乙女ゲーの悪役に転生したらハーレム作り上げてしまった

信じたくない

手前側のソファに俺とレオン、父親が、反対側に王子が座る。
何やらさきほどからレオンが俺の右腕を掴んで離してくれないがどうしたのだろうか。

「さて……。ニコル、僕が何故今日ここに来たか分かるかい？」

「は……、いえ」

「実はね、君と僕の婚約話が持ち上がっているんだよ」

…………
………………
……………………

（はぁ！？！？！？）

ちょっと待ってくれ、どうしてそんな話になるんだ！？
俺はっ、俺はっ

「その……お、ぼくは男ですが……」

「おや」とでも言いたげに王子は微笑んだ。

「ふふ、ニコルはまだ知らなかったんだね。この国では女の人と男の人……そういうしばりもなく結婚ができるんだよ」

そんなこと「すべきみ」の中で言っていなかったぞ！？いわゆる裏設定というやつか…？いや、だとしてもだ。俺は悪役……ニコラス・グラディアルだぞ？王子と結婚なんてしてしまったら物語ねじれまくるだろう！！？？

「と、とうさま……？そうなのですか……？」

最後の頼みの綱である父に助けの視線を求める。

「はは、そうなんだよなぁ…。いや、勿論ニコルの意見も尊重するぞ？？ニコルは婚約とかまだ早いんじゃないか？なぁ？困るだろう？」

父さんの方が困っている……というか焦っているように見えるが……。
しかし父はどちらかと言えばこちら側ー婚約反対派のようだ。よし、このまままだ早いという事で押し込んで……

「やだなぁ、公爵。あなたが僕に逆らえると思っているの？」

(なっ……！？)

こいつ、権力を使ってきた……！こいつはまだ今の俺より1つしか変わらないはずだよな？あまりにも子供っぽく無さすぎるのでは…！？

「んぐっ……！いえ、私も反対などしておりませんよ？ただニコルの心はどうなのだろうと……」

「ふぅん。じゃあニコル、君はどうだい？」

(お断りだそんなもの！！！)

と言えれば良かったのだが……。くそ、王子のこの圧はなんなんだ、子供なのに逆らえない……。そもそも俺は前世でもあまり喋る方ではなく流されるままに生きていく事なかれ主義だったのだ。こんな話の流れ……

「よろこんで、オウケいたしマス……」

「ふふ、良かった。嬉しいよニコル」

うわああ近い！近い！いつの間に距離を詰めてきていたんだ！？美形が近くに……。

(ああ……、俺はバッドエンドを回避出来れば良かっただけなのに……)

ニコニコと見つめてくる王子に気づかれないよう俺はそっとため息をついた。