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王登場1
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その後、ルイーザ姫に案内されたのは、結構大きな部屋だった。椅子と机が所狭しと並べられているその様は、教室そのものだ。
ひとつ違うのは、前に教壇はなく、代わりに椅子が二つある。
その二つの椅子は、並べられている椅子よりも豪華なつくりになっていた。
椅子の数は前の二つを抜いてちょうど、三十一。俺たち(先生も合わせて)の数と同じだ。
この召喚人数は予定通りだった、ということなのだろう。
因みに教皇はどこかに行ってしまった。俺達を見張ってなくて良かったのだろうか?
まあ俺としてはあんなどう見ても危険人物、いない方が嬉しいからいいんだけどね。
「どうぞ座ってください」
先に入り前に座ったルイーザ姫が入口付近でたむろしている俺たちを見かねたのか声をかけた。
クラスメイト達は顔を見合わせあいながら、一人、また一人、と席に座りはじめる。
誰かが何かを言ったわけではないが、自然と前の世界の席順に座っていた。先生は空いていた左端の一番後ろの席にいる。
ギギギギ……。
全員が入ったことで、閉じられていた扉が開く。現れたのは複数人の男。フルプレートアーマー……と言うのだろうか?全身鎧で包まれていた。ゲームとかで見る騎士そっくりだ。
そんな騎士たちに囲まれていたのは、白髪頭のおじいさんである。髭も長く白いものが生えており、まるでサンタクロースのようだ。
しかし、着ているのは真っ赤な服ではない。キラキラと装飾の付いた何やら豪華な服だ。マントを羽織っており、その裏地は赤い。
「無礼な!王の御前であるぞ!!」
ぼうっとしている俺たちに痺れをきらしたのか、一番前にいた男が、一番近くに座っていた生徒に剣を向けた。
剣を向けられた生徒は顔を真っ青にしてぶるぶると震える。
それを見ていた他の生徒たちはピタリと動きを止めた。ただ一人、生徒を守ろうと覚悟を決めた顔をしている。我らが谷上先生だ。先生が立ち上がろうとした瞬間、声がかかる。
「よせ。今は公の場でもないのじゃ。それにわざわざ異国から来てもらった勇者様方じゃぞ?逆に儂が膝をつくべきかもしれぬ」
白髭のおじいさんに言われ騎士は恭しく剣を仕舞う。その所作は剣術に詳しくない俺から見てもとても美しいと思えるようなものだったが、その目つきは不満がありありと浮かんでいた。
俺たちの態度が気にくわないのだろう、ということは分かるのだが、何をすればよいのかは分からない。今までごくごく普通の高校生だった俺たちに、王に対する礼儀を求める方が間違っているのだ。
ルイーザ姫が何か助け船をくれないか?とちらりと見てみるが、無言である。彼女はあくまでも、勇者は王と同等な存在として扱いたいらしい。
その心意気はこちらにとってありがたいんだけども、表面だけでもいいからこう、取り繕う方法とか……教えてくれたっていいだろうに……。
そうした方が無駄な諍いは減るような気がする。この姫様、かなり不器用らしい。
王宮とかって化かし合いとか、腹芸とかすごいイメージがあるけども、それで、貴族たちとやっていけるのだろうか?と謎の心配をしてしまう。
そんなことを考えているうちに、おじいさんは椅子に座っていた。
頭にのっかった王冠がきらりと輝く。
「儂こそがこの国の王、グラウコ・ティノ・マレテーナである。さっそく本題に入ろう。この世界にはある危機が迫っている」
「危機?」
相槌を打つように反応したのは、神谷。
先ほど騎士に無礼だ、と剣を突き付けられた生徒のことは忘れてしまったのか。いや、成績優秀な彼が忘れているとは考えにくいだろう。だとするとものすごい度胸だ。
その度胸は今発揮すべきではなかったと思うが。
お陰で、騎士たちは、神谷をギロリと睨んでいる。今にも切りかかりそうだ。まだ、手出しはしていないけど。
対する神谷は睨まれているのに全く動じていない。心臓に毛でも生えているのだろうか……?
