7 / 12
レオン (ヴェルディside)
しおりを挟む
「遠縁の伯爵家の当主夫婦が亡くなった?」
そんな知らせが来たのはある日の朝の事だった。
「えぇ。深夜に馬車で帰路を急いでいた所の前方不注意による転落事故のようです」
それはご愁傷様としか言いようがないだろう。冷たいかもしれないが、私はその子爵とは遠縁に値する事ぐらいしか関係性がない。
それにきっと子供が居るはずだ、その子が…
「その夫婦の子供はまだ3歳程度の幼児であるそうなんです」
3歳!?
「それはそれは…。身寄りはないのか?」
そう訊くとこれを報告してくれた部下——マルコは言いにくそうに顔をしかめた。
「いえ…。引き取ってくれる所もあるにはあるのですが…。”あの”スカルティア伯爵家で…」
(あぁ…成る程な…)
私は察した。
この国は他の国と比べて非常に平和だと言えるが、それでもいわゆる”厄介者”は居る。それが今言ったスカルティア伯爵家だ。代々当主がそれはまあ身勝手な行いをしており、自分の娘を無理矢理婚約者にしてこようとしたり、上の階級の者には媚を売り、下の者には傍若無人な振る舞い。犯罪は犯していないだけマシかもしれないが、それでも厄介者には違いない。
そんな所に3歳の子供を放りだしてしまうのはあまりにも可哀想か…。
それに、ニコルの為にも良いかもしれない。義弟であるとはいえ、兄弟が出来るのは寂しくならなくなるのではないだろうか。私も出来るだけ早く帰るようにはしているが限界もある。
(そうだ、そうしよう!)
ニコルの事を思い出して思わずでれっとしてしまう。マルコが何か見てはいけないものを見ているような目をしているが無視だ。
「よし!その子をうちで引き取ろう!」
______________________________________
「は…はじめまして、れおんでしゅ…」
衝撃だった。その艶やかな黒髪、アメジスト色の瞳、その子は、美しかった。
思わず息を呑む。よし、怖がらせてはいけない。
「初めまして、レオンくん。私は今日から君のお父さんになる人だよ」
「おとお、さん…?」
不安そうに瞳を揺らしながら首を傾げる。
「そうだ。君の本当のお父さんとお母さんは遠い所に行ってしまって君とはもう会えないんだ」
(これで良いだろうか…?)
この子はまだ両親が何故か帰ってこない、というような認識をしている。成長するにつれ判る事ではあるだろうが…。
「ぼく、おとおさんたちともうあえないの…?」
ぶわぁっと大きな瞳に涙がたまっていく。可哀想だが…。私にはレオンを優しく抱き締めてやる事しか出来なかった。
______________________________________
その後、泣き止んだレオンと帰路につく。
「君のお兄ちゃんもいるんだよ」
「おにい…ちゃん…?」
私はレオンの頭を撫で従者にドアを開けさせる。
「帰ったぞ…、ニコル!?」
「おかりなさ…いませ、とうたま!」
我が愛しのエンジェルがお出迎えだと…?こんな幸せな事があるのか…?
「なんてっ、なんて父親思いの良い子なんだニコルっ!!」
「うぅ、とうたまくるしいです…」
思わずぎゅうぎゅうと抱き締めていると、
「旦那様?」
リッカが私の行動をいさめた…訳ではなかった。
「とうたま…下ろして…」
ニコルも何かを悟ったらしい。言われるがままニコルを下ろしてやる。
「!?」
ニコルは衝撃的なものを見たように硬直した。無理もないだろう。まだ小さいのにこの完成度だ。
思わずといったようにニコルが私にしがみつく。
「と、とうたま。あのこ、だれ…?」
「紹介が遅れてしまったね」
私はそう言ってニコルを優しく離し、レオンを抱き上げてからニコルの前に行った。
「紹介するね。今日からニコルの弟になるレオンだよ」
「れ、れおんでしゅ…。さんしゃいでしゅ、よ、よろしくおねがいしましゅ…」
これは驚いた。私は挨拶など指導していない。しかも両親と離れ離れになったばかりなのに…。この子は相当にしっかりしているようだ。
そう思いながらニコルを見ると何やら呟いて呆然としている、かと思えば今度は焦っている様子だ。
声をかけようとすると、ニコルは私のズボンを握り最高に可愛い顔をする。
「と、とうたま…?」
「うん?なんだいニコル」
「おr…ぼく、れおんとあそびたいけど、きょうはもうつかれちゃったな…?」
ぐあっ…!うちの息子が可愛過ぎる…!!
「そうかそうか。ニコルは疲れてしまったか。いいだろう、夕食の時間までおやすみ。レオンとゆっくり話すのはその時にしよう」
私がそう言うとニコルはレオンの方を見遣り、
「れおん、またあとでね」
と手を振ったのだ!ああ可愛い…じゃなくて。私がレオンの方を見ると、
ボムンッ
レオンの顔は真っ赤になっていた。その顔は恥ずかしさやニコルに見惚れて、というだけでなく…。
(もしかして、レオン…)
私は密かに冷や汗をかいた。
********************************************
今回長くなってしまいすみません^^;
