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気づいたら (ウィリアムside)
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「グラディアル家の長男……ですか」
「ああ」
王城の一室ー王の間で僕は王、つまり父親と対面していた。
その父親は王としていかがなものかというような緩みきった顔をしている。
「お前はこの王国では結婚というものに性別の壁をつくっていないことは知っているな?」
「ええ……。もしや」
「お前が思っている通りだ。グラディアル家の長男……ニコラスといったかな、その子を妻として迎えるのはどうかと思ってな!」
(ふむ……)
確かにグラディアル家の爵位は公爵、僕も既にこの歳で着飾り媚びを売ってくる女たちには辟易していた。それに結婚に性差を問題としなくなったのもつい最近のことだ。王家が進んでそれを行うことによりアルカニア王国の寛容さを他国にアピール出来る、か……。
「僕としてはとくに問題ありませんが……」
「そうか!ならば明日にでもグラディアル家に訪問してきてくれ」
(……は?)
こんなアホ面をしていてもこの国の王、口には出さなかったが……。急過ぎるだろう!?
「いやあ、ヴェルディの怒った顔を見るのが楽しみだなぁ!!」
(こいつ……)
目の前の王はにやにやと笑っている。
僕はこっそりと深いため息をついた。
_______________________
「ようこそおいでくださいました殿下」
「これは……。家の外で歓迎とはてあつい出迎えだね」
「はっはっはっは……。どうなっているのですか殿下寝耳に水だったのですが!?」
「はは……。完全に同意だ」
どうやら王への文句を言うためにわざわざ家の外で待っていたらしい。
「くっ…、あいつが王でなければもう何千回ぶん殴っていたことか……」
横でさらりと王家反逆罪に値することが聞こえてきた気がしたがスルーする。
「いいですか?殿下。うちのスウィートハニーはそれはもう可愛らしいです。可愛らしいので!!くれぐれも貴方の父親のように出会って即求婚なんてことしないでくださいよ!」
「やだなぁ、そんなことしないよ」
父の母への暑苦しい求愛はいやというほど見てきている。あんなやつになる気はない。
「では……」
公爵の従者が扉を開ける。するとそこには
「おはつにお目にかかります、ニコラス・グラディアルともうします」
天使が居た。綺麗な紺色の髪、この国ではよく見られる碧眼でありながらその煌めきは他の瞳を遥かに凌駕している。そしてこの歳でありながら既に利発さを思わせる切れ長の目、小さい子らしくふっくらとした頬……。
「初めまして、僕はウィリアム・アルコニア。僕のいとしい天使、どうか僕と永遠のちぎりを交わしてくれないかい?」
滑らかに天使の手をとり膝まづく。
「あ、あのでんか……?」
この可愛らしい天使は戸惑っているようだ。愛らしい。
「ウィルと呼んで」
自分でもびっくりするくらいの笑顔になっていると分かる。しばらく楽しい会話を続けていると
「いやあ殿下!ニコルのことが気になっていらっしゃるのですかな?ならば、とりあえず客間へご案内させて頂きましょう。愚息も戸惑っているようです」
……邪魔された。まあいい。ニコルを見つめながら歩いていると、
「にいたまぁ、にいたまはぁ、ぼくのことすきですかぁ?」
ニコルの弟……、ええとレオンと言ったか、そいつがニコルへと話しかけた。
「うん……?ああ、大好きだぞ!」
「へへ、そうですかぁ!」
そう言ってあろうことかニコルに抱きついたのだ。
(な……)
そして、そしてそいつは抱きつきながらこちらへ目線を向ける。この目線の意図は……。
(なるほどな……、はっ)
そいつを叱るニコルに
「かまわないよ。可愛いじゃないか、子供のたわむれは」
「たわむれ」のところを強調して言う。
ニコルに気づかれないようこちらを睨んでくるレオンに向かって僕はそっと微笑を送った。
***************************************************
補足ですが、レオンの目線は
「ふふんいいだろう?にいさまはぼくのものだからな!」
みたいな感じです。
ニコル父は求婚してしまったウィリアムを見て横で頭抱えてます。
可哀想ですね、ニコル父。
「ああ」
王城の一室ー王の間で僕は王、つまり父親と対面していた。
その父親は王としていかがなものかというような緩みきった顔をしている。
「お前はこの王国では結婚というものに性別の壁をつくっていないことは知っているな?」
「ええ……。もしや」
「お前が思っている通りだ。グラディアル家の長男……ニコラスといったかな、その子を妻として迎えるのはどうかと思ってな!」
(ふむ……)
確かにグラディアル家の爵位は公爵、僕も既にこの歳で着飾り媚びを売ってくる女たちには辟易していた。それに結婚に性差を問題としなくなったのもつい最近のことだ。王家が進んでそれを行うことによりアルカニア王国の寛容さを他国にアピール出来る、か……。
「僕としてはとくに問題ありませんが……」
「そうか!ならば明日にでもグラディアル家に訪問してきてくれ」
(……は?)
