上 下
388 / 392
番外編

ドラコニス大公国 1

しおりを挟む
'

 ドラコニス大公国……、旧ドラコニス公爵領に引っ越してきた!
 
「ドラコニス大公様、シリウス様、バンザ~イ!!」
「シリウス様ぁー!! ドラコニス大公様ぁー!! 御帰国歓迎いたします!!」

 あれだけ老人ばっかで過疎化が進んで、人の少なかったドラコニス公爵領が嘘みたいに群衆であふれ返ってる。
 荷物は前から運んでたから、私とアルファルドが馬車で入国したんだけど……それだけで凱旋パレードみたいに大変な騒ぎになってる。

「うわ~、すごい人だね!」
「…あぁ」

 馬車の窓から手を振ったら、それだけで歓声が沸き起こってワーワーすごいことになってる。

「リタさんとベッテルさんは先に向かってるんだろ?」
「…そうだ。少し前に移動し、屋敷を整えておくと言っていた」

 私達が向かうのは、リブラ聖夜祭で泊まった旧ドラコニス公爵領の邸宅。タウリは馬車の前を馬に乗って護衛してる。
 ちなみにオクタンやアンカ、あと、リゲルとかアケルナーは後で大公国に移動する。
 今だにリゲルとアケルナーが私に従うのが信じられないんだけど、まぁ言った手前、私もいい加減認めないとね。

「まだまだこれからやることだらけだからなぁ」
「…やること?」
「うん。アルファルドが私の好きにしていいって言ってくれたでしょ?」
「…あぁ」
「だから、好きにさせてもらうんだ!」
「…?? どういう意味だ?」
「ま、見ててよ。前来たときは関係ないって割り切ったけど、今はもうそんなこと言ってられないからね。これからばんばん改革していくから!」
「…改革?」
「ハハッ! ヒ・ミ・ツ!」

 アルファルドに向かってパチッとウインクしたけど、アルファルドは訳が分からないって顔してて。
 可笑しくて笑っちゃった。

 

 ◇ ◇
 


 それからまた私の慌ただしい日々が始まった。
 まず、ドラコニス大公国全域のインフラ整備。それから都市のリブラに大公国の本拠地のお城を建設中。
 その他に各地域ごとに学校、病院、駐在所、役所を設けた。

「…おい、ミラ! こんなに一気に様々な建物を建てて大丈夫なのか!?」

 ドラコニス大公家の邸宅で事務仕事してた私に、アルファルドが慌てた様子で扉から駆け込んできた。

「んー…? うん!」

 机の上で書類書いてた顔を上げて、アルファルドに向かってニコっと笑う。
 アルファルドは机にバンッ! って手を置いて、まくし立てるように話してる。
 
「…あれだけ各所で大規模な工事を行えば、莫大な費用がかかるんだぞ!」
「そうだね。おかげで私の懐もすっからかんになっちゃったよ」

 笑いながら話してる私に、アルファルドは神妙な顔で話し出した。

「…お前が、これまで苦労して貯めた資産だろ? 何もここまで急いで整備する必要はないんだ! お前の全財産を投げ出してまで、やることじゃない!!」

 机に手を置いたまま、息を乱して話してる。

「アルファルド、こっちに来て?」
「……」
「早く」
 
 アルファルドは短く息を吐いて、私の方に回って来てくれた。
 椅子から立ち上がった私は、座ってた椅子にアルファルドを座らせて、アルファルドの膝の上に腰を下ろした。 
 両手を伸ばして、間近にある綺麗な顔に頬を添えた。

「私のこと心配してくれてありがとう。だからアルファルドって大好きっ」

 そのままチュッて軽く、目の前の薄い唇にキスした。
 アルファルドも言いたいこと言って少しは落ち着いたのか、さっきまでの勢いはなくなってる。
 
「…ミラ。…俺はお前に、何かしてやれてるか……? 時々、俺ばかりが幸せで、不安になる……。お前の、負担になっていないのかと……」

 眉根を寄せながら紫と黄金色のオッドアイを不安そうに揺らして、私の腰に腕を回してか細く呟いてる。
 その切なげな表情にキュンときちゃうよ。これだけで値千金だよね。
 てかさぁ……やっぱりアルファルドって、わかってない!
 私はアルファルドがいてくれればそれだけで幸せだって、ずっとずっとず~っと言ってるのに!

「ねぇアルファルド。お金なんて使うためにあるんだから気にしなくていいよ。私はアルファ商団のトップで、SSS級冒険者だよ? 資金ならいくらでも調達できる」
「……」
「けどさ、時間を巻き戻すことはできないでしょ? 今こうしてる間にも、苦しんでる人達がたくさんいるんだ。その人たちのために出すお金なら何も惜しくないよ」

 目の前で不安そうにしてるアルファルドを諭すように、笑いながら穏やかに話してる。

「……っ、ミラ……」
「私がやりたくてお金出してるんだから、アルファルドが負い目を感じる必要は何もないって」
「…だが……」

 不安なのはしょうがないよね。 
 アルファルドは長い間、誰からも満たされずに、理由もわからず責められて過ごしてきたから。
 虚しさの中で日々を過ごす苦しみは、私にも理解できる。まるで自分だけ、世界から切り離された感じ……
 前世の私も突然起きた出来事に、不安と絶望と苦痛を味わってきたから。 
 アルファルドの綺麗な顎のラインをスッと撫でて、サラッとした肌の感触を手のひらに感じながら、いつも通りニコッと笑った。