その様子に、王様は満足したように頷いた。
「左様。ここには魔物、という生物がおるんじゃ。魔力を扱い、人を襲い、地を穢す奴ら。
昔はそこまで存在していなかった、と聞いておる。然し、ここ数年で有り得ないほど増加しておるのじゃ。このままではこの世界の人は絶滅してしまう……」
「それを救ってほしい、とそういうことかしら?」
もだもだと言いにくそうに口ごもった王様に痺れを切らしたのか、凛、とした声を響かせたのは、クールビューティとして名高い中善寺瑞希。すらりとした手足に出るところは出ている彼女はスタイルがいいだけではない。かなりの美人だ。目を伏せて何かを考える様はどこか氷のような冷たい雰囲気をまとっている。
「さすが勇者様じゃな。呑み込みが早い」
うむうむと頷く王様に冷や水を浴びせるかのように、
バンッ!!!!!
という音が響いた。
「そんな危ないこと、させられるわけがないでしょう!!貴方たちには分からないかもしれませんが、この子たちが元いた場所は平和な国だったのよ……!それを勝手に呼び出して、挙句自分たちのために戦えですって?!」
机を叩いた勢いを利用して立ち上がったのは谷上先生だ。
生徒が刃を向けられたとき、動けなかったことを悔やんでいるのか、その声は熱意に満ちていた。
その言葉に、痛いところを刺されたのか、黙り込む王様達。
「先生!!でも困っている人がいるんですよ?」
反論をしたのは神谷だ。
まさか生徒側から反対されるとは思っていなかったのだろう、ぎょっとした顔で神谷を見る谷上先生。
彼の正義感は、自分が助かるために他の人を見捨てるという行為を認められなかったらしい。
俺はまず、自分のことがきちんと出来るようになってから相手を助けるかどうか判断すべきだと思うんだけども、まあ、身を粉にして他人を助けることは否定しない。とてもいいことだとは思うよ。うん。俺はやらないけど。
ひとつ違うのは、前に教壇はなく、代わりに椅子が二つある。
その二つの椅子は、並べられている椅子よりも豪華なつくりになっていた。
椅子の数は前の二つを抜いてちょうど、三十一。俺たち(先生も合わせて)の数と同じだ。
この召喚人数は予定通りだった、ということなのだろう。
因みに教皇はどこかに行ってしまった。俺達を見張ってなくて良かったのだろうか?
まあ俺としてはあんなどう見ても危険人物、いない方が嬉しいからいいんだけどね。
「どうぞ座ってください」
先に入り前に座ったルイーザ姫が入口付近でたむろしている俺たちを見かねたのか声をかけた。
クラスメイト達は顔を見合わせあいながら、一人、また一人、と席に座りはじめる。
誰かが何かを言ったわけではないが、自然と前の世界の席順に座っていた。先生は空いていた左端の一番後ろの席にいる。
ギギギギ……。
全員が入ったことで、閉じられていた扉が開く。現れたのは複数人の男。フルプレートアーマー……と言うのだろうか?全身鎧で包まれていた。ゲームとかで見る騎士そっくりだ。
そんな騎士たちに囲まれていたのは、白髪頭のおじいさんである。髭も長く白いものが生えており、まるでサンタクロースのようだ。
しかし、着ているのは真っ赤な服ではない。キラキラと装飾の付いた何やら豪華な服だ。マントを羽織っており、その裏地は赤い。
「無礼な!王の御前であるぞ!!」
ぼうっとしている俺たちに痺れをきらしたのか、一番前にいた男が、一番近くに座っていた生徒に剣を向けた。
剣を向けられた生徒は顔を真っ青にしてぶるぶると震える。
それを見ていた他の生徒たちはピタリと動きを止めた。ただ一人、生徒を守ろうと覚悟を決めた顔をしている。我らが谷上先生だ。先生が立ち上がろうとした瞬間、声がかかる。
「よせ。今は公の場でもないのじゃ。それにわざわざ異国から来てもらった勇者様方じゃぞ?逆に儂が膝をつくべきかもしれぬ」
