番は……そういえば出席番号というものがあるらしいですね。その順で前のドアから一人ずつ入ってきてください。そこでスキルについてお話しましょう」
誰かが何かを言う間を与えないように、立ち上がり扉の向こうに消えていった。
出席番号一番の相原莉穂の方に目を向けると、小さな体をさらに縮こませ、周りをキョロキョロと見まわしている。まるで小動物のようだ。フェレットや栗鼠を想起させられる。
「大丈夫?私が代わりに行こうかしら……?」
不安そうな相原を元気づけるように、肩に手を乗せたのは笹野優真。おっとりとした性格の彼女は、胸部にかなり大きなものをお持ちである。まあ、周りからの視線が恐ろしく直視したことはないんだけども。
相原さんとは仲がいいらしく、二人でいる姿をよく見かける。小動物のような保護欲のそそられる相原さん。母親のように包容力に溢れた笹野さん。まるで親子のように……見えなくもない。同い年なのに。
相原さんは笹野さんの提案に、首を振って拒否した。
「ありがとう。だけど、私がいかなきゃ、だから」
勇気を振り絞るように途切れ途切れで言う様は、親離れする子供のような……なんとも感動的なシーンを目撃してしまった。
相原さんをぎゅっと抱きしめた笹野さんも涙目になっている。
そして、2人は涙目で抱き合った。
暫くした後、相原さんは立ち上がる。
ミューのいる場所に行くため、扉を開け、その向こうへ消えていった。
・
結論から言うと、相原さんは無事に帰ってきた。
嫌なことをされた訳ではなさそう……どころか心なしか嬉しそうである。その様子を見た次の生徒は安心したように扉の向こうに消えていった。
「何を教えてもらったの?」
笹野さんは不思議そうに尋ねる。入る前は怯えていた友人がスキップでもし始めそうなほどご機嫌になって帰ってきたのである。内容が気になるのは当然だろう。
「天職の内容を教えてもらったの!!私の能力は〝テイマー〟っていうらしいの!」
「あら、そうなの?テイマーってことは、動物を飼い慣らしたり出来るのかしら?」
相原さんは一転。悲しげな表情を見せた。とても罪悪感の湧く表情だ。直接向けられていない俺がそう感じるくらいである。向けられた本人はたまったものではない。
やはりというべきか、笹原さんはおろおろとしていた。それに気が付き、決して泣くまいと唇をかみしめる。然しそれが更に罪悪感を増長させる結果になっていた。
恐らく自らでテイマーの説明したかったのだろう。
一緒に泣きそうになっていた笹原さんは何かを思いついたように動きを止めた。
「想像だけだと、大まかにしか分からないから、詳しく教えて惜しいわ!」
場の雰囲気を明るくしようとしたのか、声が上ずっている。
「ほんと?じゃあ、説明するね!」
こちらも合わせてテンションを無理やり上げようとしているのか、不自然に高い声だった。
この二人はもう大丈夫だろう。女の子二人の会話をこれ以上盗み聞きするのも気が引けるので、二人から意識を外す。実のところ、話の内容はとても気になってはいた。けれど、いずれ自分の番が来るのだ。その時の楽しみとして、とっておきたい、という思いが強かったのだ。
その種類はもちろん違いますがね。
これから向かってもらう世界には、その人の資質に適した職業。そしてそれに応じたスキルが魂に刻み込まれています。
皆さんにはただの職業ではなく、その更に上。職業の中でも能力の高い天職という物。
これと身体強化、魔力、さらには異世界で役に立つだろう能力を皆さんの魂に刻み込みこみます。いいえ、正確には刻み込ませていただきました。
天職の種類はランダムですが、その方の性格に合ったものになっているはずです」
「その天職というのはどんな物なんですか?」
ショートカットに黒縁メガネの霧島麗華学級委員長が質問する。学級委員長だからこそ自分が率先して皆を引っ張っていかなければならない、とでも思ったのかもしれない。責任感の強い人だからな。
「そうですね。では各自、説明していきたいと思います」
ミューは、パチンと指を鳴らした。
「今、前のドアだけロックを解除しました。順番は……そういえば出席番号というものがあるらしいですね。その順で前のドアから一人ずつ入ってきてください。そこでスキルについてお話しましょう」
誰かが何かを言う間を与えないように、立ち上がり扉の向こうに消えていった。
出席番号一番の相原莉穂の方に目を向けると、小さな体をさらに縮こませ、周りをキョロキョロと見まわしている。まるで小動物のようだ。フェレットや栗鼠を想起させられる。
「大丈夫?私が代わりに行こうかしら……?」
不安そうな相原を元気づけるように、肩に手を乗せたのは笹野優真。おっとりとした性格の彼女は、胸部にかなり大きなものをお持ちである。まあ、周りからの視線が恐ろしく直視したことはないんだけども。
相原さんとは仲がいいらしく、二人でいる姿をよく見かける。小動物のような保護欲のそそられる相原さん。母親のように包容力に溢れた笹野さん。まるで親子のように……見えなくもない。同い年なのに。
相原さんは笹野さんの提案に、首を振って拒否した。
「ありがとう。だけど、私がいかなきゃ、だから」
勇気を振り絞るように途切れ途切れで言う様は、親離れする子供のような……なんとも感動的なシーンを目撃してしまった。
相原さんをぎゅっと抱きしめた笹野さんも涙目になっている。
そして、2人は涙目で抱き合った。
暫くした後、相原さんは立ち上がる。
ミューのいる場所に行くため、扉を開け、その向こうへ消えていった。
・
結論から言うと、相原さんは無事に帰ってきた。
嫌なことをされた訳ではなさそう……どころか心なしか嬉しそうである。その様子を見た次の生徒は安心したように扉の向こうに消えていった。
「何を教えてもらったの?」
笹野さんは不思議そうに尋ねる。入る前は怯えていた友人がスキップでもし始めそうなほどご機嫌になって帰ってきたのである。内容が気になるのは当然だろう。
「天職の内容を教えてもらったの!!私の能力は〝テイマー〟っていうらしいの!」
「あら、そうなの?テイマーってことは、動物を飼い慣らしたり出来るのかしら?」
相原さんは一転。悲しげな表情を見せた。とても罪悪感の湧く表情だ。直接向けられていない俺がそう感じるくらいである。向けられた本人はたまったものではない。
やはりというべきか、笹原さんはおろおろとしていた。それに気が付き、決して泣くまいと唇をかみしめる。然しそれが更に罪悪感を増長させる結果になっていた。
恐らく自らでテイマーの説明したかったのだろう。
一緒に泣きそうになっていた笹原さんは何かを思いついたように動きを止めた。
「想像だけだと、大まかにしか分からないから、詳しく教えて惜しいわ!」