「何度でも言ってあげる。お金も名誉も必要ない。私はアルファルドさえいてくれればそれでいいから」
「――ッ」

 目を大きく開いたアルファルドが次の瞬間、腰に回してた腕をグッと引き寄せて、荒々しく私の唇を奪った。

「んッ!」

 深く重なった唇が気持ちいい。
 すぐに舌も入ってきて、吐息ごと奪うような激しいキスに、アルファルドの胸に縋りながら夢中で応えてた。

「は、ぁっ……」
 
 唇が離されても体が熱くて、そのままアルファルドにギュッと抱きついた。

「…ミラ、愛してる」

 チュッと私のこめかみにキスして、惜しみない愛を囁いてくれる。

「っ! はぁ……、お前ってホント、たち悪いっ」
「…? どういう意味だ?」
「だからさぁ、お前がそう言ってくれるだけで、めちゃくちゃ幸せなの! お前のその一言が、私の全部を満たしてくれるから」
「…ミラっ」
「ねぇ、ベッド行こ? ……我慢、できないよ……」

 顔上げて、熱い視線でアルファルドを見つめた。
 アルファルドは膝に乗ってた私をそのまま持ち上げて、寝室の扉を勢いよく開けてベッドまで早足で私を運んでる。

 それでいいんだよ、アルファルド。
 余計なことなんて考えないで。
 私のことだけ、アルファルドの頭を中を占めてればいいんだ。
 それが私の望みだから――

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

転生先が羞恥心的な意味で地獄なんだけどっ!!

高福あさひ
恋愛
とある日、自分が乙女ゲームの世界に転生したことを知ってしまったユーフェミア。そこは前世でハマっていたとはいえ、実際に生きるのにはとんでもなく痛々しい設定がモリモリな世界で羞恥心的な意味で地獄だった!!そんな世界で羞恥心さえ我慢すればモブとして平穏無事に生活できると思っていたのだけれど…?※カクヨム様、ムーンライトノベルズ様でも公開しています。不定期更新です。タイトル回収はだいぶ後半になると思います。前半はただのシリアスです。

ヤンチャな御曹司の恋愛事情

星野しずく
恋愛
桑原商事の次期社長である桑原俊介は元教育係で現在は秘書である佐竹優子と他人には言えない関係を続けていた。そんな未来のない関係を断ち切ろうとする優子だが、俊介は優子のことをどうしても諦められない。そんな折、優子のことを忘れられない元カレ伊波が海外から帰国する。禁断の恋の行方は果たして・・・。俊介は「好きな気持ちが止まらない」で岩崎和馬の同僚として登場。スピンオフのはずが、俊介のお話の方が長くなってしまいそうです。最後までお付き合いいただければ幸いです。

死にかけて全部思い出しました!!

家具付
恋愛
本編完結しました。時折気が向いたら外伝が現れます。 森の中で怪物に襲われたその時、あたし……バーティミウスは思い出した。自分の前世を。そして気づいた。この世界が、前世で最後にプレイした乙女ゲームの世界だという事に。 自分はどうやらその乙女ゲームの中で一番嫌われ役の、主人公の双子の妹だ。それも王道ルートをたどっている現在、自分がこのまま怪物に殺されてしまうのだ。そんなのは絶対に嫌だ、まだ生きていたい。敵わない怪物に啖呵を切ったその時、救いの手は差し伸べられた。でも彼は、髭のおっさん、イケメンな乙女ゲームの攻略対象じゃなかった……。 王道ルート……つまりトゥルーエンドを捻じ曲げてしまった、死ぬはずだった少女の奮闘記、幕開け! ……たぶん。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』

コバひろ
大衆娯楽
前作 “雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ” (全20話)の続編。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/329235482/129667563/episode/6150211 男子キックボクサーを倒したNOZOMIのその後は? そんな女子格闘家NOZOMIに敗れ命まで落とした父の仇を討つべく、兄と娘の青春、家族愛。 格闘技を通して、ジェンダーフリー、ジェンダーレスとは?を描きたいと思います。

悪役令嬢はお断りです

あみにあ
恋愛
あの日、初めて王子を見た瞬間、私は全てを思い出した。 この世界が前世で大好きだった小説と類似している事実を————。 その小説は王子と侍女との切ない恋物語。 そして私はというと……小説に登場する悪役令嬢だった。 侍女に執拗な虐めを繰り返し、最後は断罪されてしまう哀れな令嬢。 このまま進めば断罪コースは確定。 寒い牢屋で孤独に過ごすなんて、そんなの嫌だ。 何とかしないと。 でもせっかく大好きだった小説のストーリー……王子から離れ見られないのは悲しい。 そう思い飛び出した言葉が、王子の護衛騎士へ志願することだった。 剣も持ったことのない温室育ちの令嬢が 女の騎士がいないこの世界で、初の女騎士になるべく奮闘していきます。 そんな小説の世界に転生した令嬢の恋物語。 ●表紙イラスト:San+様(Twitterアカウント@San_plus_) ●毎日21時更新(サクサク進みます) ●全四部構成:133話完結+おまけ(2021年4月2日 21時完結)  (第一章16話完結/第二章44話完結/第三章78話完結/第四章133話で完結)。

処理中です...