白髭のおじいさんに言われ騎士は恭しく剣を仕舞う。その所作は剣術に詳しくない俺から見てもとても美しいと思えるようなものだったが、その目つきは不満がありありと浮かんでいた。
俺たちの態度が気にくわないのだろう、ということは分かるのだが、何をすればよいのかは分からない。今までごくごく普通の高校生だった俺たちに、王に対する礼儀を求める方が間違っているのだ。
ルイーザ姫が何か助け船をくれないか?とちらりと見てみるが、無言である。彼女はあくまでも、勇者は王と同等な存在として扱いたいらしい。
その心意気はこちらにとってありがたいんだけども、表面だけでもいいからこう、取り繕う方法とか……教えてくれたっていいだろうに……。
そうした方が無駄な諍いは減るような気がする。この姫様、かなり不器用らしい。
王宮とかって化かし合いとか、腹芸とかすごいイメージがあるけども、それで、貴族たちとやっていけるのだろうか?と謎の心配をしてしまう。
そんなことを考えているうちに、おじいさんは椅子に座っていた。
頭にのっかった王冠がきらりと輝く。
「儂こそがこの国の王、グラウコ・ティノ・マレテーナである。さっそく本題に入ろう。この世界にはある危機が迫っている」
「危機?」
相槌を打つように反応したのは、神谷。
先ほど騎士に無礼だ、と剣を突き付けられた生徒のことは忘れてしまったのか。いや、成績優秀な彼が忘れているとは考えにくいだろう。だとするとものすごい度胸だ。
その度胸は今発揮すべきではなかったと思うが。
お陰で、騎士たちは、神谷をギロリと睨んでいる。今にも切りかかりそうだ。まだ、手出しはしていないけど。
対する神谷は睨まれているのに全く動じていない。心臓に毛でも生えているのだろうか……?
その様子に、王様は満足したように頷いた。
「左様。ここには魔物、という生物がおるんじゃ。魔力を扱い、人を襲い、地を穢す奴ら。
昔はそこまで存在していなかった、と聞いておる。然し、ここ数年で有り得ないほど増加しておるのじゃ。このままではこの世界の人は絶滅してしまう……」
「それを救ってほしい、とそういうことかしら?」
もだもだと言いにくそうに口ごもった王様に痺れを切らしたのか、凛、とした声を響かせたのは、クールビューティとして名高い中善寺瑞希。すらりとした手足に出るところは出ている彼女はスタイルがいいだけではない。かなりの美人だ。目を伏せて何かを考える様はどこか氷のような冷たい雰囲気をまとっている。
「さすが勇者様じゃな。呑み込みが早い」
うむうむと頷く王様に冷や水を浴びせるかのように、
バンッ!!!!!
という音が響いた。
「そんな危ないこと、させられるわけがないでしょう!!貴方たちには分からないかもしれませんが、この子たちが元いた場所は平和な国だったのよ……!それを勝手に呼び出して、挙句自分たちのために戦えですって?!」
机を叩いた勢いを利用して立ち上がったのは谷上先生だ。
生徒が刃を向けられたとき、動けなかったことを悔やんでいるのか、その声は熱意に満ちていた。
その言葉に、痛いところを刺されたのか、黙り込む王様達。
「先生!!でも困っている人がいるんですよ?」
反論をしたのは神谷だ。
まさか生徒側から反対されるとは思っていなかったのだろう、ぎょっとした顔で神谷を見る谷上先生。
彼の正義感は、自分が助かるために他の人を見捨てるという行為を認められなかったらしい。
俺はまず、自分のことがきちんと出来るようになってから相手を助けるかどうか判断すべきだと思うんだけども、まあ、身を粉にして他人を助けることは否定しない。とてもいいことだとは思うよ。うん。俺はやらないけど。
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