場の雰囲気を明るくしようとしたのか、声が上ずっている。
「ほんと?じゃあ、説明するね!」
こちらも合わせてテンションを無理やり上げようとしているのか、不自然に高い声だった。
この二人はもう大丈夫だろう。女の子二人の会話をこれ以上盗み聞きするのも気が引けるので、二人から意識を外す。実のところ、話の内容はとても気になってはいた。けれど、いずれ自分の番が来るのだ。その時の楽しみとして、とっておきたい、という思いが強かったのだ。
11
お気に入りに追加
713
あなたにおすすめの小説
田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。
けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。
日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。
あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの?
ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。
感想などお待ちしております。
お願いだから俺に構わないで下さい
大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。
17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。
高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。
本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。
折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。
それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。
これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。
有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…
異世界転生したら何でも出来る天才だった。
桂木 鏡夜
ファンタジー
高校入学早々に大型トラックに跳ねられ死ぬが気がつけば自分は3歳の可愛いらしい幼児に転生していた。
だが等本人は前世で特に興味がある事もなく、それは異世界に来ても同じだった。
そんな主人公アルスが何故俺が異世界?と自分の存在意義を見いだせずにいるが、10歳になり必ず受けなければならない学校の入学テストで思わぬ自分の才能に気づくのであった。
===========================
始めから強い設定ですが、徐々に強くなっていく感じになっております。
元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜
ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。
社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。
せめて「男」になって死にたかった……
そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった!
もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!
前世で眼が見えなかった俺が異世界転生したら・・・
y@siron
ファンタジー
俺の眼が・・・見える!
てってれてーてってれてーてててててー!
やっほー!みんなのこころのいやしアヴェルくんだよ〜♪
一応神やってます!( *¯ ꒳¯*)どやぁ
この小説の主人公は神崎 悠斗くん
前世では色々可哀想な人生を歩んでね…
まぁ色々あってボクの管理する世界で第二の人生を楽しんでもらうんだ〜♪
前世で会得した神崎流の技術、眼が見えない事により研ぎ澄まされた感覚、これらを駆使して異世界で力を開眼させる
久しぶりに眼が見える事で新たな世界を楽しみながら冒険者として歩んでいく
色んな困難を乗り越えて日々成長していく王道?異世界ファンタジー
友情、熱血、愛はあるかわかりません!
ボクはそこそこ活躍する予定〜ノシ
勇者召喚に巻き込まれた俺はのんびりと生活したいがいろいろと巻き込まれていった
九曜
ファンタジー
俺は勇者召喚に巻き込まれた
勇者ではなかった俺は王国からお金だけを貰って他の国に行った
だが、俺には特別なスキルを授かったがそのお陰かいろいろな事件に巻き込まれといった
この物語は主人公がほのぼのと生活するがいろいろと巻き込まれていく物語
平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。
モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。
日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。
今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。
そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。
特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。
創造眼〜異世界転移で神の目を授かり無双する。勇者は神眼、魔王は魔眼だと?強くなる為に努力は必須のようだ〜
雅
ファンタジー
【HOTランキング入り!】【ファンタジーランキング入り!】
【次世代ファンタジーカップ参加】応援よろしくお願いします。
異世界転移し創造神様から【創造眼】の力を授かる主人公あさひ!
そして、あさひの精神世界には女神のような謎の美女ユヅキが現れる!
転移した先には絶世の美女ステラ!
ステラとの共同生活が始まり、ステラに惹かれながらも、強くなる為に努力するあさひ!
勇者は神眼、魔王は魔眼を持っているだと?
いずれあさひが無双するお話です。
二章後半からちょっとエッチな展開が増えます。
あさひはこれから少しずつ強くなっていきます!お楽しみください。
ざまぁはかなり後半になります。
小説家になろう様、カクヨム様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる