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番外編
決着 7
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「アルファルドはちゃんと領地民の事を考えて、税収を抑えて、自分達の生活を犠牲にしてでも、領地を守ってた」
「……」
「それって、誰にでもできることじゃない。私は……、自分の都合で、大切な人達を切り捨てた。結果的に自分の我儘を通して、今ここにいる。でも、アルファルドは違うよね」
「……」
「贅沢も我儘も言わないで、自分の身体を傷つけてまで、冒険者としてお金を稼いで……ずっとずっと、領地の人達の為に尽くしてた」
「――それは……俺のせいで、領民が苦しむ事になったからだ」
「だからだよ。それこそが、国の頂点に立つ人間の資質だと私は思ってる。自分のせいで領地が荒れ果てても当たり前のように贅沢して、高い税を取り立てて平気で領地民を餓死させてる奴なんてごまんといるよ?」
「――っ」
膝の上に座ったままにこりと微笑む私に、アルファルドのオッドアイがどんどん潤んでる。
「アルファルドはすごく良い王様になるよ! 私はそんな風にできないから。私はアルファルドの隣に立って、お前の為に動いてお前を支える事。それが私の役割なんだ! だから、私をもっと利用してくれて構わない」
「……」
「言っただろう? ……英雄とまで呼ばれたこの俺を、唯一動かせるのはお前しかいないんだ。頼り過ぎなんかじゃない。俺をもっと有効的に使えよ。俺は、お前の為ならなんでもする」
「…ミ、ラ……」
「お前はどんと構えてればいいんだ。俺はアルファルドの為に何かできることが嬉しいし、お前の役に立てることが俺にとっての幸せなんだからさっ!」
アルファルドの唇に触れるだけの軽いキスをして、またアルファルドに向かってニコっと笑った。
わかってくれたかな……?
自分のこと、情けないとか思わないでほしいんだ。
アルファルドは私が見てきた中で、誰よりも立派な人だから。そんな事で引け目を感じないでほしい……
「はぁぁ……」
アルファルドがぎゅうっと私の身体を抱き寄せて、長ぁ~いため息を吐いてる。
「どーした?」
「…ミラ」
ちょうど私の肩辺りに、アルファルドは自分の顔を置いて、擦り付けるみたいに頭を振って腕に力を込めてる。
「…俺も、お前を愛してる。…いや、言葉では、俺のすべてを表し切れない……。これほど誰かを求め、愛おしいと思ったことはないっ。…お前がいてくれたから、俺はここまでこれた。お前の期待を裏切らないよう……、これからも最善を尽くそう……」
「うんっ!」
ゆらゆら揺れる馬車の中。
アルファルドは私を強く抱きしめてくれて……
私はアルファルドの力強い腕の感触に幸せを感じながら帰路に着いた。
「アルファルドはちゃんと領地民の事を考えて、税収を抑えて、自分達の生活を犠牲にしてでも、領地を守ってた」
「……」
「それって、誰にでもできることじゃない。私は……、自分の都合で、大切な人達を切り捨てた。結果的に自分の我儘を通して、今ここにいる。でも、アルファルドは違うよね」
「……」
「贅沢も我儘も言わないで、自分の身体を傷つけてまで、冒険者としてお金を稼いで……ずっとずっと、領地の人達の為に尽くしてた」
「――それは……俺のせいで、領民が苦しむ事になったからだ」
「だからだよ。それこそが、国の頂点に立つ人間の資質だと私は思ってる。自分のせいで領地が荒れ果てても当たり前のように贅沢して、高い税を取り立てて平気で領地民を餓死させてる奴なんてごまんといるよ?」
「――っ」
膝の上に座ったままにこりと微笑む私に、アルファルドのオッドアイがどんどん潤んでる。
「アルファルドはすごく良い王様になるよ! 私はそんな風にできないから。私はアルファルドの隣に立って、お前の為に動いてお前を支える事。それが私の役割なんだ! だから、私をもっと利用してくれて構わない」
「……」
「言っただろう? ……英雄とまで呼ばれたこの俺を、唯一動かせるのはお前しかいないんだ。頼り過ぎなんかじゃない。俺をもっと有効的に使えよ。俺は、お前の為ならなんでもする」
「…ミ、ラ……」
「お前はどんと構えてればいいんだ。俺はアルファルドの為に何かできることが嬉しいし、お前の役に立てることが俺にとっての幸せなんだからさっ!」
アルファルドの唇に触れるだけの軽いキスをして、またアルファルドに向かってニコっと笑った。
わかってくれたかな……?
自分のこと、情けないとか思わないでほしいんだ。
アルファルドは私が見てきた中で、誰よりも立派な人だから。そんな事で引け目を感じないでほしい……
「はぁぁ……」
アルファルドがぎゅうっと私の身体を抱き寄せて、長ぁ~いため息を吐いてる。
「どーした?」
「…ミラ」
ちょうど私の肩辺りに、アルファルドは自分の顔を置いて、擦り付けるみたいに頭を振って腕に力を込めてる。
「…俺も、お前を愛してる。…いや、言葉では、俺のすべてを表し切れない……。これほど誰かを求め、愛おしいと思ったことはないっ。…お前がいてくれたから、俺はここまでこれた。お前の期待を裏切らないよう……、これからも最善を尽くそう……」
「うんっ!」
ゆらゆら揺れる馬車の中。
アルファルドは私を強く抱きしめてくれて……
私はアルファルドの力強い腕の感触に幸せを感じながら帰路に着いた。
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