お父さん視点のお話でした。
そんな知らせが来たのはある日の朝の事だった。
「えぇ。深夜に馬車で帰路を急いでいた所の前方不注意による転落事故のようです」
それはご愁傷様としか言いようがないだろう。冷たいかもしれないが、私はその子爵とは遠縁に値する事ぐらいしか関係性がない。
それにきっと子供が居るはずだ、その子が…
「その夫婦の子供はまだ3歳程度の幼児であるそうなんです」
3歳!?
「それはそれは…。身寄りはないのか?」
そう訊くとこれを報告してくれた部下——マルコは言いにくそうに顔をしかめた。
「いえ…。引き取ってくれる所もあるにはあるのですが…。”あの”スカルティア伯爵家で…」
(あぁ…成る程な…)
私は察した。
この国は他の国と比べて非常に平和だと言えるが、それでもいわゆる”厄介者”は居る。それが今言ったスカルティア伯爵家だ。代々当主がそれはまあ身勝手な行いをしており、自分の娘を無理矢理婚約者にしてこようとしたり、上の階級の者には媚を売り、下の者には傍若無人な振る舞い。犯罪は犯していないだけマシかもしれないが、それでも厄介者には違いない。
そんな所に3歳の子供を放りだしてしまうのはあまりにも可哀想か…。
それに、ニコルの為にも良いかもしれない。義弟であるとはいえ、兄弟が出来るのは寂しくならなくなるのではないだろうか。私も出来るだけ早く帰るようにはしているが限界もある。
(そうだ、そうしよう!)
ニコルの事を思い出して思わずでれっとしてしまう。マルコが何か見てはいけないものを見ているような目をしているが無視だ。
「よし!その子をうちで引き取ろう!」
______________________________________
「は…はじめまして、れおんでしゅ…」
衝撃だった。その艶やかな黒髪、アメジスト色の瞳、その子は、美しかった。
思わず息を呑む。よし、怖がらせてはいけない。
「初めまして、レオンくん。私は今日から君のお父さんになる人だよ」
「おとお、さん…?」
不安そうに瞳を揺らしながら首を傾げる。
「そうだ。君の本当のお父さんとお母さんは遠い所に行ってしまって君とはもう会えないんだ」
(これで良いだろうか…?)
この子はまだ両親が何故か帰ってこない、というような認識をしている。成長するにつれ判る事ではあるだろうが…。
「ぼく、おとおさんたちともうあえないの…?」
ぶわぁっと大きな瞳に涙がたまっていく。可哀想だが…。私にはレオンを優しく抱き締めてやる事しか出来なかった。
______________________________________
その後、泣き止んだレオンと帰路につく。
「君のお兄ちゃんもいるんだよ」
「おにい…ちゃん…?」
私はレオンの頭を撫で従者にドアを開けさせる。
「帰ったぞ…、ニコル!?」
「おかりなさ…いませ、とうたま!」
我が愛しのエンジェルがお出迎えだと…?こんな幸せな事があるのか…?
「なんてっ、なんて父親思いの良い子なんだニコルっ!!」
「うぅ、とうたまくるしいです…」
思わずぎゅうぎゅうと抱き締めていると、
「旦那様?」
リッカが私の行動をいさめた…訳ではなかった。
「とうたま…下ろして…」
ニコルも何かを悟ったらしい。言われるがままニコルを下ろしてやる。
「!?」
ニコルは衝撃的なものを見たように硬直した。無理もないだろう。まだ小さいのにこの完成度だ。
思わずといったようにニコルが私にしがみつく。
「と、とうたま。あのこ、だれ…?」
「紹介が遅れてしまったね」
私はそう言ってニコルを優しく離し、レオンを抱き上げてからニコルの前に行った。
「紹介するね。今日からニコルの弟になるレオンだよ」
「れ、れおんでしゅ…。さんしゃいでしゅ、よ、よろしくおねがいしましゅ…」
これは驚いた。私は挨拶など指導していない。しかも両親と離れ離れになったばかりなのに…。この子は相当にしっかりしているようだ。
そう思いながらニコルを見ると何やら呟いて呆然としている、かと思えば今度は焦っている様子だ。
声をかけようとすると、ニコルは私のズボンを握り最高に可愛い顔をする。
「と、とうたま…?」
「うん?なんだいニコル」
「おr…ぼく、れおんとあそびたいけど、きょうはもうつかれちゃったな…?」
ぐあっ…!うちの息子が可愛過ぎる…!!
「そうかそうか。ニコルは疲れてしまったか。いいだろう、夕食の時間までおやすみ。レオンとゆっくり話すのはその時にしよう」
私がそう言うとニコルはレオンの方を見遣り、
「れおん、またあとでね」
と手を振ったのだ!ああ可愛い…じゃなくて。私がレオンの方を見ると、
ボムンッ
レオンの顔は真っ赤になっていた。その顔は恥ずかしさやニコルに見惚れて、というだけでなく…。
(もしかして、レオン…)
私は密かに冷や汗をかいた。
********************************************
今回長くなってしまいすみません^^;
お父さん視点のお話でした。
18
お気に入りに追加
1,816
あなたにおすすめの小説