こんなアホ面をしていてもこの国の王、口には出さなかったが……。急過ぎるだろう!?
「いやあ、ヴェルディの怒った顔を見るのが楽しみだなぁ!!」
(こいつ……)
目の前の王はにやにやと笑っている。
僕はこっそりと深いため息をついた。
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「ようこそおいでくださいました殿下」
「これは……。家の外で歓迎とはてあつい出迎えだね」
「はっはっはっは……。どうなっているのですか殿下寝耳に水だったのですが!?」
「はは……。完全に同意だ」
どうやら王への文句を言うためにわざわざ家の外で待っていたらしい。
「くっ…、あいつが王でなければもう何千回ぶん殴っていたことか……」
横でさらりと王家反逆罪に値することが聞こえてきた気がしたがスルーする。
「いいですか?殿下。うちのスウィートハニーはそれはもう可愛らしいです。可愛らしいので!!くれぐれも貴方の父親のように出会って即求婚なんてことしないでくださいよ!」
「やだなぁ、そんなことしないよ」
父の母への暑苦しい求愛はいやというほど見てきている。あんなやつになる気はない。
「では……」
公爵の従者が扉を開ける。するとそこには
「おはつにお目にかかります、ニコラス・グラディアルともうします」
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「初めまして、僕はウィリアム・アルコニア。僕のいとしい天使、どうか僕と永遠のちぎりを交わしてくれないかい?」
滑らかに天使の手をとり膝まづく。
「あ、あのでんか……?」
この可愛らしい天使は戸惑っているようだ。愛らしい。
「ウィルと呼んで」
自分でもびっくりするくらいの笑顔になっていると分かる。しばらく楽しい会話を続けていると
「いやあ殿下!ニコルのことが気になっていらっしゃるのですかな?ならば、とりあえず客間へご案内させて頂きましょう。愚息も戸惑っているようです」
……邪魔された。まあいい。ニコルを見つめながら歩いていると、
「にいたまぁ、にいたまはぁ、ぼくのことすきですかぁ?」
ニコルの弟……、ええとレオンと言ったか、そいつがニコルへと話しかけた。
「うん……?ああ、大好きだぞ!」
「へへ、そうですかぁ!」
そう言ってあろうことかニコルに抱きついたのだ。
(な……)
そして、そしてそいつは抱きつきながらこちらへ目線を向ける。この目線の意図は……。
(なるほどな……、はっ)
そいつを叱るニコルに
「かまわないよ。可愛いじゃないか、子供のたわむれは」
「たわむれ」のところを強調して言う。
ニコルに気づかれないようこちらを睨んでくるレオンに向かって僕はそっと微笑を送った。
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補足ですが、レオンの目線は
「ふふんいいだろう?にいさまはぼくのものだからな!」
みたいな感じです。
ニコル父は求婚してしまったウィリアムを見て横で頭抱えてます。
可哀想ですね、ニコル父。
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