BLゲームの脇役に転生した筈なのに
れい
BL
腐男子である牧野ひろはある日、コンビニに寄った際に不慮の事故で命を落としてしまう。
その朝、目を覚ますとなんと彼が生前ハマっていた学園物BLゲームの脇役に転生!?
脇役なのになんで攻略者達に口説かれてんの!?
なんで主人公攻略対象者じゃなくて俺を攻略してこうとすんの!?
彼の運命や如何に。
脇役くんの総受け作品になっております。
地雷の方は回れ右、お願い致します(* . .)’’
随時更新中。

転生先がBLの世界とか…俺、聞いてないんですけどぉ〜?
彩ノ華
BL
何も知らないままBLの世界へと転生させられた主人公…。
彼の言動によって知らないうちに皆の好感度を爆上げしていってしまう…。
主人公総受けの話です!((ちなみに無自覚…

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

案外、悪役ポジも悪くない…かもです?
彩ノ華
BL
BLゲームの悪役として転生した僕はBADエンドを回避しようと日々励んでいます、、
たけど…思いのほか全然上手くいきません!
ていうか主人公も攻略対象者たちも僕に甘すぎません?
案外、悪役ポジも悪くない…かもです?
※ゆるゆる更新
※素人なので文章おかしいです!

転生したら溺愛されていた俺の話を聞いてくれ!
彩ノ華
BL
不運の事故に遭い、命を失ってしまった俺…。
なんと転生させて貰えることに!
いや、でもなんだかおかしいぞ…この世界…
みんなの俺に対する愛が重すぎやしませんか…??
主人公総受けになっています。

ヤバい薬、飲んじゃいました。
はちのす
BL
変な薬を飲んだら、皆が俺に惚れてしまった?!迫る無数の手を回避しながら元に戻るまで奮闘する話********イケメン(複数)×平凡※性描写は予告なく入ります。
作者の頭がおかしい短編です。IQを2にしてお読み下さい。
※色々すっ飛ばしてイチャイチャさせたかったが為の産物です。


異世界転移して戻ってきたけど、疲れきったおじさんになっちゃった元勇者が子連れで再召喚されたら総愛されになってしまった件について
鳥海あおい
BL
勇者「クロエ」として異世界転移し、任を終えて普通に暮らしていた黒江光太郎はバツイチ、ブラック企業勤務、父子家庭。育児に家事疲れで、すっかり疲れ切ったおじさんになっていた。
だがそんなある日息子の律と再召喚される。
勇者として!ではなく、異世界でかつて魔王を倒したクロエはなんとアイドル的存在になっていたうえに、パーティーのメンバーから総愛されの逆ハーレム状態になってしまう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる